熱磁気対流の数値解析・実験
永久磁石の磁気力を利用した対流誘起による伝熱促進効果の調査
近年,様々なデバイスにおいて,多種多様なニーズから,高性能かつ小型で静音性の高い製品が求められています.その代表例として,スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器や太陽熱温水器などの熱交換器があげられ,これらのデバイスの高性能化に伴って単位面積当たりの発熱量が増大し,小型化に伴って限られたスペースでのより効率的な熱交換技術が求められています.また,これらの機器は対流熱伝達で熱マネジメントをしていることが多く,伝熱促進手法として自然対流が指向されますが,その伝熱性能には限りがあるという問題があります.そこで,本研究グループでは,安価であり外部からのエネルギー供給を必要としない永久磁石による磁気力に着目し,局所熱伝達率の計測実験と数値解析の両面から熱磁気対流による現象を理解することを目指しています.
あらゆる物質は,常磁性体,強磁性体および反磁性体の3種に分類され,本研究では常磁性流体を対象として熱流動制御を行っております.常磁性体とは,外部磁界と同じ向きに弱く磁化されるものを指します.常磁性体の比透磁率はわずかに1より大きく,磁化率は小さいため磁石としては機能しないという性質を持ちます.代表的なものには,身近な空気(酸素)やアルミニウムなどがあげられます.また,単位体積当たりの熱磁気力は,次の式(1)で表され,常磁性体の質量磁化率はキュリーの法則から式(2)で表されます.
ここで,ρは流体の密度,χmmは質量磁化率,μmは真空の透磁率,bは磁束密度,Cはキュリー定数,θは絶対温度です.本研究グループでは,この磁気力と温度差から生じる浮力の合力を外力として対流を誘起させ,加熱部の高温流の熱交換を狙います.
対流誘起実験
空気と同様に常磁性流体である硝酸ガドリニウム水溶液を作動流体として用いて実験を行っており,永久磁石を用いた伝熱制御の可能性を実験的に調査しております.
格子ボルツマン法を解析手法とした熱流動解析
上記の実験と同様の系を対象として,数値解析を行っております.数値解析では,実験では計測が難しい温度・流速・圧力場などの空間分布を基に,熱磁気力による伝熱促進メカニズムの解明を行っております.