レーザ誘起気泡の崩壊

  • レーザ誘起気泡の崩壊

気泡崩壊現象を実験的に扱う上で,気泡径や位置を制御して気泡を生成する手法として,集束パルスレーザのブレイクダウンの利用が挙げられる.高強度パルスレーザを水中に集束させると,電磁波のエネルギーがある閾値をこえた領域においてプラズマが形成され(レーザブレイクダウン),そのエネルギー吸収過程で衝撃波とレーザ誘起気泡が生じる.

    • 剛体壁近傍での気泡の崩壊

Fig. 1は,ガラス壁面近傍で高強度Nd:YAGパルスレーザを集束させることにより生成したレーザ誘起気泡が成長および崩壊する様子を,斜めから高速度ビデオカメラで撮影した画像である(ガラス壁面は透明のため見えない).気泡は半球状に膨張し,最大体積を取った後に収縮する.収縮過程で壁面の反対側の気泡表面がくぼみ,壁面に向って高速の液体ジェットが形成される.液体ジェットが気泡表面を貫通すると,気泡はリング形状になって,壁面上で崩壊し,再膨張する.リング状の気泡をトロイダル気泡と呼ぶ.

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                           Fig. 1 Bubble collapse near a plane rigid wall                                                 


さらに,気泡の成長崩壊挙動を詳細に観察するために,プリズムミラーを用いて高速度二方向同時撮影,ならびに気泡崩壊時の衝撃圧力を観測するために,光ファイバープローブハイドロフォン(FOPH)を用いた圧力計測を行っている.以下の図は,気泡の上方に配置された壁面近傍での気泡の崩壊を,側方(上面図)ならびに下方から(下面図)した様子である.気泡はリング形状で壁面上で崩壊している.

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        Fig. 2 Snapshots of the second bubble collapse observed in two directio

主な参考文献

      1. 木田迅飛, 松本和真, 小笠原紀行, 高比良裕之, 壁面近傍での気泡崩壊時の二方向同時撮影画像と衝撃圧分布との関係, 混相流, 37, 1, 38-45, (2023).
      2. E. A. Brujan, A.-M. Zhang, Y.-L Liu, T. Ogasawara, H. Takahira, “Jetting and migration of a laser-induced cavitation bubble in a rectangular channel,” Journal of Fluid Mechanics, 948, A6, doi:10.1017/jfm.2022.695, (2022).
      3. E. A. Brujan, H. Takahira, T. Ogasawara, “Planar jets in collapsing cavitation bubbles,” Experimental Thermal and Fluid Science, 101, 48-61 (2019).
      4. E. A. Brujan, T. Noda, A. Ishigami, T. Ogasawara, H. Takahira, “Dynamics of laser-induced cavitation bubbles near two perpendicular rigid walls,” Journal of Fluid Mechanics, 841, 28-49, (2018).

 

    • 粘弾性体内外での気泡の成長・崩壊
    • 壁面の変形を考慮した解析は,材料のキャビテーション壊食を考える上で重要である.特に,キャビテーション気泡の医療応用を考える上では,生体組織などを対象とした気泡崩壊挙動の解析が必要となる.本研究では,生体を模擬した粘弾性体であるアガロースファンとも内外でのレーザ誘起気泡の成長崩壊について研究している.以下の図は,アガロース平面近傍で気泡が成長崩壊する様子である.気泡は火山(円錐)形状で崩壊し,気泡の一部が壁面内に侵入している.
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    • キャビテーション気泡による核破砕中性子源の液体水銀ターゲット容器の損傷

核破砕中性子源の開発において,水銀ターゲットに陽子ビームを照射する際に生じる圧力波の容器壁面への衝突によって生じる負圧により水銀キャビテーション気泡が発生する.キャビテーション気泡の崩壊は水銀容器の壁面が損傷を引き起こすことから,装置の寿命が大幅に低下することが深刻な問題となっている.この対策として,容器内壁に狭い流路を設けて,その中に微小気泡を注入する方法がとられている.今後の陽子ビームの高出力化に対応するのは,微小気泡と圧力波との干渉に伴う壁面損傷の影響を調査する必要がある.そのため,Ghost Fluid法を用いた数値計算や流路内での気泡崩壊実験を通して,壁面損傷の機構を研究している.

  

      1. Ogasawara, T., Tsubota, N., Seki, H., Shigaki, Y. and Takahira, H., Experimental and numerical investigations of the bubble collapse at the center between rigid walls, Journal of Physics: Conf. Ser. 656(2015), 012031.
      2. H. Takahira, T. Matsuno and K. Shuto, "Numerical Investigations of Shock-Bubble Interactions in Mercury", Fluid Dynamics Research, Vol. 40, pp. 510-520, (2008).