SSSRCだより

2021年6月1日

SSSRCだより 2021年6月号

衛星“ひろがり”の運用

皆様,こんにちは.修士2年の山田です.最近の私は運用に関する計画を立てたり,メンバーの手を借りながら色々なデータを解析して衛星システムを監視したりと,重責を担っています.

ご存知の方も多いでしょうが,私たちの衛星”ひろがり”は3月21日夜から無事通信できるようになり,現在ミッション達成に向けて活動しています.今では1日に数回のパスをこなすことが当たり前になっていますが,3月14日にISSから放出されてから1週間程度通信できなかった際には心が折れそうになっていました.ここまで来たらやってやるという気概でしたが,あと3,4日遅ければ戦意喪失していたかもしれません...

通信が確保できてからは衛星の状態をチェックするためのデータをダウンリンクし,システムの健全性を確認しました.電力や姿勢の状態が大方掴めた後,ようやくミッション達成のためのパドル展開,ミウラ折り構造物展開と2段階の展開フェーズに入りました.構造物展開は先代のOPUSATでも手こずった部分でしたが,パドル,ミウラ折り構造物とも無事に展開し現在では画像の計測・ダウンリンクを重ねています.また,もう一方のメインミッションである高速通信技術実証もミニマムサクセスを達成し,フルサクセス達成に向けて順調に評価データをダウンリンクしています.アマチュア無線メッセージサービスについても間もなく開始しますので,どうぞご期待ください!

最後に,衛星運用がプロジェクトメンバーの”日常”となり,活動できていることは皆様のご支援あってのことだと常々感謝しております.ひろがりプロジェクトだけでなく,次期衛星プロジェクト,ロケットプロジェクトにおいても皆様により良いご報告ができるよう精進して参りますので,引き続きご支援賜りますようお願いいたします!

JSSODから衛星放出後の歓喜の瞬間

衛星からの電波を待つ開発メンバー

航空宇宙工学分野 修士2年 山田将史

新規衛星プロジェクトの近況

こんにちは、学域3年の原田です。ここでは去年12月にスタートした新規衛星開発プロジェクトの近況をお知らせいたします。

 現在まで、SSSRCとしては3機目の人工衛星となるOPUSAT-Ⅲ(仮称)を開発するにあたり、その衛星が果たすべき「ミッション」を決めるべく検討を行っておりますが、結論から申しますと、まだハッキリとしたことは決まっておりません。

「ミッション」はプロジェクトの根幹を成すものであり、内容によっては今後の開発体制やその期間、予算や技術的難易度などが大きく左右されるため、慎重に決める必要があります。今回私達がミッションを検討するにあたり重視する要素としては、「新規性」、「面白さ」、「学術的価値」、「実現可能性」、「経済性」が主なものになります。これらの要素の評価は難しく、総合的に評価をしなければならないので、プロジェクトメンバーが持ち寄ったアイディアだけでも評価、比較に時間が掛かってしまっています。一方で、メンバー間で大量のミッションアイディアを出し合ったにもかかわらず、傑出したアイディアが残るかと言えば必ずしもそうではないのが難しい所です。そこで、大阪府立大学に在籍していらっしゃる先生方や、特定の分野の専門家の方々にお声がけして、より専門的な知見から得たアイディアを募ることなど、多くの方法を目下検討中です。

 現状、本プロジェクトは運用中のひろがりプロジェクトと並行して進めており、新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う緊急事態宣言の発出などもあり大学にも入りづらく厳しい状況が続いていますが、リモートワークを活用して濃密な議論を重ね、メンバーが納得できるミッションを追及していきたいと思います。今後ともご後援の程、よろしくお願いいたします。

ミッション検討会議リモートの様子

航空宇宙工学課程B3 原田光

教えて教わる

はじめまして、学部2年の黒川です。梅雨ですね。陸生の貝類がそこらに跋扈するおぞましい季節です。皆さまにおかれましては靴下を濡らさずに過ごせていますでしょうか? 僕はまた水たまりを踏みました。梅雨なんて大嫌いです。

さて、今回は僕が2月あたりから参加している新歓・新入生教育についてお話ししたいと思います。
今年は昨年度と異なり、4月から対面授業を行うことが発表され、経験したことのない対面での新歓の準備をドタバタ進めていたのですが、新歓を始めてわずか3日で授業のオンライン化が発表され、新歓もオンライン開催への変更を余儀なくされました…。そのような事情もあり、万全の状態で全日程を終えられた訳ではなかったのですが、ありがたいことに21名もの1年生が入所してくれました。

1年生はこれから1年間、新入生教育を通じて、プログラミング、回路設計、SE(システムエンジニアリング)に関する基礎的なことを学び、それらの知識をCanSatと呼ばれる模擬衛生製作の中で実践し、衛星・ロケット開発に必要な様々な能力を身につけていきます。

現在はSE講習も佳境を迎え、来週の末には回路のいろはを学び始める予定です。

新入生教育をする立場になり、「教わる側から教える側へ」というのは先輩の言ですが、恥ずかしながら半人前の僕は、彼らに手ほどきするためにこれまでなあなあで済ませていた諸々を改めて学び直し、自分の知識が如何にその場凌ぎのものに過ぎなかったかを教えられています。

出来ることなら、質問にはなんだって淀みなく答えてくれるかっこいい先輩になりたいものですが、まだまだ力不足です…。ぐぬぬ。とりあえず今年は困っているときに話しかけてくれる優しい先輩あたりで手を打っておくことにします。

まあ自分の力不足は脇に置いておくとして、教えることを通して学ぶ、という行為自体はとても素晴らしいですね。これは何も新入生教育に限った話ではなく、新歓でSSSRCについて正しく説明するために、当センターの理念や沿革を自分の頭の中で改めて整理した経験もこれに通ずると思うのです。当センターではこの教えることで学ぶ行為が日常的に行われているのでしょう。

教えることで、また教わる。月並みな言葉ですが、体験するとなんとも筆舌に尽くしがたい、心地よい気分になりました。

僕もこれから1年、よく教え、また学びたいと思います

新歓の準備風景

海洋システム工学課程 学部2年 黒川 俊章