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2024年5月23日
- 研究室
卵菌ウイルスに関する論文が掲載されました!
植物病原卵菌であるGlobisporangium ultimum(旧Pythium ultimum)に感染している新奇トティ様ウイルス(Pythium ultimun RNA virus 2、PsRV2)に関する論文が国際学術誌「Microbiological Research」に掲載されました。
樋口さん(2023年農学研究科博士前期課程修了)が卒論と修論で取り組んだ研究です。
https://doi.org/10.1016/j.micres.2024.127742←論文への直リンクです。
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-11578.html←プレスリリースへの直リンクです。
私たちは2021年にG. ultimum からフザリウイルスPuRV1とトティ様ウイルスPuRV2を報告していました(Fukunishi et al. 2021)。今回の論文では、PuRV2感染が宿主菌G. ultimum UOP226株に与える影響を調べました。PuRV2フリー株を作出して、G. ultimum の性状や遺伝子発現パターンを解析したところ、PuRV2感染株は農薬であるメタラキシル剤への感受性が高まっていることが分かりました。また、RNA-seq解析により、PuRV2感染株はメタラキシル剤への耐性に関わるとされるABCトランスポーター遺伝子群の発現量が低下していることも分かりました。これらの結果は、マイコウイルス感染が、メタラキシルが施用される農業生態系という特殊な環境下においてのみ、宿主菌の生態に負に影響していることを示唆しています。これは、農業生態系における植物病原卵菌の生態を理解する上で重要な知見です。
私たちはこれまでいくつかのGlobisporangium属菌から新規なウイルスを発見してきましたが(Sasai et al. 2018; Shiba et al. 2019)、宿主菌へのウイルス感染の影響は明らかではありませんでした。宿主菌への影響を調べるためには全ゲノムが解読されているモデル菌を使わなければ、と考えて6年前くらいにスタートさせた研究です。笹井さんがウイルス感染しているG. ultimum株を見つけて福西さんがそのウイルスを同定し、樋口さんがウイルス感染の影響までを明らかにしてくれました。修了生の皆さんの頑張りの賜物です。ウイルスフリー株の作出だけで2年近く費やしていますが、Fig. S2にその軌跡があります。