就職・進学のリアル

2023年8月2日

居住環境学科と建築学科はどう違う?  4年生座談会【前編】

“建築”って幅広い!

人々が生活する上で、安全で快適、また創造性ある空間をつくっていくため、建築デザインや構造、環境などを学ぶことができるのが建築系の学科です。しかし、一言で建築といっても扱う領域は幅広く、多岐にわたります。

 

実際に、大阪公立大学には、私たちの所属する「工学部 建築学科」に加え、「生活科学部 居住環境学科」という学科があります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

 

そこで今回は、両学科の4年生に集まっていただき、入学してみてわかった各学科の特徴など学生のホンネを聞きました。似ているように思える二つの学科ですが、お互いに知らなかったことや新たな発見がたくさんありました!

 

前編では、どうしてその学科を選んだのか、入学後に感じたギャップや印象に残っている授業内容などを紹介します。

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メンバー紹介

工学部 建築学科(以下、建築学科)

 ・安部航一(建築デザイン研究室)

 ・岡本奈緒(建築計画・構法研究室)

 ・川野 柚(建築構造・材料学研究室)

 ・谷 達哉(建築計画・構法研究室)

生活科学部 居住環境学科(以下、居住学科)
 ・池田祐揮(土井脩史研究室:建築計画) 

 ・佐伯 祥(岡本滋文研究室:木造建築構造)

 ・田口紗衣(小池志保子研究室:意匠設計)

 ・西川祐生(土井俊央研究室:人間工学)

“受験科目やテレビ番組の影響” 建築/居住に進んだ理由


川野(建築) 私は、理由の一つとして、数学や物理が得意で、二次試験で理系科目を活かせる建築学科を選びました【注1】。


池田(居住) 僕は、文系出身なので、居住学科が文系教科で受験できるという点が大きかったです。それに加えて、より居住者目線に合わせた住空間に興味があったので、自分に合っているんじゃないかなと思って決めました。


田口(居住) 私は、元々インテリアプランナーになりたいと思って居住学科を選びました。公共建築のような大規模なものより、住宅やインテリアなど身近な小さな規模のものに興味があったので。


——住宅に興味を持ったきっかけは?


田口(居住) 小さい頃に住宅展示場を回ったり、友達の家に行ったりするのが好きで、住宅に興味を持ちました。あと、幼稚園の頃から工作やものづくりが好きだったことも影響していると思います。


谷(建築) 僕は、小学生ぐらいの時から見ていた『大改造!!劇的ビフォーアフター』というテレビ番組にめちゃめちゃ憧れて、住宅のリフォームによって暮らしの問題を解決してくれる『匠』みたいに、住み手に喜んでもらえるような建築士になるのが夢でした。でも、入学したら大体最初の授業で「『匠』を目指すのは大変」って言われて、理想と現実のギャップを感じましたね(笑)。


西川(居住) 僕は、『住人十色』という番組に影響を受けました。建築と居住で迷っていた時には、高校の先生から「居住だったら住宅寄りで、建築だったらもうちょっと大きめの規模だと捉え、どちらを学びたいか考えてみたら?」とアドバイスをもらい、居住に決めました。


——もしかしたら最近は、巨匠建築家に憧れて建築に興味を持つ人よりも、テレビ番組の影響やYouTuberに憧れて建築の道を目指す人が多くなってきているのかもしれないですね。

“物理も友達と乗り越える” 授業の感想

——居住学科は、文系からも受験ができることが特徴の一つ。でもどうしても理系のイメージがあるから、文系の子で授業についていけるか不安に感じる高校生も多いと思うんだけど、実際に授業を受けてみてどうでしたか?


池田(居住) 思っていたよりいけました(笑)。「高校の頃、物理は履修していないし……」と最初は不安でしたが、先生の講義資料も基礎的でわかりやすかったし、理系の友達に教えてもらいながら、うまく乗り越えられたと思います。

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“段ボールの椅子の設計” “フォリーから公共建築まで” 設計課題の思い出


池田(居住) 居住学科は、1年生の後期にインテリアの授業があって、そこで段ボール8枚で椅子をつくりました。電車で材料を持って帰って、完成したら椅子を持ってまた学校へ行くっていう本来なら学校に置いていたんですけど、コロナ禍で各自自宅でつくってくることになって、それが特に大変でした。

だから、みんな解体できる構造を考えていましたね。学校に来てまた組み上げて提出する、みたいな。それが無理な子は、電車で座ってきていました。


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居住学科1年後期「基礎設計製図2 座るカタチ」|600㎜×800㎜のダンボールシート 8 枚を使用。座っても壊れない構造や素材についての理解を深める。池田くん制作 “Zero gravity”


(一同笑)


——どんなコンセプトでこの椅子を設計したの?



池田(居住) 僕は最もリラックスできる椅子をつくりたいって思ったので、調べた結果「中立姿勢」(人間が宇宙空間で脱力した時に自然に形成される、身体への負担が最も少ないとされる姿勢。長時間でも姿勢が崩れにくく、疲れにくい)にたどり着きました。僕はその時ちょうどサウナにハマっていて。いわゆるととのい椅子”を参考にして設計しました。



——建築学科にはインテリアの課題がないから、同じ材料で組み方によって出来上がるものが全然違うっていうのは面白いな。


安部(建築) 建築学科の設計課題は、とにかくいろいろな種類があるなっていうか。最初に、フォリー(装飾用の建物。居住や雨風をしのぐといった用途がまったくないもの)の設計から始まって、狭小住宅、1000から2000平方メートルくらいの公共施設、美術館、図書館、コンバージョンと幅広いから、いろいろなことが吸収できて面白いです。

“楽しさも苦労も分かち合い、互いに高めあう” グループ設計課題


西川(居住) 居住学科は、1年生の後期に51組で5つ(または6人1組で6つ)揃っての店舗を提案する「通りのカオ」という課題があって。

池田(居住)  この課題は、設計というよりデザインの要素が大きいかも。杉本キャンパスの横の敷地で、店舗のファサードとインテリアを考える課題です。


——6つ揃っての全体コンセプトがあって、それぞれが店舗を一つずつデザインする感じ?


西川(居住) そうですね。11店舗です。僕は、それぞれの店舗が味覚や視覚をテーマにし、全体で五感を表現するというデザインをしたチームがいて、それが面白くて印象に残っています。

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居住学科1年後期「基礎設計製図2 通りのカオ」|1人一つの店舗のファサードとインテリアをデザインし、個々の個性からグループで街並みを形成する。



岡本(建築) 建築学科は、3年生の後期に34人でグループを組んで図書館を設計する課題がありました。私たちの班は、最終的なプレゼンシートや模型の担当は分担したけど、設計は毎回3人一緒に集まってやりました。でも、構造設計と、意匠設計で分担して設計している班もありました。

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建築学科3年後期「建築設計演習Ⅲ 未来のメディアプレイス」|「図書館=本を読む場所」という概念を変え、多様な活動が生まれる「動く場」を提案する。岡本さんグループ作品“交わって流れ出す〜人と図書が導く未来の岸和田〜

 

——個人設計と比べて、グループ設計をしてみてどうだった?

 

岡本(建築) 今までやっていた個人設計では、先生とのエスキスでしかあまり議論することがなかったので、常に誰かと一緒に設計を考えるのは楽しかったです。その中でも、プレゼンシートをまとめるのが得意な子がいたり、模型が綺麗な子がいたりして、みんなが普段どのようにつくっているのか、新しい発見がありました。設計の考え方の順番にも、それぞれ個性があったような気がします。

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——設計課題は本当に大変だけど、その分得られるものは大きいよね。



後編に続く。



【注1】入学試験の実施内容は年度によって異なります。詳細は「大阪公立大学 入試情報サイト」をご確認ください。



2023年6月29日 大阪公立大学建築計画・構法研究室にて
座談/
居住学科=池田祐揮、佐伯 祥、田口紗衣、西川祐生
建築学科=安部航一、岡本奈緒、川野 柚、谷 達哉

まとめ/岸本結花(建築計画・構法研究室修士2年)、渡邊めぐみ(建築計画・構法研究室修士2年)
座談会風景撮影/西谷聡汰(建築計画・構法研究室修士2年)
協力/西野雄一郎(建築学科 講師)、土井脩史(居住環境学科 講師)
編集協力/贄川 雪(外部)