研究内容概要


 近年,地球規模のエネルギー・環境問題がクローズアップされています.将来も,間違いなくエネルギー・環境問題がさらに社会の重要な問題になっていることでしょう.本研究室では,このような認識の下に,エネルギーの有効利用およびCO2排出量の削減を目指して,各種の分散型エネルギーシステムをより良く計画・設計・運用・制御し,適切に状態監視・診断するための研究を行っています.例えば,エネルギー有効利用およびCO2削減のための技術の一つとして,発電時の排熱を有効利用していく燃料電池,ガスタービン,ガスエンジンなどを主機とする熱電併給(コージェネレーション)システム,河川水,海水,および地下鉄排熱などの未利用エネルギー活用が可能なヒートポンプ・蓄熱システム,低密度ではあるが無尽蔵に得られる太陽光や風力などの自然エネルギー利用システムなどを研究対象に取り上げ,機械工学を中心に他分野を横断するシステム工学的な視点から,未来のエネルギーシステムの在るべき姿を追求しています.具体的な研究課題は次の通りです.


● エネルギー供給システムの性能分析に関する研究

 熱電併給システムやヒートポンプ・蓄熱システムなどに対して,構成要素の熱力学的・経済的特性に基づいてシステムの熱力学的・経済的特性を分析するとともに,最適設計・運用を行うためのシステム工学的手法について研究する.最近では,ガスタービン熱電併給システム,CO2ヒートポンプ・給湯システム,および熱電併給システム用吸収冷凍機システムなどを研究対象としている.


● エネルギー供給システムの最適設計に関する研究

 複雑なエネルギー供給システムに対して,総合的な視点から最適に設計を行うためのシステム工学的手法について研究する.最近では,機器構成を決定したり,機器の性能劣化および向上などに伴って機器の更新を行うための最適設計手法について研究している.また,対象システムとして,燃料電池,ガスタービン,およびマイクロタービンによる熱電併給システムなどについて検討している.


● エネルギー需要量予測およびエネルギー供給システムの最適運用に関する研究

 エネルギー供給システムに対して,エネルギー需要量の実測データに基づいてエネルギー需要量の予測を行いながら,総合的な視点からオンライン・リアルタイムで最適に運用を行っていくためのシステム工学的手法について研究する.最近では,運用マネジメントシステムの開発を目指した研究,家庭用ガスエンジン/燃料電池熱電併給システムについてエネルギー融通する場合の最適運用に関する研究などを行っている.


● エネルギー供給システムの動特性分析および最適制御に関する研究

 熱電併給システムやヒートポンプ・蓄熱システムなどに対して,数値シミュレーションや実システムによる実験を通じて動特性の分析を行い,それに基づいて最適運用と統合化を図りながらオンライン・リアルタイムで最適制御を行っていくためのシステム工学的手法について研究する.最近では,ヒートポンプ・蓄熱方式の空調熱源システムに対して,動特性の分析とモデル予測制御による最適制御を行っている.


● エネルギー供給システムの状態監視および診断に関する研究

 エネルギー供給システムは稼働時間の増加に伴い性能が劣化するため,設置当初の性能に基づいた最適運用・制御を行ったとしてもエネルギーの有効利用度は低下していく.そこで,各種システムの稼働状態より性能低下を検知するとともに,性能の変化を最適運用・制御にも反映する監視・診断手法について研究する.現在は熱交換システム,風力発電システムを対象にこの手法の構築を行っている.


● 自然エネルギー利用システムの特性分析に関する研究

 日射計,太陽電池パネル,風速・風向計,風車による各種データの計測を行い,それに基づいて太陽光および風力による自然エネルギー,ならびに太陽光および風力発電システム特性の評価・推定を行い,自然エネルギーを総合的にいかに有効活用していくかについて,システム工学的に研究する.


● その他の研究

 上記の各種研究の成果を実用的に利用できるように,エネルギーシステムの最適設計・運用・制御のための計算機援用汎用システムの開発を行っている.また,上記の各種研究のシステム工学的手法を構築するために必要となる各種最適化手法の開発を行っている.