都市学科
概要
都市の課題を解決できる
プランナーとエンジニアを養成。
都市のあるべき姿は、社会経済情勢、環境問題、災害対策、国際化などにより常に変化してきました。急激な発展を遂げる中で、かつては無秩序に開発が進み、機能性・効率性が最優先とされたこともありました。結果として自然環境に大きな負荷をかけることになり、生態系の破壊、資源の枯渇、気候変動といった問題が生じています。これからの世界では、「持続可能な都市」の実現が強く求められています。持続可能な都市とは、都市固有の歴史と文化を継承・発展させつつ、環境への負荷を低減し、人間活動と自然環境が調和した都市であり、また、災害などの外的インパクトに強く、柔軟に対応できる、豊かでありながら安全・安心で機能的な都市です。
持続可能な都市の実現には、都市の機能と構造を理解するための基礎科学力と、これからの都市に求められる様々な要素を見極めるための多様な知識が不可欠です。また、科学的根拠を基に都市が抱える課題を読み解いて説得力のある解決策を示す提案能力、提案実現に向けたコミュニケーション能力や順応性も必要です。都市学科では、こうした知識と能力を合わせ持つプランナーとエンジニアを養成しています。
研究グループの構成と教員
杉本キャンパス
研究グループ | 職名 | 氏名 | 主たる研究内容等 |
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都市計画 | 教授 | 嘉名 光市 | 都市計画、都市再生デザイン、景観論、都市計画・デザイン史、コミュニティ・デザイン、エリア・マネジメント |
講師 | 高木 悠里 | ||
都市基盤計画 | 教授 | 内田 敬 | 社会基盤施設・交通施設の建設・維持管理・運用の計画、交通の安全・環境の分析と対策、都市内回遊行動の分析と支援システム構築 |
准教授 | 吉田 長裕 | 国内外の都市交通政策、都市交通のパフォーマンス評価、交通に関わる空間設計 | |
地域環境計画 | 教授 | 西岡 真稔 | 建築・都市構造物の伝熱解析、ヒートアイランド対策、都市の熱環境評価、脱炭素化に向けた都市内のエネルギー需給構造の分析と評価 |
教授 | 鍋島 美奈子 | 空調・給湯に関わる面的熱融通システム、都市熱環境調査と評価、都市農業のネットゼロエネルギー化手法 | |
環境水域工学 | 教授 | 相馬 明郎 | 水圏生態系の保全・活用、生態系の数理モデル化、都市流域圏における社会・自然生態系の機構解明と動態予測 |
准教授 | 遠藤 徹 | 都市沿岸域における自然共生、沿岸水域の環境モニタリングと環境診断、浅海域の生態系サービス、自然再生事業による環境保全効果の検証 | |
都市リサイクル工学 | 教授 | 貫上 佳則 | 水質制御技術、水環境の評価、廃棄物・廃水からの資源・エネルギー回収 |
准教授 | 水谷 聡 | 廃棄物・副産物・再生材料の有害物溶出性評価、震災時の化学物質管理 | |
構造工学 | 教授 | 鬼頭 宏明 | 鋼・コンクリート複合構造の力学的挙動と合理的設計法 |
コンクリート工学 | 教授 | 角掛 久雄 | コンクリートの補修・補強、耐震、耐久性評価、鋼・コンクリートの複合構造、維持管理、低環境負荷材料 |
橋梁工学・鋼構造学 | 教授 | 山口 隆司 | 鋼・合成橋梁の耐荷力・設計法、既設鋼橋の補修・補強法、耐震設計、維持管理システム、橋梁環境、座屈耐荷力・設計法、連結部の耐荷力・設計法 |
助教 | 林 厳 | 既設橋梁の補修・補強,連結部の耐荷力・設計法、橋梁ヘルスモニタリング、FRP部材の信頼性評価FRP構造物の力学的挙動 | |
地盤工学 | 准教授 | 山田 卓 | 地盤の液状化現象の調査・予測と対策、リサイクル材の地盤材料特性、土の破壊音の計測と地盤工学への利用、土の微小変形特性、地盤情報データベース |
助教 | 岡田 広久 |
圧密、豪雨時の斜面安定、遠心模型実験 |
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河海工学 | 教授 | 重松 孝昌 | 構造物と流体の相互作用、波力発電、沿岸災害影響評価、港湾海域の水環境構造の修復、内湾環境の将来像研究、気候変動影響評価と適応策、広域複合都市災害、水害予測技術 |
准教授 | 中條 壮大 | 気象・海象災害の調査・解析・予測、台風、高潮、高波、気候変動、数値流体解析、可視化流動計測、画像計測、砂浜モニタリング、防災教育 | |
空間情報学 | 教授 | 米澤 剛 | 地理情報システム(GIS)やリモートセンシングを用いた都市の空間分析や空間評価、都市の空間モデリングや空間情報処理システムの開発、持続的な都市発展を目的とした空間情報学の活用 |
准教授 | 杉本 賢二 |
地理情報システム(GIS)やリモートセンシングによる構造物の空間解析、都市構造物の時空間変動解析と物質ストック・フロー分析、夜間光と人間活動,数値標高モデル(DEM)を用いた人為的地形改変の把握 |
カリキュラム
都市の様々な課題に関心を持ち、多様な意見を取り入れながら自ら問題解決を提案できるように、学外での見学、学内での実験・演習、卒業研究などの科目を重視しています。また、少人数グループでの学生主体の活動を支援するために、実験・演習を各学年に配置。習得した専門基礎力を段階的に応用できるように、科目間につながりを持たせる工夫をしています。
1~2年次 | 総合教養科目、初年次教育科目、情報リテラシー科目、外国語科目、健康・スポーツ科学科目の履修により幅広い教養と外国語能力を身につけ、あわせて基幹教育科目・基礎教育科目(理数系分野)の履修により数学・自然科学分野の基礎力を身につけます。同時に、「都市学入門」「都市工学のための科学基礎」をはじめとした導入科目を初年次から配置。専門教育の下地を養うとともに専門教育へのモチベーションを高めます。 |
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2~3年次 | 「都市工学のための力学基礎」「都市環境学」「都市計画」などの専門教育科目の履修により、持続可能な都市に関わる基本的専門力ならびに専門知識に基づいた論理的思考力を身につけます。また、「都市学実験」「スマートシティ創生演習」などの実験・演習科目の履修により調査・実験を計画・遂行・分析する能力を身につけていきます。 |
4年次 | 卒業研究をはじめとして、総合的な専門教育科目「環境計画演習」「防災計画演習」などの演習科目を履修することにより、次代のプランナー・エンジニアにふさわしい提案能力、表現力、コミュニケーション能力、問題解決能力、自主的・継続学習能力を身につけます。 |
研究トピック
生態系をモデル化し豊かな海、きれいな海、親しめる海の実現をめざす。
環境水域工学研究グループ
都市沿岸域の生態系について、保全や活用の姿を描いていくことが私たちの研究です。めざすは、豊かな海、きれいな海、親しめる海。その実現には、生態系がもたらす恩恵とメカニズムを知り、予測・評価する必要があります。複雑な事象を理解する際、それを単純化し、本質的な概念や要素を見つける思考過程を「モデル化」といいます。環境問題に取組む際もその過程は重要です。生態系は物理・化学・生物や社会・経済までもが絡み合う複合システム。これらの相互作用を数理で表現し、俯瞰的に捉える試みが生態系のモデル化であり、私たちのテーマです。めざす姿を明確にすると、理想と現実のギャップが見える。それこそが課題です。課題の背景にあるメカニズムを探求し、解決方法の見つけ、予測・評価する研究を進めています。全ての要素を入力してモデルを動かすと、想定外の結果が出て新しい発見につながることも。それも研究の醍醐味です。モデルは、研究者間・産官学間のコミュニケーションプラットホームとして活用され、新しい課題や事実を見出してきました。学生たちとも議論を重ね、新しい問題を見つける楽しさ、次なるめざす姿を描く大切さ、を共有していきたいと思っています
沿岸生態系シミュレーションの結果
在学生の声
日々挑戦・発見の大学生活。
大阪市立大学 工学部 都市学科 3年生 浅浦 尚城 さん
大阪府・関西創価高校 出身
もともと都市の景観が好きで、地図に残る大きな建造物を作りたいという思いで都市学科に入学しました。物理や化学を基礎とする科目や、法律を学ぶ科目まで登場しますが、多様な学問分野が重層的に絡み合って、実際の人々の生活を支える基盤となっていることに魅力を感じます。座学以外にも、夏休みに「学外実習」で一般企業へ就業体験に行ったり、学校から提供される英語のオンライン留学に参加したりと、視野を広げ実力を磨いています。大学ではオーケストラサークルの打楽器パートにも所属しており、日々仲間と励まし合いながらより良い音楽を求めて活動中です。多忙ながらも貴重で楽しい大学生活を実感しています。
卒業生の声
海洋構造物の設計・製作・施工を通じて脱炭素社会や国土強靭化に貢献したい。
大阪市立大学 大学院 工学研究科 都市系専攻 前期博士課程 修了 田邊 礼佳 さん
大阪府・四天王寺高校 出身
勤務先 日鉄エンジニアリング株式会社
弊社は海洋開発に携わる国内有数の企業です。私は技術部に所属し、タイの洋上石油施設の施工検討を担当しています。大型クレーンを有する作業船を用いて、工場で製作したビル20階建てに相当する大型構造物を沖合に設置します。設置には、構造物の強度だけでなく製作のしやすさや設置手順をも考慮する必要があります。難しかったですが、様々な観点からものづくりを学べて自身の成長を感じました。今後取り組みたいのは、日本国内で期待される洋上風力発電の基礎部や防波堤等です。これらの設計・製作・施工を通じて、脱炭素社会や国土強靭化にも貢献していきたいです。都市学科にはアットホームな先生が多く、卒業後も連絡すると応援してくださっていることが伝わってきます。成長した姿を見ていただけるように、今後も沢山経験を積んで技術を磨いていきたいです。
主な就職先
国土交通省/大阪市/堺市/京都市/奈良県/鹿島建設/大成建設/竹中工務店/大林組/鴻池組/いであ/日水コン/ニュージェック/日本工営/南海電車/大阪メトロ/西日本旅客鉄道/近鉄GHD/関西エアポート/大阪ガス/関西電力/JFEエンジニアリング/タクマ/神鋼環境ソリューション/日立造船/ダイキン工業/岩谷産業/パスコ/IHIインフラシステム/積水ハウス ほか
教育目的
都市の機能と構造を理解するための基礎科学力と、これからの都市に求められる様々な要素を見極めるための多様な知識を有し、科学的根拠を基に都市が抱える課題を読み解くとともに、説得力のある解決策を提案し、それを実現するためのコミュニケーション能力と順応性を有するプランナーとエンジニアとなる人材を養成する。
学科ポリシー
アドミッション・ポリシー
社会経済情勢、環境問題、災害対策、国際化などにより都市のあるべき姿は常に変化してきた。都市固有の歴史と文化を継承・発展させつつ、環境への負荷を低減し、人間活動と自然環境が調和した、豊かでかつ災害などの外的インパクトにも強く柔軟に対応できる、安全・安心で機能的な都市、すなわち「持続可能都市」の実現が強く求められている。
都市学科では、この持続可能都市を探求し、またその構築および維持管理に係る技術について学び、それらの最先端課題について研究する。都市学科の教育研究対象は、人間社会の介在する公共空間であり、恵みと破壊をもたらす自然現象でもある。また、その課題は地域性とともに普遍性を有し、その現象は微生物スケールから地球規模のスケールにいたるまで大きな幅がある。
そのため、都市学科では工学部のアドミッション・ポリシーに加えて、次のような学生を求める。
- 都市の成り立ちや機能、現状の課題について日ごろから興味・関心があり、社会全体の幸福に貢献できる人。
- 数学や理科などの自然科学分野の基礎学力を有し、それらの工学的応用について関心がある人。
- 地理や歴史、公民などの社会の基礎学力を有し、文明の汎用性と文化の固有性の双方を尊重し、学ぶことができる人。
- 継続的に外国語を学ぶことができる人。また、入学後に日本語または英語による講義が受講可能であり、外国語資料の読解および英語での交流・発表に意欲のある人。
- 都市に関わる問題について、対立する意見を公正に評価し、複合的な問題について多面的にとらえ、科学的根拠に基づきながら自身の意見を述べることができる人。
ディプロマ・ポリシー
都市学科では、所定の単位を修得することにより以下の能力を身につけた学生に、学士(工学)の学位を授与する。
- 人文・社会科学分野の幅広い基礎学力を習得し、技術者の備えるべき社会に対する責任感と倫理観に基づいて行動できる。また、国際的コミュニケーションの基礎能力を活用できる。(幅広い教養と技術者倫理、外国語能力の習得)
- 持続可能都市の実現に向けた工学的・技術的な取り組みに不可欠な数学・自然科学分野の基礎学力を活用できる。(数学・自然科学分野の習得)
- 都市の計画とデザイン、環境の保全と再生、および都市基盤整備と防災に関わる基本的専門力を活用できる。(基本的専門力の習得)
- 持続可能都市を実現するための工学的専門知識を身につけ、論理的思考に基づいて応用できる。(専門知識に基づいた論理的思考力の習得)
- 都市の現状と課題を正しく評価するための調査や実験を計画・遂行し、得られた結果を専門的知識と結び付けて正確に分析することができる。(調査・実験を計画・遂行・分析する能力の習得)
- 地域や社会のニーズをくみ取り、習得した知識や技術を用いて、持続可能都市の実現に向けた具体的な提案をまとめることができる。(提案能力の習得)
- 都市に関わる諸問題の解決へ至る一連のプロセスと解決策の提案を論理的に記述できる。また、適切にこれらを口頭で他者に伝え、質疑応答ができる。(表現力とコミュニケーション能力の習得)
- 持続可能都市の実現に向けた課題を、自主的に認識・提起し、継続的な学習によって工学的に解決できる。(問題解決能力、自主的・継続学習能力の習得)
カリキュラム・ポリシー
都市学科では、都市固有の歴史と文化を継承・発展させつつ、環境への負荷を低減し、人間活動と自然環境が調和した、豊かでかつ災害などの外的インパクトにも強く柔軟に対応できる、安全・安心で機能的な都市、すなわち「持続可能な都市」の実現に資する人材を育成するために必要な科目を配置する。
1〜2年次には、総合教養科目、初年次教育科目、情報リテラシー科目、外国語科目、健康・スポーツ科学科目の履修により幅広い教養と技術者倫理、外国語能力を身につけ、あわせて基幹教育科目・基礎教育科目(理数系分野)の履修により数学・自然科学分野の基礎力を身につける。それとともに初年次から専門科目の基礎として、都市学入門や都市工学のための科学基礎を始めとする導入科目を配置し、専門教育の下地を養うとともに専門教育へのモチベーションを高める。
2~3年次には、都市計画1、都市環境学、構造力学 1 を始めとする専門教育科目(必修科目及び選択科目 A、選択科目 B)の履修により、「持続可能な都市」に関わる基本的専門力ならびに専門知識に基づいた論理的思考力を身につける。また、基礎教育科目(理数系分野)及び都市学実験や都市計画・デザイン演習,スマートシティ創生演習などの専門教育科目の実験・演習科目の履修により調査・実験を計画・遂行・分析する能力を身につける。
4年次には、卒業研究を始めとして、環境計画演習、防災計画演習などの総合的な専門教育科目の演習科目の履修により、提案能力や表現力、コミュニケーション能力、問題解決能力、自主的・継続学習能力を身につける。
都市における様々な課題に関心を持ち、多様な意見を取り入れながら自主的に問題解決案を提案できる人を育成するため、学外にて実施する見学や学内にて実施する実験、演習、卒業研究などの科目を重視する。少人数グループによる学生主体の活動を支援できるように、実験、演習を各学年に確保し、習得した専門基礎力を段階的に応用できるように、科目間につながりを持たせる。
各科目の学修成果は、定期試験、中間試験、レポート、発表等の平常点等で評価することとし、その評価方法の詳細については、授業内容の詳細とあわせてシラバスに記載する。