SSSRCだより
2020年9月7日
SSSRCだより 2020年度9月号
“ひろがり“プロジェクトの状況
こんにちは、修士2年の青島です。今年度の4月より“ひろがり“プロジェクトのPMを担当しています。 “ひろがり“プロジェクトの状況としては、先月に最後の試験である振動試験が完了しました。現在は安全審査などの各種審査が進行しています。この審査をパスすることができれば、2020年10月に衛星の引き渡しがあり、2021年2月に打ち上げが行われる予定です。
人工衛星"ひろがり"
今年度は、打ち上げ前の佳境であり、衛星に実際に触れる作業が多くありました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、4~5月の2ヶ月間に大学内へ入構することができなくなってしまいました。これは、実質作業のストップと同じであり、スケジュール的に非常に厳しい状況でした。この期間中には、6月からスムーズに作業が進められるように、手順書や感染症対策の検討など、リモートでできることを進めました。この期間での作業から、一部の作業についてはわざわざ対面で行わなくても、リモートで十分、もしくは、従来以上の効率を持つと気づくことができました。今後も、このリモートを有効活用する仕組みは取り入れていけたらと思います。コロナウイルスも悪いことばかりではないのですね。 6月以降、衛星を用いる開発がリスタートしてからも多くの問題が発生しました。そのなかの一つが、衛星構体がフィットチェックケースに入らないという問題です。衛星構体には0.1mm以下の寸法要求があります。これは、若干の寸法公差やネジを締める順番を少し変えるだけで逸脱してしまいます。この問題を解決するために、急ピッチでの構体の再製造、詳細な組み立て手順書の検討を行いました。今回は、以上のような対応をしましたが、もっと根本的にこの問題を解決するためには、余裕を持った設計をすることが重要だと思いました。余裕を持った設計をしていれば、予期していない問題が起きた時に、設計で設けておいたマージンで解決できる可能性が出てくるからです。マージンを大きくしすぎると、他のシステムの制約を大きくするなどの問題が発生するのかもしれませんが…。次号機ではこの反省を継承し、余裕を持ち、かつシステム全体を考えてバランスの良い設計ができるように意識したいと思います。
外観検査
このような厳しい状況で、最後の試験まで完了できたのは、プロジェクトメンバーみんなの努力はもちろんですが、それだけでなく大学教員・事務員の皆様、室蘭工業大学の皆様、生産技術センターの皆様、IMV株式会社の皆様、JAXAの皆様、株式会社中金の皆様、播磨機工株式会社の皆様などなど、挙げきれないほど多くの方々のご協力があって初めて達成できたと強く思います。皆様、本当にありがとうございました。 しかし、僕たちの衛星はまだ何も達成していません。打ち上げまでには安全審査フェーズ3、適合性確認審査などの審査があり、打ち上げ・放出後には様々な運用が待ち構えています。これらを全て達成して初めて、「“ひろがり“という衛星は成功した。」ということができます。真のミッションサクセスをし、ご支援いただいた皆様に「“ひろがり“という衛星は成功しました!」というご報告ができるよう、センター員一同、手を緩めずに開発を進めていきたいと思います。今後とも、ご支援ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!!
修士2年 青島 猛弘