粗面・多孔体乱流の数値解析

粗面上の乱流熱流動場の現象解明

壁面に設置された粗さは運動量や熱輸送を活発化させることが知られており,ガスタービン内部の冷却流路や太陽熱発電システム等の熱交換器の性能向上のために用いられています.しかし,壁面粗さは熱輸送を増大させるのみならず,運動量輸送を増大させるために,熱交換性能の向上と引き換えに,流動抵抗の増大を引き起こしてしまいます.熱輸送・運動量輸送の増大量は粗さ形状に大きく依存し,熱交換器の性能向上の為には,少ない流動抵抗で高い伝熱性能を持つ粗さ形状を設計することが求められています.本研究グループでは,粗さの幾何パラメータを系統的に変更した数値計算を行い,粗さ形状が運動量・熱輸送に与える影響の解明に取り組んでいます.

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テイラークエット流れの数値解析

近年,CO2排出抑制などの環境問題により自動車の電動化が注目されています.その中で,電気自動車用に用いられるモータは小型化,高効率化が進んでおり,それに伴い発熱密度が増加します.従って,冷却能力が重要となっています.そこで,冷却方式の一つとして,モータ内部に絶縁性の油を通流し発熱部位を直接冷却する油冷方式は高い冷却効果を得ることができます.モータ内部は内側で回転するロータと外側で固定されるステータコイルで構成されており,油冷モータの場合は,その間を空気と油で満たしています.その際,ロータ・ステータがそれぞれ有する溝はロータを駆動するために必要な一方で,熱だまりの発生や摩擦抵抗の増大の原因になり得ます.本研究グループでは,ロータ・ステータ溝が伝熱特性に及ぼす影響を明らかにするために,スーパーコンピュータを用いた大規模な直接数値シミュレーションを行っています.

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低計算コストで高精度の計算手法の開発

近年の計算機技術の飛躍的な発展に伴って,産業界における数値流体解析手法としてLarge Eddy Simulation(LES)という手法が関心を集めています.LESは非定常的な乱流変動を直接扱う為,従来のレイノルズ平均モデルよりも高い精度で乱流熱流動を解析することが可能となります. しかし熱流動場を正確にシミュレーションする為には,壁面近傍に見られる急峻な物理量の変化や,微細な乱流構造を正確に捉える必要がある為,非常に細かな計算格子が必要となります.特にレイノルズ数の高い流動場においては,壁面近傍の乱流渦はますます微細化する為,正確なシミュレーションを行う為には膨大な計算格子が必要となってしまいます.

 この問題点を解決する1つの方法に,壁モデルの導入が挙げられます.壁モデルは,壁面近傍の乱流を直接取り扱う代わりとして,壁面近傍に乱流モデルを用いて壁面隣接セルに適切な境界条件を与えます.これによって,比較的粗い格子を用いても精度の良い妥当な解析を行うことが可能となります.本研究グループでは,壁モデルとして解析的壁関数(Analytical Wall function: AWF)を採用し,LESへの導入に取り組み,良い精度で速度や温度の分布を予測することができています.現在はLES+AWFの適用範囲を広げる為に,壁面近傍での物性値の変化が大きい熱流動場や,多孔質・粗面等の非滑面を対象とした流れ場への拡張を目指して,より高度な壁モデル開発に取り組んでいます.

 

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