SSSRCだより
2019年10月29日
SSSRCだより 2019年10月号
その衛星,本当に安全ですか??――「ひろがり」プロジェクト
お久しぶりです,約一年半ぶりに執筆担当になった,OPUSAT-IIプロジェクト熱構造系4回生の服部です.一年半もあれば,偉大な先輩は卒業され,フレッシュでやる気あふれる後輩が新たに開発メンバーとして加わり,当時3回生になったばかりだった私は構造系の取りまとめを経験し,4回生になり卒業後の進路を決めているところです.大学院入試も終わったので4回生も前よりもっと積極的に開発に関わっていきます! さて,一年半もあれば衛星の開発も進んでおり,今はフライトモデル(実際に宇宙に行くモデル)の製作を目前に,エンジニアリングモデル(試験用のモデル)を用いて入念に試験を行っています.試験をする度に不具合が見つかり,回収し,もう一度試験する…の繰り返しの日々です.何のためにこんなに何回も試験をするのかと言いますと,一つはもちろん,衛星のミッション成功率を上げるため,そしてもう一つは「衛星の安全性を証明する」ためです. 私達は「宇宙でミッションを行う」ものを開発していますが,実際に私達の衛星を宇宙へ運んでくれるのはロケットです.ロケット一機を打ち上げるのには相当なコストがかかる上,そのロケットには「ひろがり」以外の人や荷物(他衛星など)も載せるので,失敗は許されません.したがって,載せる側としては,「ひろがり」がロケットや他の宇宙機あるいは搭乗員に被害を与えないかどうかが気になるポイントです.万が一,「ひろがり」が打ち上げの衝撃で破損し,破片が他の衛星やロケットを巻き込んだら一大事です.こうした危険を伴うトラブルが起きないよう,衛星を設計・開発する上で最低限守るべき制約があります.この制約を満たし,「ひろがり」が安全であると証明し,審査に通って認められて初めて「ひろがり」は宇宙へ行くことができます.このように,開発を進める上ではミッションの成功という面だけではなく,安全面にも配慮することも大切になってきます(「システム安全」という考え方です).ここでは「ひろがり」を例に挙げましたが,全てのモノづくりにおいて,決して軽視してはならない概念です. 現在私はこうしたシステム安全の観点からプロジェクトをサポートする立場に居ます.メンバー全員の想いを乗せた「ひろがり」が無事審査に通ることを待ち遠しく思いながら,「ひろがり」が宇宙で活躍できるよう開発に励んで参ります.
航空宇宙工学課程 学部4年 服部 華奈
電源系の近況
お久しぶりです.現在学域3回生の真っただ中にいる牛尾です.3回目の夏休みももう終わってしまったということで,悲しみに暮れています.噂によるとこの夏休みが最後の夏休みだということで,年月の流れの早さが身に染みている今日このごろです.
月日の流れと言いますと,SSSRCでの衛星開発もそろそろ大詰めになろうとしています.僕が所属する電源系ではEM基板のバグ回収と並行してFM基板の発注準備が始まりました.EMとは“Engineering Model”の略であり,いわゆる試作品のことです.そして,FMとはFMラジオのFMではなく,“Flight Model”の略であって,平たく言えば本番用ということです. EM基板が完成して以降,ずっとEM基板でのデバッグに時間を割いてきました.OPUSATの設計を基礎にしているとはいえ,電源ラインの再設計やOPUSATにはなかった機能なども実装されており,大小様々なバグが発生しています.まだ全てのバグを完全に回収しきれているわけではありませんが,こうやってFM基板発注準備までこぎつけたことは非常に感慨深いことです. 衛星に実装されている諸機能の性能を十分に発揮させるための環境づくりという観点で,僕は電源系の役割に誇りを持っています.今後もひろがりの開発を担う一人として,SSSRCのメンバーの一人として,ますます精進していく所存です!
こんな感じの基板を作っています!
航空宇宙工学課程 学部3年 牛尾 洸大
アンテナ設置とケーブル試験
こんにちは.今回このSSSRCだよりで執筆することになりました,学部二年の川原です.おぷーTwitterを見ている人はご存じでしょうが,最近地上局アンテナが新たに屋上に建設されました.というのも以前から存在した地上局アンテナは去年の夏休みに大学構内の木々を根元からひっくり返すほどの脅威をふるった台風21号が接近した際に,壊れてしまいました.そのため,新たな地上局アンテナが必要となったのです. さてそのアンテナに接続するためのケーブルがあるのですが,その既存のケーブルが実際の運用で使用できる要求を満たしているのかを調べる試験を私は行いました.ケーブルにコネクタを接続する段階から始めたのですが,私自身の経験が足りなく(はんだ付けをするのですがこの時2回目でした),かなりの時間を直射日光の中でやることになりました.そのときに早く終わるだろうと思っていた私は水を持たずに作業していてしまったと思いました.そう思っていたときにお茶を持ってきてくれたことには感謝しかありません.その後,回線計算を行い,一度計算方法に誤りがありましたがなんとか終わらせることができました. このように私自身経験値が少ない分,まだまだ学ぶところが多いですが頑張って衛星開発に力を入れたいと思います. ちなみに今回建設されたアンテナは以前の壊れてしまったアンテナよりも大きく,屋上からだけではなく,地上から見上げても見ることが出来ます.ぜひ見つけてください. これからもご支援よろしくお願いします.
新アンテナ
航空宇宙工学課程 学部2年 川原 大毅
展開機能性能ダウンリンク
今回初めてSSSRCだよりを書くことになりました、学部2年の谷口です。自分は工学域物質化学系学類の化学工学課程に所属しており、SSSRCのミッション部の一部を担当しています。ミッション部で担当しているのは展開機能性能ダウンリンクという機能で、自分の専攻している化学工学とはほとんど関係がないこと行っています。展開機能性能ダウンリンクについて説明をすると、まず、「ひろがり」(現在SSSRCが開発を進めている2Uサイズ(10×10×20 cm)の超小型人工衛星)は展開構造を持っており、展開を行う際にニクロム線を発熱させテグス(糸)を溶断する動作があります。この発熱させるニクロム線の箇所やニクロム線に流れた電流等のデータを「ひろがり」は記録します。この保存しているデータを展開機能性能保存データといいます。そして、通信して衛星から地上へデータを降ろすことをダウンリンクというので、展開機能性能保存データの衛星から地上へのダウンリンクに関する機能を展開機能性能ダウンリンクと言っています。 今、衛星開発ではEM基板で模擬運用を行っています。模擬運用はミッション部における各機能のプログラムを一つにまとめ、ハードの面でも実際の衛星に近い状態にして、プログラムを動かし問題がないか確認していく試験と自分は認識しています。この模擬運用で自分の知識が足りていないと感じることが多々あるので、今後は今まで以上に先輩方に質問するなどして、「ひろがり」に関する知識を補っていこうと思います。
模擬運用の準備
化学工学課程 学部2年 谷口 輝