SSSRCだより
2023年6月1日
SSSRCだより2023年6月号
耐放射線試験
はじめまして.姿勢系に所属しております4回生の船田です.
姿勢系では様々なセンサを扱います.思えば入所1年目のCanSat開発のときから私は楽しくセンサを扱っていました.そのときのミッションは,着地後機体を分離し,砂を採取し,それを撮影するというかなり詰め込んだ内容でした.ただCanSatは模擬衛星ですから地球上でこのミッションを行います.対して現在開発中の衛星は実際に宇宙に行きます.特殊な環境である宇宙でセンサを使う場合には注意が必要です.
宇宙では衛星が放射線にさらされ続けます.運用期間中センサは放射線に耐えなければなりません.放射線の影響は主に2つ,シングルイベント効果とトータルドーズ効果があります.シングルイベント効果では一時的に0と1の情報が反転したり過電流が流れたりします.これは確率的に発生するもので,機器をリセットすることで対策できることがあります.トータルドーズ効果では多量の放射線により半導体の特性が劣化します.運用中に放射線の影響は蓄積され続けるため,これは衛星の寿命にもかかわる問題です.
もちろん放射線に強い宇宙用のセンサが存在するのでそれを使えばいいのですが,値段が高い!そして届くのに時間がかかる!一概には言えないですが入手しにくいのです.そこでCanSatにも使うような民生品の普通のセンサを搭載する必要が出てきます.これは放射線への耐性が未知ですから,試験して耐性を調べなければなりません.ということで耐放射線試験を計画中です.
耐放射線試験といっても単にセンサに照射して終わり,とはいきません.どれくらいの強度で照射するか,何時間照射するか,放射線を当てたくない部分はどのように保護するのか,考えなければならないことはたくさんあります.そして試験が終わったところでまだ機器選定の段階,道のりはまだ遠いです.
もうすぐ照射室に入れられる機器
航空宇宙工学課程 学部4年 船田光星
熱系にて取り組んでいること
こんにちは.衛星プロジェクトの熱系に所属しております,3回生の阿片と申します.
2022年9月号,12月号に掲載されている通り,私は熱系教育を通して熱設計や熱制御に必要な知見を学んだのちに,過去に当センターが開発したひろがり (OPUSAT-Ⅱ)の熱解析を練習として行いました.実際に過去の先輩が設計した人工衛星の資料を用いて熱解析を行うことで,熱教育で学んだ内容をより実践的な形で活用することができ,非常に良い経験となりました.
ひろがり(OPUSAT-Ⅱ)の熱解析
さて,一通り熱解析に関する勉強を終え,現在は何をしているのかといいますと,次期人工衛星で用いる,サーミスタという機器の単体試験です.熱設計において,宇宙空間で人工衛星のバッテリーやパネル等が実際にどのような温度になっているのかを知ることは非常に重要になってきます.そこで必要となってくるのがサーミスタという,温度変化によって抵抗値が変化する特性をもつ電子部品です.この特性を用いると,電圧を測ることでサーミスタが取り付けられている物体の温度を知ることができます.
サーミスタを用いた温度測定には,他にも変圧器やADコンバータといった機器を用いる必要があり,知識不足が目立つ場面も多々ありますが,電源系の皆さんの力も借りながらも日々頑張っております.
まだまだ力不足な面が多いですが,より良い衛星開発ができるよう精進したいです.
航空宇宙工学課程 学部3年 阿片雅玖人
粉骨砕身!地球センサ選定
はじめまして、2回生の石濱と申します。衛星プロジェクト姿勢系へ配属となってから早四ヶ月が過ぎました。人工衛星の知識はまだまだ浅いですが、自分に割り振られた役割を果たすために新二回生教育などを通してこれまで勉強してきました。私が姿勢系に入った理由はCanSat講習にあります。私が所属していた2022年度C班のCanSatのミッション「災害時の被害状況確認」を遂行するために様々なセンサを搭載したのですが、それらのセンサがミッションの成否を分ける大きな要因のひとつであることに魅力を感じ衛星プロジェクトでは姿勢制御で力になりたいと決意しました。
今、私は姿勢系として「地球センサ」に取り組んでいます。地球センサとは、人工衛星の姿勢を検出するためのセンサの一種です。地球センサは地球の方向を検出するもので、一般的に地球そのものをカメラなどによって可視光線で捉えるのではなく、地球を覆う大気圏から放射される赤外線を赤外検出素子(赤外線センサ)によって捉えます。そうすることにより昼夜・気候によらない安定した検出ができるのです。地球センサは、使用する赤外検出素子と動作原理によって様々な組み合わせがあります。代表的なものとして、
赤外検出素子
- サーモパイル
- ボロメータ
- 焦電型素子
動作原理
- 地平線スキャン方式
- 地平線トラッカ方式
- 静的熱平衡方式
が挙げられます。地球センサを選定するにあたって、まずこれらの方式の選択に取りかかりました。教員の助言や姿勢系内での会議の末、小型で安価なサーモパイルまたは焦電型素子、複雑な機構を持たない静的熱平衡方式に絞り込みました。
静的熱平衡方式の視野配置
ここまでは順調に進んでいたのですが、頭を悩ませたのは素子の選定。センサの性能はトレードオフの関係であり、高性能であると当然高価になってしまいます。また、高感度を求めると動作範囲が犠牲になります。静的熱平衡方式を実現するために素子は最低4個必要ですが実際は8個搭載するので安価なことが望ましいですし、地球からの赤外線の波長が素子の動作範囲に含まれていることも必要です。地球センサ専用モデルなるものがあったらいいのですが…。とにかく、使用する素子の候補を複数用意して試験をし、できる限り早く素子を決定しようと思います。
電気電子システム工学科 学部2年 石濱宏樹