混相流の数値解析

等方多孔体への微小液滴浸潤解析

混相流,とりわけ多孔体界面ならびに内部で液滴が関与する工業製品を概観すると,オイルミスト捕集機やインクジェット印刷,ヒートパイプのウィック内の液滴・液膜生成, 固体高分子形燃料電池のガス拡散層内の液水排出,エマルジョンからの油水分離などが挙げられ,そのいずれもミリメートルオーダかそれ以下の現象に分類されます.これらにおいて要求される性能は様々ですが,いずれも液滴の挙動が製品の性能を左右するためその把握が求められます.

既往の研究では多孔体は等方的かつ空隙率と透過率を考慮した一様な層とみなし,これらを物質移動式に考慮する手法がとられてきました.しかし,この手法は液のスケールが多孔体空孔のスケールに比べて十分大きいときにのみ適応可能であり,上述したデバイスにおける気液二相の現象においては多孔体構造を考慮する必要があります.本研究では,等方多孔体に滴下した液滴挙動解析を行い,現象のキャラクタリゼーションおよび多孔体への液滴浸潤条件とそのメカニズムを解明しました.

多孔体上の液滴シミュレーション.

水平角柱群に流下した液体挙動解析

近年進んでいる自動車の電動化に伴い,駆動ユニットを構成する電気モータの高出力密度化には冷却性能の向上が必須です.乗用車用モータの冷却には油冷方式が採用されており,発熱部分であるステータコイルの上部から電気絶縁性の高いオイルを直接流下して冷却します.コイルに流下したオイルの挙動はノズルやコイル単体の寸法のみならず,ノズル高さ,流下部の位置,流量,隣接するコイルとの間隔やコイルの配線パターン,積層構造などに依存することは明白です.そこで本研究では,コイルエンドのオイル流下部に着目し,コイル構造を単層および四層の水平角柱群で単純化することで,さまざまな支配因子とオイルの挙動との関係性を定量的に明らかにしました.

StatorCoil

電気自動車用ステータコイルおよびオイル流下位置.

蒸発モデルの実装

固相表面に付着した液滴は時間経過に伴い蒸発します.この液滴に不揮発性溶質が含まれている場合,最終的に形成される溶質膜の形状は様々な要因に左右されます.この現象はインクジェット印刷に応用されており,紙への高分子材料の成膜制御や,有機半導体材料やトランジスタなどの基板への機能性材料の成膜制御への応用が期待されています.様々な成膜対象において得られる膜形状を正確に予測するためには,蒸発プロセスや成膜対象の構造を含む様々な物理特性を考慮した熱流動解析ツールが必要となります.本研究では,保存系Allen-Cahn方程式に基づくPFLBMに蒸発の影響を考慮した手法の開発を行いました.

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