SSSRCだより
2024年9月29日
SSSRCだより2024年9月号
通信系の業務について
こんにちは,通信系M2の林です.
本日は通信系の業務である周波数調整と回線計算について説明します.
国際周波数調整とは,無線通信の周波数を国際的に調整し,効率的かつ公平に利用できるようにするプロセスです.無線通信は,ラジオ,航空通信などさまざまな分野で利用されていますが,限られた周波数帯域を複数の国やサービスが共存して使用するため,干渉を避ける必要があります.
この調整を行うのが,国際電気通信連合(ITU)です.ITUは、各国の政府や通信事業者との協力のもと,周波数の割り当てや規制を策定し,国際的な調和を図ります.特に,無線通信の周波数は地球規模で影響を及ぼすため,国境を超えて干渉が発生しないようにすることが重要です.この周波数調整は,衛星を作る場合は必ず必要になります.
通信系では,ITUにアマチュア無線帯の使用許可をとるために必要な回線計算を行っています.「衛星作りました!」でも「宇宙で通信できるかわかりません!」となったら大変です.そこで宇宙空間にいる衛星と地球局の間で通信ができることを理論的に証明するためのものが回線計算です.
この回線計算では,衛星高度・無線機の性能・アンテナ性能など様々なことを考慮する必要があります.これらを資料にまとめ,周波数帯の使用許可をもらったらようやく衛星と通信する事ができます.
現在,通信系では回線計算やアンテナ試験,無線機性能評価などを進めるとともに,ミッションであるSSTVの実装に向けて日々活動しています.
化学工学分野 修士2年 林 絹子
最近の構造系の活動について
こんにちは.SSSRCの衛星プロジェクトで構造系に所属している桂田です.今回は最近の構造系の活動について説明しようと思います.
まず構造系の役割とは,ロケットの打ち上げ時の荷重,振動に耐える衛星構造を設計することです.現在,構造系では一部を除いた機器の配置を決定し,打上げ時の荷重及びその振動環境に衛星が耐えられるかどうかを確認する構造解析の段階へと進んでいます.しかしながら,構造解析は一筋縄ではいきません.一度解析を回すのに時間がかかることに加え,エラーとなったり明らかにおかしい結果が出たりするなど数回で求める結果を得ることはほぼ不可能です. 数十回,時には数百回ものチャレンジが必要な場合もあり知識はもちろん,粘り強さが重要な作業になります.これは一人ではとてもやりきれないため,構造系のメンバーとエラーの原因について話し合ったり手分けして条件を一つずつ変えてみたりするなど協力して開発を進めています.非常に大変ではありますが,エラーの原因を特定して一歩前進できた際には大きな達成感を得ることができます.
これからもOMUSAT-IIIの完成に向けてメンバーと協力しながら解析に取り組み,さらにその先のステップへと進んでいきたいと思います.
衛星の構造解析を行った結果
航空宇宙工学課程 4年 桂田吏輝
C&DH系って何?
今回初めて記事を執筆させていただくことになりました.SSSRCの衛星プロジェクトのC&DH系に所属しているB2の眞野と申します.今回は,私が所属しているC&DH系が何を開発しているのかについて紹介いたします.
SSSRCの衛星プロジェクトでは,開発を担当する衛星のパーツごとに,複数人のグループに分かれて人工衛星開発を行っております.例えば,構造設計を担当する構造系,電源系統を担当する電源系などに分かれており,これらの一つとして私が所属しているC&DH系があります.他の系はその名前から何をやっているのか分かりやすいのですが,C&DH系に関しては,名前の癖が強くて「えっ、何それおいしいの?」と首をかしげる方も多いかと思います.(私もそうでした....)
C&DHという単語は「Command & Data Handling」の略形であり,これが意味することは「コマンドとデータの処理」です.人工衛星を宇宙空間で運用していく過程では,地上局と電波で情報をやり取りし,周りの環境やミッション内容に応じて機体を制御する必要があるのですが,これらをこなすには,衛星に搭載されている様々な機器を制御する「衛星の頭脳」に該当するものが必要になってきますよね.この「衛星の頭脳」に該当するのが,OS(Operating System)というプログラムです.iOSやWindows,Androidといった単語を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか.実は,これらもすべてOSと呼ばれているプログラムの一種に分類され,主にコンピュータの部品の制御やメモリの管理などのコンピュータの動作に必要な基本的な動作を制御しています.これらを基盤として,皆さんがよく使っているアプリは作られているので,基本ソフトとも呼ばれます.C&DH系では,このOSと呼ばれる基本的なプログラムを人工衛星用に開発しております.
と,このように一通りの説明ができる程度には知識を身に着けることができたのですが,恥ずかしながら私はまだまだ勉強不足で,OS開発において苦労することが多々あります.また、C&DH系自体がほかの系と比べて比較的新しくできた系であるということもあって,他の系と比べると先輩方からの技術・知識の蓄積も浅く,正直なところ,開発は手探り状態で難航しております.このような開発状況となってしまっておりますが,打ち上げ予定に間に合うように何とか開発を進めていく所存ですので,どうぞこれからも応援よろしくお願いいたします.
実際のプログラミングの様子
電子物理工学科 2年 眞野陽人