建築学科
概要
芸術・学術・技術に立脚した
「総合建築教育」を展開。
建築学とは、人間にとって不可欠な建築環境を築くための学問です。その際に考えるべきなのが、社会や自然の多様な変化です。とりわけ日本は、少子高齢社会を迎え、量から質への価値観の転換が進んでいます。これまでのようなスクラップ・アンド・ビルド(壊して造る)ではなく、建築固有の歴史と文化をふまえ、環境の保全と創造、効率的なストックの維持管理と有効利用が実現できる建築のあり方が求められています。さらに、気候変動等による自然災害の激甚化に対応し、防災対策を重視した安全・安心かつ快適な建築づくりも求められています。つまり、建築資産の再活用・省エネルギー・防災等を考慮した持続可能な建築環境を築くには、人文・社会領域の幅広い要求に応える必要があり、工学・技術・芸術に立脚した総合的な対応力が不可欠です。
持続可能をめざす未来社会では、グローバルな視野と多面的な視点を持つデザイナーやエンジニアに今以上の大きな期待が寄せられます。建築学科の教育理念は、芸術・学術・技術に立脚した「総合建築教育」です。「建築」から「都市」までを幅広く学ぶことで、成熟期の社会が迎える、「発展」から「持続」へ、「効率性」から「人間性」へという課題を深く理解します。そして課題解決に対して「理論的」かつ「実践的」に対応できるデザイナーやエンジニアの育成をめざします。
研究グループの構成と教員
杉本キャンパス
研究グループ | 職名 | 氏名 | 主たる研究内容等 |
---|---|---|---|
建築計画及び建築構法 | 教授 | 徳尾野 徹 | 集住体の計画と木域コミュニティの創出、建築ストック再生とそれによる地域再生、木造を中心とした構法計画・構法開発・耐久性計画、以上を統合する空間づくりのプロセスデザイン |
准教授 | 石山 央樹 | ||
講師 | 西野 雄一郎 | ||
建築デザイン及び建築史 | 教授 | 倉方 俊輔 | 建築設計、建築設計論、建築史 |
講師 | 山口 陽登 | ||
都市計画 | 教授 | 嘉名 光市 1) | 都市計画、都市再生デザイン、景観論、都市計画・デザイン史、コミュニティ・デザイン、エリア・マネジメント |
講師 |
高木 悠里 1) | ||
建築環境工学 | 准教授 | 岸本 嘉彦 | 材料特性を利用した室内熱湿気環境制御、建築壁体の劣化進行予測 |
建築情報学 | 講師 | 小林 祐貴 | 建築学における情報技術の利活用、幾何学や組合せ論などの数理に基づいた建築と都市の分析・設計手法の探求 |
建築防災及び風工学 | 教授 | 谷口 徹郎 | 高層建物の風応答、大スパン構造物の風圧特性、耐風設計、低層建物に作用する風荷重評価 |
講師 | 古川 幸 | 建築構造・高層建物-杭基礎一体構造の防災性能の向上 | |
建築構造学 | 教授 | 谷口 与史也 | 建築構造設計、シェル構造・立体骨組構造の力学特性と応答制御、自己復元型鉄筋コンクリート構造、高性能木構造振動制御技術、構造ヘルスモニタリング、地震時損傷評価 |
准教授 | 鈴木 裕介 | ||
講師 | 金子 健作 |
1) 兼担
カリキュラム
1年次 | 基幹教育科目を中心に学びますが、併行する「建築プロジェクトスタディ」では、先端的な課題と実社会での取り組みについて学び、初年次からのキャリア形成の導入を行います。 |
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2年次 | 基幹教育科目に加えて「建築学および建築学関連の基礎的な知識・技能」に関する専門科目の授業が始まります。 ※一部1年次から |
3年次 | 「建築学および関連分野の専門知識とその応用能力」に関するより高度な知識と理論を学びます。 |
4年次 | 必修で「卒業設計」と「卒業論文」の両方に取り組みます。学部教育の集大成としての「卒業設計」と、特定分野での深い考察を行う「卒業論文」を完成させることで、「総合建築教育」の総仕上げになります。 |
4年間を通じて「造形実習」「建築基礎製図」「建築設計演習」などの「持続可能な生活空間を実現するためのデザイン能力およびエンジニアリング能力」に関する実習・演習も豊富です。2年次から4年次まで続く「建築設計演習」では、設計の実践を通して講義等で学んだ知識や理論の理解を深めます。実習・演習は、常勤教員だけではなく第一線で活躍する芸術家・建築家等のゲスト講師が担当し、プロフェッショナルの視点から指導・評価します。建築設計実務の責任と使命感を学ぶ場ともなります。
研究トピック
建築デザインと建築史の視点を融合し持続可能な建築をつくる。
建築デザイン及び建築史研究グループ
現代の建築デザインの世界で求められることは、「美しい造形」や「機能性」だけではありません。阪神淡路大震災や東日本大震災を経て、「持続可能な建築デザイン」「様々な社会問題を解決する建築デザイン」など、「未来」に向けてデザインすることが強く求められています。私たちの研究室が大切にしている視点、それは、「現在」が「未来」だけでなく「過去」にもつながっているという視点です。「バイオ工学・応用化学実験室増築プロジェクト」では、工学部の学舎に対してこれまでどのような増築と改修が繰り返されてきたのか、その歴史をリサーチすることから始めました。このプロセスで発見された既存建物のピロティ空間や中庭空間のポテンシャルを分析し、模型やCGで何度もスタディを重ねました。外装にはサビの特性を利用することで優れた耐候性を生み出すコールテン鋼という変化し続ける素材を採用し、ずっとそこに建っていたかのような佇まいの建築デザインを行いました。このようにデザインと歴史の視点を融合するハイブリッドな建築の設計と研究が特色です。研究室からは優れた建築家を多く輩出しています。
Photo by KENTA HASEGAWA
Photo by KENTA HASEGAWA
Photo by KENTA HASEGAWA
在学生の声
身近にありながら長い歴史を持つ建築。学ぶすべてが、奥深くて面白い。
大阪市立大学 大学院 工学研究科 都市系専攻 前期博士課程 2年生 川中 大地 さん
奈良県立奈良高校 出身
私たちの生活は建築と密接に関わっています。私はそれらの建築がどのような素材やプロセスでつくられているのかに興味を抱き、建築学科を志望しました。入学後は建築構造・建築環境・建築計画・建築史などを学び、現在の建築、都市が長い歴史から得た知や技術の蓄積によって成り立っていることを知り、さらなる興味関心が生まれました。数ある授業の中でも特に手応えを感じるのは「建築設計演習」です。課題テーマに沿った設計を行い、図面や建築模型を制作し、プレゼンテーションを行うことで自身の建築に対する考えを表現します。作品講評会では、先生方一人ひとりが完成した自分の作品と向き合って批評し、学生と議論してくださるので、さらに深い知識を吸収できました。この様に先生方に親身になって指導して頂けたり、意見交換をしたりできるのも、建築学科の魅力だと思います。
卒業生の声
建築の枠を越えて人と人とのつながりを創出していきたい。
大阪市立大学 工学部 建築学科 卒業 桜間 万里子 さん
大阪府立豊中高校 出身
勤務先 株式会社NTTファシリティーズ
JR加古川駅周辺の防災街区整備事業として開発された「リトハ加古川」のうち、私はサービス付き高齢者向け住宅の「チャーム加古川駅前」の実施設計を担いました。高齢者の使いやすさに配慮したほか、ホテルのようなグレード感あるデザインで「施設であることを感じさせない」という要望に応えました。在学中は研究室のメンバーと日本建築学会のコンペに参加してタジマ奨励賞を受賞。この時から、人と人とがどうつながれるかを模索していたと思います。NTTファシリティーズは建築単体でなくICTやエネルギーを融合する事業を展開しており、建築の枠を越えて「人とのつながり」という自らのテーマと合致すると感じ、入社を志望しました。オフィスなら働き方が変わり、住まいならライフスタイルが変わるというふうに、使う人のつながり方やアクティビティがより良いものになる設計を、今後も手がけていきたいです。
主な就職先
大阪市役所/徳島県庁/大建設計/日本設計/東畑建築事務所/昭和設計/NTTファシリティーズ/安井建築設計事務所/満田衛資構造計画研究所/宮本佳明建築設計事務所/日立建設設計/大林組/竹中工務店/長谷工コーポレーション/鉄建建設/鴻池組/新井組/タマホーム/ミサワホーム/積水ハウス/積水化学工業/西日本旅客鉄道/銘建工業/三機工業/ウィル/フィル・カンパニー/不二熱学工業/高砂熱学工業/第一住建ホールディングス/NTT都市開発/阪急阪神ホールディングズ/関電ファシリティーズ ほか
教育目的
芸術・学術・技術に立脚した「建築総合教育」と、学生の個性を育てる「少人数教育」によって、社会の諸課題に対し専門的な知識・技能を統合し、主体的に行動できるような、柔軟な発想力と論理的な思考力を備え、持続可能な生活空間を創造できる能力を有するデザイナー及びエンジニアとなる人材を養成する。
学科ポリシー
アドミッション・ポリシー
成熟期を迎えた社会の諸課題を的確に把握し、持続可能な生活空間を実現するためには、工学から自然科学、人文社会科学に至るまで、幅広い領域の知識・技能を統合する必要がある。
建築学科は芸術・学術・技術に立脚した「建築総合教育」と、学生の個性を育てる「少人数教育」によって、社会の諸課題に対し専門的な知識・技能を統合し、持続可能な生活空間の実現にむけて主体的に行動できるような、柔軟な発想力と論理的な思考力を備えたデザイナーやエンジニアの育成を目指す。
したがって建築学科では、工学部のアドミッション・ポリシーに加え次のような学生を求めている。
- 建築という形のあるものを実現するための芸術・学術・技術に幅広く興味のもてる人
- 立体的な思考にもとづく空間やものづくりに主体的に取り組める人
- 自分の意見を他人に伝えるコミュニケーションに意欲のある人
ディプロマ・ポリシー
本学科の教育は「建築総合教育」と「少人数教育」を特色としており、以下の能力を身に付けたものに学士(工学)の学位を授与する。
- 自然や社会に対する技術者の責任を理解する能力
技術が自然や社会に及ぼす影響を多面的に洞察し的確に対処するための、技術者としての倫理 - 自然科学、および工学の基礎的な知識・技能
建築学を理解する基礎としての、自然科学、および情報技術を含む工学に関する基礎的能力 - 国際コミュニケーション基礎能力
建築学のグローバル化に対応するための、国際的コミュニケーションにおける基礎的能 - 建築学および建築学関連の基礎的な知識・技能
建築計画・歴史、建築環境・設備、建築構造、および建築生産に関する建築学および建築学に関連する基礎的な知識・技能 - 建築学および関連分野の専門知識とその応用能力
建築学の高度化および複雑化に対応するための専門知識と、幅広い領域にわたる基礎的および専門的な知識・技能を統合して応用する能力 - 持続可能な生活空間を実現するためのデザイン能力およびエンジニアリング能力
建築に関わる社会の諸課題に対し、優れた感性をもって幅広い領域にわたる基礎的および専門的な知識・技能を統合し、持続可能な生活空間を実現するための計画を主体的に立案し、実行するための柔軟な発想力および論理的な思考力
カリキュラム・ポリシー
建築学科では一人一人の個性・感性・知性を磨き、柔軟に発想する力を高めるよう「少人数教育」により「建築総合教育」を実践する。本学科では、設計・計画、環境・設備、構造・材料・防災の各専門領域を通じて総合的な学習・教育を実施し、持続可能な社会の生活空間を創造できるデザイナー、エンジニアの育成をめざしており、ディプロマ・ポリシーに記載している卒業時に習得すべき能力に対応した科目を以下のように編成する。
1〜2年次には、総合教養科目、初年次教育科目、情報リテラシー科目、外国語科目、健康・スポーツ科学科目の履修により幅広い教養と技術者倫理、外国語能力を身につけ、あわせて基幹教育科目・基礎教育科目(理数系分野)の履修により数学・自然科学分野の基礎力を身につける。それとともに初年次から専門科目の基礎として、建築構法及び建築プロジェクトスタディを始めとする導入科目を配置し、専門教育の下地を養うとともに建築基礎製図により建築物を図面として表現するための基礎的技術を習得する。
2~3年次には、「建築計画総論」、「建築デザイン1」、「建築環境工学入門」、「建築構造力学序説」、「建築防災・防火論」及び「建築材料学」を始めとする専門教育科目(選択必修科目および各科目群科目)の履修により、建築に関わる基本的専門力ならびに専門知識に基づいた論理的思考力を身につける。また、「設計演習 1」を始めとする設計演習科目により課題に合わせて自ら設計した建築物を図面として表現する能力を養う。さらに、基礎教育科目(理数系分野)及び「材料学実験」の履修により実験を計画・遂行・分析する能力を身につける。
4年次には、「建築学卒業研究A」及び「建築学卒業研究B」の履修により、提案能力や表現力、コミュニケーション能力、問題解決能力、自主的・継続学習能力を身につける。
各科目の学修成果は、定期試験、中間試験、レポート、発表等の平常点等で評価することとし、その評価方法の詳細については、授業内容の詳細とあわせてシラバスに記載する