固体中の拡散

固体における拡散

固体の中の原子はその位置にずっととどまっているわけではありません．温度が高くなり熱振動の振幅が大きくなると隣の場所へ飛び移るようになり，それを繰り返して固体の中を動き回ります．その動き（拡散）の速さは材料の特性を左右する重要な因子のひとつです．純金属の結晶では原子は図1のように空格子点を介して拡散しますが、図2のように2種類以上の原子種が規則的に配列した結晶では、もし同じように原子が動き回ったとすると規則配列が乱れてしまいます．実際には原子は規則配列を一時的にしか乱さずに移動しているはずです．私たちは力学スペクトロスコピーを中心としたさまざまな実験や計算機シミュレーションなどにより，このような固体中の原子拡散のメカニズムとダイナミクスを調べています．

図1. 純金属の結晶中では原子が空格子点を介して結晶中をランダムに動き回り拡散します．

図2. 2種類の原子が規則的に配列した結晶中では，純金属中と同じように原子が動くと規則配列が乱れてしまいます．この例は，A原子とB原子が層状に交互に配列したL1₀型構造という結晶です．