SSSRCだより
2018年8月31日
SSSRCだより 2018年8月号
「共通認識」について
お久しぶりです,一年ぶりに執筆担当となったPMの飯田です.今回は6月から8月にかけての衛星開発,特に6月に開催した基本設計審査会(Preliminary Design Review,PDR)について報告しようと思います.PDRとは外部の方々にEMの設計をレビューしていただく審査会であり,もちろん設計の不備等を発見することが目的です.しかし,今回のPDRの大きな目的は,開発メンバーの設計に対する共通認識の形成にあります.現在はサブシステム毎にメンバーを分けて開発を進めているため,担当以外のサブシステムの理解がおろそかになりがちです.そのため,開発メンバーごとに設計の認識が異なってきてしまいます.このように設計の共通認識がないまま開発を進めてしまうと,統合試験の際にサブシステムのインターフェースに不具合が生じてしまう可能性があります.開発が進めば進むほど,こういった類の不具合による手戻りが大きくなってしまうので,BBMが完了したこの時期に認識をそろえる必要があると感じました.そこで,せっかく貴重な時間を割いてレビュー会を開くならもっと利用してやろうと考え,共通認識の形成にPDRを利用することにしました. 共通認識の形成のために,そしてPDRで議論できるように,PDRの一週間前に会議資料を完成させ,開発メンバー全員でレビューしました.さらに,PDRの一週間後には,PDRでいただいた意見を精査し,設計に反映させるべきか否かを議論し,EMの設計を固めていきました.設計の会議のような意思決定を伴う会議に大人数が参加すると非効率な会議になることは承知の上で,共通認識のために敢えて全員参加としました.PDR本番も含め設計について議論する場を3回経験してもらうことで,開発メンバーに共通認識が醸成されていったのではないかと思います.こうしたプロセスは,開発の歩みを大きく止めてしまうものの,後の手戻りのリスクを考えると,結果としてプロジェクト成功のためには必要ではないかと考えています. また,PDR当日は,遠方にも関わらず室蘭工業大学の開発メンバーと教員の方々にも参加していただきました.お互い相手の設計について理解を深める良い機会となり,さらに親睦も深めることもでき,今後の共同開発が円滑に進むことが期待できます. 現在は,なんとか形にしたEMの設計をもとに,基板と構体を発注しています.今後は,EM開発を進め,秋には環境試験を随時実施していく予定です.
PDRの様子
PDRでの集合写真
工学研究科 航空宇宙分野 修士1年 飯田輝澄
ミッション部の上位機能実装について
初めまして,学部3年の尾崎です.SSSRCでは主に実装班として活動しています.実装班ではミッション部の上位機能を実装しています.ここでは,実装班のこれまでの活動と現在取り組んでいることついて簡単に説明させていただきます. 上位機能の実装は昨年から始まりました.ユースケースに沿ってソフトウェアを作成し,ブレッドボードでの試験,ミッション基板での試験を経てソフトウェアを修正してきました.その後,実際の運用を模擬した試験であるEnd-to-End試験を行いました.End-to-End試験では運用初期から運用が終了するまでのミッションを通して試験しました.また,その他にも設計変更に伴ってソフトウェアの修正を行いました. 現在実装班は新しくなったFMデバイスドライバに合わせてソフトウェアを修正し,そのソフトウェアの試験を行っています.修正が生じる機能は地上局に送信する機能ののみであり,上位機能のソフトウェアの修正も軽微となっています.大きなバグが出なければ,比較的早く終わるのではないかと思います. これから,EM開発が始まります.EM開発では,より良いソフトウェアを作り上げていきたいです.
ソフトの試験の様子
航空宇宙工学課程 3年 尾崎 鷹哉
デコードソフト開発中
こんにちは,SSSRC衛星プロジェクト3年の前田です.2017年8月号にて新入生教育の模様をお届けしましたがご覧になっていただいた方もいらっしゃるでしょうか.今回は私が衛星プロジェクトの中で担当している通信系の開発についてお話ししたいと思います. アマチュア無線帯における高速通信技術の実証というミッションを掲げ,種々の方式によるダウンリンクを行う予定のひろがりですが,現在それらの方式に対応したデコード用のソフトウェアを開発中です.年明けから試行錯誤しており最近ようやく形になりつつあるといったところですが,ここまで来るのに知識不足の箇所,あるいは検証が難しいところが多かったために開発の見通しが立たず非常に苦しい時もありました. 開発の見通しが立たない原因としてスケジュールの詳細化不足と視野が狭くなることがあると思っています.期限のある開発の中で自分が関わる工程の影響を周知することは必須ですが,管理する側が舵を取りやすいよう何を,いつまでに,何を目的としてやるのか,できない場合はどう対策をとるつもりなのか,などが明確であることが大切だというごく当たり前であるはずのことを,今回の難航する開発の中で指摘されながら再確認しました.また,似た方法をとってばかりでは段々自分の中で対策案が凝り固まるということも実感しました.難航するからこそ,いくつも選択肢を用意する柔軟さが止まらないためにつけるべき力の1つかと思います.そのためには常に知識を吸収する姿勢も忘れずにいたいものです. 今後は先述のソフトウェアの試験と改良が予定されています.まだ至らぬ点も多かろうと思いますが反省を繰り返しながらメインミッションの1つである高速通信を成立させられるように努めていきたいと思います.
開発中のデコード用ソフトウェア
航空宇宙工学課程 3年 前田 陽生
撮像系の最近の活動のご紹介
衛星「ひろがり」プロジェクトの撮像系の栢割です.ここでは撮像系の最近の活動についてご紹介します.撮像系は現在End-to-End試験に向けて,他系とともにミッション機能の統合の工程を進めています.この工程は,撮像機能やダウンリンク機能や振動計測機能といった各上位機能のソフトウェアを一つに統合した上で,各機能が問題なく動作するかどうかを試験する工程です.ソフトウェア自体はこれまでの工程で少しずつ完成に近づいており,最近は専ら動作試験,コード修正を中心に行っています.撮像系はカメラモジュールを扱うのですが,カメラの設定や撮像のアルゴリズムを工夫することで,より質の高い厚板二次元展開構造のパネル形状の計測を目指しています.具体的には,パネルを2つのカメラで撮像するのですが,この2つのカメラができる限り同時に撮像するように工夫したり,撮像のプログラムの全体の処理時間が短くなるように工夫したりしています.また,6月末に行われた基本設計審査(PDR)でご指摘いただいたことを踏まえて,撮像時の画像データの処理方法を見直すなど,ミッションの成功率を上げるための努力を日々行っています. また私は新入生教育委員会に所属しているのですが,7月下旬からいよいよ新入生のCanSat実習がスタートしました.CanSat実習で得た知識と経験は必ず将来役に立つので,新入生にはぜひ意欲的に取り組んでもらいたいと思っています.実際に,私は去年のCanSat実習でカメラモジュールを扱ったミッションを行っていたのですが,その時に必死に勉強した内容を衛星プロジェクトで活かすことができました.新入生にはこれまでプログラミングや電子工作などの講習を通して着実に知識を身に着けてきてもらっているので,それらの知識を上手く組み合わせ,応用して有意義な実習にしてもらいたいと感じています.私も昨年度の経験と今の衛星プロジェクトでの経験を活かして積極的に新入生をサポートしていきたいです. 今後はEM,FM開発と続いていきますが,先輩方に頼ってばかりではなく自分たちが主体となって活動できるようにより一層邁進していきたいと思います.
PDRの様子
現代システム科学域 マネジメント学類 2年 栢割 脩平
SSSRCでの僕の活動
はじめまして.SSSRC所属2回生の牛尾と申します.今現在,僕は電源系の見習いとしてひろがりの開発に関与しています. 電源系は基板やバッテリー,太陽電池などのハードウェアを主に扱う系です.この系ではプログラミングなどの知識はそれほど必要ありませんが,電子回路やそれを構成する各電子機器についての知識などが必要とされます.ひろがりの成功をハード面から支えるためにとても重要だと僕は思っていて,非常に面白いと感じています.電子工作などを経験してこなかったので初めて学ぶことばかりですが,将来のOPUSAT-IIIプロジェクトの中心的立場になる学年として日々精進していきたいと思っています. また,ひろがりの開発と直接の関係はないですがSSSRCの新入生教育を担当する委員会のメンバーとしての活動も行っています.新入生教育とは本筋の衛星開発プロジェクトに参加する前に衛星開発に必要となる基本的な知識を1回生に身に着けてもらうために行っている研修期間のことです.今現在,新入生にはCanSatという小型模擬衛星の開発を3チームに分かれて行ってもらっています.実際のものづくりを通してチームで一つのものを開発するために必要となる様々な技能や知識を体験的に習得してもらうことが目的です.大半の新入生にとって初めての経験となると思うので,出来る限りのサポートを出来たらいいなと思っています. SSSRCでは今まで経験してこなかったような「生きた知識や技能」を学べていると思っています.また,衛星開発は自分の興味分野でもあるのでSSSRCでの活動は非常に楽しいし面白いです.今後もSSSRCの一員として日々頑張っていきます!
OPUSAT-II概観図
新入生教育の様子
航空宇宙工学課程 2年 牛尾洸大