粗さによる乱流熱流動制御に関する研究

はじめに

壁面に設置された粗さは運動量や熱輸送を増大させることが知られており,ガスタービン内部の冷却流路,太陽熱発電システム等の熱交換器をはじめとして様々な熱交換機の性能向上のために広く用いられている.しかし,壁面粗さは熱輸送を増大させるのみならず,運動量輸送を増大させるために,熱交換性能の向上と引き換えに,流動抵抗の増大を引き起こしてしまう.理想的には,流動抵抗の増加を抑えつつ熱伝達を大幅に増加させるを実現することにあるが,粗さが運動量・熱輸送に影響を与えるメカニズムは複雑であり,理想的な制御の実現は容易ではない.ここでは,粗さ効果や透過性効果を利用した伝熱制御法に関連する研究テーマを紹介する.

ケルビンヘルムホルツ不安定波を利用した非相似伝熱制御

滑面に接する乱流熱流動場において,熱輸送と運動量輸送との間には強い相似性が見られることが知られている.一方で,透過性壁面上ではケルビンヘルムホルツ不安定起因する大規模な乱流渦構造が発達し運動量・熱輸送を増大させるが,こは大規模渦は熱輸送を特に増大させ,熱輸送と運動量輸送との間に理想的な”良い非相似”をもたらすことを本研究グループは明らかにした.本研究グループでは数値シミュレーション・実験を行い,これらの大規模渦を利用した熱交換器の開発の為に,基礎的な現象理解に関する研究を行っている.

平滑面(左図),透過壁面(右図)上の乱流熱流動の瞬時温度変動の可視化.赤色は高温,青色は低温領域を示している.流体は左から右に流れており,左図では流れ方向に伸びた乱流構造が見られるが,右図では流れと直角方向に伸びた大規模な渦構造がみられる.(Y Kuwata, Journal of Fluid Mechanics 952, A21)

研究成果: Y Kuwata, "Dissimilar turbulent heat transfer enhancement by Kelvin–Helmholtz rollers over high-aspect-ratio longitudinal ribs", Journal of Fluid Mechanics 952, A21

機能性粗面の創生

伝熱面の表面に粗さを設けることによって,熱伝達率を大幅に向上させることが可能である.しかし,粗さは同時に摩擦係数を増加させることから,流動抵抗の増加を同時に引き起こす.これら熱伝達率・摩擦係数の増加率は粗さの幾何構造に強く依存する為,粗さ構造を変化させることで流動や熱伝達を変えることができる.本研究グループでは,流動や熱伝達を自在にコントロールする粗さ構造を設計する研究を行っています.特に,機械学習や遺伝的アルゴリズムなどの数理的なアプローチによる粗さの形状設計を目指した研究を行っている.