就職・進学のリアル

2023年8月1日

居住環境学科と建築学科はどう違う?  4年生座談会【後編】

建築学生の今とこれから

「生活科学部 居住学科」と「工学部 建築学科」の4年生が、それぞれの学科の違いについて、これまでの大学生活を振り返りながら思い思いに語るこの座談会。

前編では、高校生の頃の進路選択や、それぞれの学科の設計課題での面白いエピソード、グループで取り組んだ設計課題の感想について語り合いました。(前編はこちら)


後編では、4年生の現在の取り組み、将来のビジョンについて紹介します。

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“合同ゼミでの学科間を超えた交流” 卒業論文の取り組み

——次は、4年生になってみんなそれぞれの卒業論文に取り組んでいるので、それについて聞きたいと思います。

 

佐伯(居住) 僕は、 “木材のめり込み”についての研究をしています。木材は力を加えるとめり込みます。⽊材のひずみと応⼒度の関係を調べる破壊実験を行い、その結果を用いて解析し、木材同士がめり込む時の剛性と耐力の設計規準が適当かどうかを検証する研究をしています。

スクリーンショット 2023-07-31 15.19.14 佐伯くんの卒業研究:木材のひずみと応力度の関係を調べる実験


——構法でいうと、建築学科にも構法分野があって、同じ構法分野同士でゼミをやっているっていう噂を聞きました。

 

谷(建築) 居住学科の岡本滋史先生の研究室と、建築学科の石山央樹先生の研究室で、ほぼ週一で合同ゼミをしています。そのゼミでは、それぞれの研究室の学生が発表して、先生方からフィードバックをもらいます。やっぱり構法の中でも分野がいくつかあって、内容も違うんですが、みんながどんな研究をやっているかを理解していきたいなと思って、頑張って聞いています。



“日々感じてきた思いをカタチに” 卒業設計の取り組み


岡本(建築) 私は、“故郷を離れた人が住む集合住宅のような街づくり”をテーマに考えています。実際に、私が地方から出てきて、大阪で初めて一人暮らしをすることになった時に感じたこととして、“街に馴染めないこと”がありました。なので、その思いを卒業設計で制作する住宅を通して表現できたらな、って考えています。



安部(建築) 僕は“動物園”の設計を考えています。動機は、ペットショップや水槽に入れられている魚を見て、可哀想やなって感じたからです。動物本来の動きを明らかに制御しちゃっていて……。動物園って、もともと“教育”っていう目的で建てられていて、日本の法律では博物館のくくりの中にあるんですけど、そういう観点からも何か考えられないかなと思って、試行錯誤中です。

設計案としては、“観賞方法”を変えたいなって思っていて、動物園を滞在型にした方が、もっと動物の生態がわかるんじゃないかな、と。そういう“新しい動物園”のあり方を提示できないかなと考えています。子どもたちのための動物園だけど、現在の環境問題なども考えていくと、大人も知らなきゃいけないことってあるなと思っていて、大人も子どもも学べるような動物園のあり方や、それにふさわしい空間を設計していきたいなって思っています。

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“やっぱり住宅をつくりたい” “インテリアまで一緒に考えたい” 就職を決めた理由


——ここからは、就職先についても聞いてみたいと思います。


川野(建築) 私は、住宅に興味があったので、ハウスメーカーに就職を決めました。建築学科にした理由は、元から住宅には興味があったんですけど、最初から住宅だけに絞るのが怖くて……。でも、建築学科に入って住宅以外の建築のことも学んだ結果、やっぱり住宅がいいなと思ったので、ハウスメーカーに決めました。

結構早めに内々定をいただいていたんですが、来年から働くって考えた時に、私は構造のことを全然知らないなと思って。構造は得意な分野ではないんですけど、将来的に住宅の設計をする時に一つでも武器が欲しくて、構造の研究室に入りました。


——あえて自分の得意じゃない分野の研究室を選んで学んでいるってすごいね。実際に構造の研究室に入ってみて、強みになりそうなものは見つかりましたか?


川野(建築) 今、特別設計演習っていう授業を受けているんですけど。最初は先生から「好きな建築をつくってみて」と出題があったので、建築の外観デザインからやってみました。でも、いざこの外観デザインを成り立たせるための構造設計をしていくことになると結構難しくて……。意匠設計の人がどれだけデザインのすごいものを提案しても、構造の人がちゃんと建築が立つように成り立たせてくれないと、実際に建てられないんだっていうのを今すごく実感しています。


田口(居住) 私も住宅の設計がしたくて、ハウスメーカーにしました。ハウスメーカーはプランや資材などの規定も大きいけれど、その制限の中で最大限に、お客さんと対話しながら設計していきたいと思います。インテリアの提案も、できるならぜひ一緒にやりたいです。

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“大学院で自分の適性を見つけたい” “「匠」への憧れ” 将来のビジョン

——大学院に進む人にも、聞いてみたいと思います。


安部(建築) 僕は意匠設計に進みたいと思っています。でも意匠設計も、個人住宅や集合住宅、学校や図書館などの公共施設や、商業施設など、内容や規模もすごく幅広い。だから、大学院生のあいだは自分でコンペに応募していろいろな建物の設計を考えるなどしながら、自分の適性を見ていきたいと思います。

谷(建築) 僕は入学前、建築学科って、全員『大改造!!劇的ビフォーアフター』に出てくる『匠』みたいになるんかなと思っていました(※前編参照)。でも、実際入ってみると、設計一つにとっても、意匠設計や設備設計、 構造設計があると知りました。今のところ、自分が一番得意かなと思っているのは構造設計なので、その道に進もうかなと思いつつ、『匠』への憧れはまだちょっと諦めきれず(笑)という感じです。

卒業論文を進めていくと、さらに構造分野に興味が出るかもしれないし。大学院での授業や、就活でインターンに行ってみても、また変わるかなと思います。

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“居住のこと、建築のこと。知らなかったことがいっぱい” 座談会の感想

——お互いにいろいろな話が聞けたと思うけど、座談会をしてみてどうでしたか?


岡本(建築) 私は居住学科のことを全然知らなかったので、自分がこの話を高校生の時に聞いていたら、居住学科に進学していたかも、と思いました(笑)。今でもインテリアコーディネーターにも関心があるので。

佐伯(居住) 元々僕は、建築学科に行きたかったんですけど、物理と化学が苦手で居住学科を受験したので、やっぱり建築学科で勉強したかったなって思う話も多かったです(笑)。

——逆やね(笑)。そんな二人が今、構法研究室同士で合同ゼミをしているなんて、面白いね。



“学科を調べることはとても大切” 高校生へのメッセージ


安部(建築) 工学部って第1希望、第2希望……といくつかの学科を併願受験できるんですけど【注1】、僕は高校生の時、深く考えずに決めていました。でも、今になってみると、大学生活のほとんどをその学科で過ごすわけやから、 “自分できちんと調べて、学科を決める”っていう作業も、勉強すること以上に大事だったなと感じています。

——居住学科と建築学科でも違いがあったように、大学の学科ってたくさんの種類があるから、きちんと自分で調べてどの学部・学科に行きたいかを考えることってとても大切ですよね。高校生からしたら大学って未知の世界やし、入ってみないとわからないこともいっぱいあると思うけど、今回の座談会が、ちょっとでも高校生の進路選択の役に立てたらいいね。

 





ここまで記事を読んでくださり、ありがとうございました。居住学科、建築学科って一体どんなことをしているのだろう? そんな疑問に少しでもお答えできたなら幸いです。

一見似ているような建築系の学科でも、異なる点はたくさんあります。これから大学進学を考えるみなさんは、気になる大学のオープンキャンパスに行ってみたり、先生や先輩に聞いてみたりすることで、今よりももっと選択肢が増えると思います。

また、大学にはさまざまな教授がいて、同じ分野でも、教授によって授業内容や研究室の雰囲気はまったく変わります。大学や学科の分類にとどまらず、教授やその研究室がどのような研究や活動をしているのか、SNSなども使って調べてみるのもいいかもしれないですね。

ぜひ、自分の興味・関心と向き合い、後悔しない進路を選択してください!


前編はこちら。


【注1】入学試験の実施内容は年度によって異なります。座談会収録時現在、工学部の「一般選抜前期日程」「一般選抜公立大学中期日程」では、出願時に第3希望まで学科を選択できます。詳細は「大阪公立大学 入試情報サイト」をご確認ください。


2023年6月29日 大阪公立大学建築計画・構法研究室にて
座談/
居住学科=池田祐揮、佐伯 祥、田口紗衣、西川祐生
建築学科=安部航一、岡本奈緒、川野 柚、谷 達哉

まとめ/岸本結花(建築計画・構法研究室修士2年)、渡邊めぐみ(建築計画・構法研究室修士2年)
座談会風景撮影/西谷聡汰(建築計画・構法研究室修士2年)
協力/西野雄一郎(建築学科 講師)、土井脩史(居住環境学科 講師)
編集協力/贄川 雪(外部)