教員・在学生・卒業生の声

教員からのメッセージ
中條 壮大 准教授
研究分野について
 世界の都市の多くは水辺に位置しています。大気や水など自然界も都市を構成する重要な要素です。 その恵みを活かし、脅威について対策するための工学的な手法を考えています。研究対象は砂粒から地球規模の現象まで広がっています。
 主な専門は海岸工学と呼ばれる分野ですが、流体力学、気象学、河川工学、水文学なども関連分野です。 具体的には台風やそれによる強風、高潮、高波、降雨災害の研究や、気象津波、砂浜のモニタリング手法、構造物周りの波・流れの研究、 気候変動の影響評価を行っています。アプローチとしては、シミュレーションや画像解析などコンピュータを使った研究や、 現地調査、水槽実験も行います。
 メカニズムに関する研究が中心ですが、ニューラルネットワークを活用した事前予測手法の提案、低頻度大災害の発生頻度の評価、 予測の不確実性を評価した防災教材の研究、新しい流動計測法や粒度分布測定手法の開発もしています。
メッセージ
 「国家百年の計」とは人材育成の重要性を説いた故事に由来するそうです。 都市学科の対象となるまちづくりや都市や地球スケールの災害、環境の問題への対策を考える時には、 この「人を育てる」ということの重要性をひしひしと感じます。
 これから先もMicrosoftやAppleの創始者のように誰か一人優れた人がいて、 画期的な商品を生み出すことで世界中の人の生活を変えてしまうことはあるかもしれません。 もしくは画期的な医療技術や薬品が提案されて人類の寿命も延びるかもしれません。 ですが都市の問題は一人のスターの誕生によって解決することはないと思われます。
 台風も津波も太古の昔から続く自然現象で、何度も人類を脅かしてきました。 道路網や水道を整備して都市生活を大きく発展させたローマ帝国であっても、 都市インフラの維持管理には困難を極めていました。都市に人が集まることで伝染病や環境汚染、 住宅難、交通渋滞、犯罪は発生し、都市生活の問題を解決するための万能な合意形成方法は未だにありません。
 さらに今は年を追うごとに気候変動の影響が明らかとなりつつあり、 今後は何10年、何100年という長期的な時間スケールで、世界中が生活基盤である環境の変化と、 経験したことの無い災害に見舞われていくことになります。
 「誰か」が解決してくれるのを待つのではなく、「みんなで一緒に」解決策を考えて取り組める方法を考えなくてはいけません。 それが現代の標語となっているSDGsです。一人のスターではなく、たくさんの自立したリーダーを、それも長期的な視野をもって、 都市建設やその維持管理、防災や環境の技術と教育、コミュニティと合意の形成などの各分野で先導できる人材を、大阪から育てていきたいと考えています。 都市学科でともに学びたい、研究したいという方に会えることを楽しみにしています。
学生インタビュー
Kさん
(2021年度入学,大阪府門真市出身)
 生活と関わりの深いものづくりに興味があり、環境問題にも関心があったのが志望理由です。 都市学科はそうした広い分野のことを学べるところが向いていると思いました。 先生は質問に対してすぐに答えてくれるのはありがたいです。 1年次の都市学入門では研究の話や先輩の経験談など参考になることをたくさん聞けたのは良かったです。 大学に入ってからも、高校までの数学や物理、化学の知識はよく使うので、 都市学科を志望する方はきちんと理解しておいた方がいいと思います。 環境問題や高齢化社会など変化していく社会に対応した都市づくりのために、 ここで学んだことが活かされると思っています。
F君
(2021年度入学,京都府木津川市出身)
 都市学科は思っていたよりも教員との距離が近く、わからないことがあれば気軽に質問しやすいという印象です。 都市学入門では、自分で調べてグループディスカッションをしたり、大学の授業を実感できて楽しかったです。 数学は得意でしたが、大学で学ぶ数学は授業の中だけでは理解が追い付かない部分もあり、頑張って自習しています。 水泳部に所属しているので、泳ぐことでストレスを発散しています。 部活動は他学部や他大学ともつながる機会があって友人の幅を広げられることも魅力です。 まだ学び始めなので全体像はわかりませんが、都市学科では都市の構造や空間のデザインについて学びたいと思っています。 その他にも、都市学科で学ぶことは災害の多い日本で被害を減らすことに貢献できると感じています。
F君
(2020年度入学,大阪府大阪市出身)
 水質や防災の問題に興味があり、都市学科ではその両方を学べると知りました。 分野が広いので、得意な分野はもちろん、苦手だけど興味のある分野も学べる点や視野を広げてくれる点がいいと思います。 今学んでいる土質力学、構造力学、流体力学などでは、高校までの質点の力学から発展した連続体の力学で説明されるので面白いです。 都市学科の先生は素朴な質問でも、話を広げてたくさんの情報や考え方を教えてくれます。 まだ2年生ですが、学会や研究室のゼミの開催情報を教えてもらって聴講したりもしています。 内容はまだ十分理解できないところもありますが、進路選択や学びのモチベーションを高めるのにいいと思います。 今は災害の激甚化や持続可能性の模索など社会が転換期を迎えているように感じています。 未来の技術開発に貢献できる研究者になりたいと思っています。 入学時からコロナ禍で大学生活には悩みましたが、剣道部に所属して色々と制限のある中でも活動することができて、ストレス発散になっています。
Iさん
(2019年度入学,兵庫県尼崎市出身)
 大阪府北部地震の経験や西日本豪雨の報道を通じて、災害から人を守る技術を学びたいと思いました。 日本の技術を途上国に伝えることにも興味があります。中高で演劇部に所属していた経験は、今のディスカッションやプレゼンを通じた能動的な学びに活かされていると思います。 学年は50人程度なのですぐ仲良くなれます。自由時間には友だちとポケモンカードで遊ぶことはストレス解消になっています。 1年生から参加した「前庭デザインワーキング」では学科の先輩と交流できました。 先生方は遠慮なく質問するように声をかけてくれますし、コロナ禍で講義が遠隔になった時には、 Zoomを使って講義とは別に質問や雑談をする時間も作ってくれました。 各学年に相談委員の先生が付いてくれるので相談しやすくてありがたいです。 模型を作ったりまちづくりのコンセプトを考える「製図・設計演習」は新鮮で面白く、難しい「鋼構造設計論」ではたくさん質問して乗り越えたときには達成感がありました。 学科外でも、理系のための短期留学プログラムに参加したり、副専攻では色々な学部の人と地域の課題を実践的に学んだり、生協組織部に所属して大学生活を良くするイベントや会議をするなど自主的に色々楽しく学んでいます。 都市学科では自分が興味を持つ分野や進路がきっと見つかります。皆さんと大学でお会いできることを楽しみにしています。
Aくん
(2019年度入学,奈良県大和郡山市出身)
 都市の景観を眺めるのが好きで、皆で大きなものを作る仕事に興味があり、都市学科の分野の広さに魅力を感じました。 コロナ禍の講義では友だちと会う機会がなく、自分の理解度に不安を感じました。 そんな中、友だちとアプリを通じて勉強会の場を立ち上げた経験は貴重だったと思います。 都市学科の先生は優しく、質問にもしっかり答えて頂けますし、就職のサポートも手厚いと思います。 私は交響楽団のサークルで打楽器を担当しています。皆で一つの音楽を作り上げるのは楽しいです。 都市学科での学びは縁の下の力持ちといった感じで、見えないところで人々を豊かにしていると思います。 今は海外で英語を学ぶとともに、世界を舞台に活躍できる人、人々に幸せの渦を巻き起こしていけるような人になりたいと思っています。 学びでは目的意識が大事だと思います。大学入試は山場ですが、それをゴールとせず、入学後も学び続けられるように学ぶことを楽しむ気持ちを大切にして頑張ってください。
Nさん
(2018年度入学,大阪府大阪市出身)
 私は散歩が好きで、都市の街並みに興味がありました。 都市学科は力学や環境・エネルギー,都市計画など幅広い分野の座学とともに、グループワークや、学びをアウトプットする演習が豊富で、体系的に物事を捉える視点が養われます。 工学部の中でも女性比率が多いのも楽しく感じる理由かもしれません。授業では街歩きツアーをして都市の成り立ちから各時代の空間再編を学んだ経験が楽しかったです。 2年生の夏にはウィスコンシン大学の留学プログラムに参加して、ものづくりワークショップや交流をする中で気軽に話すことの楽しさを知りました。 苦手だった英語は帰国後も勉強することでTOEIC170点アップを達成しました。
 今は更新期にあるニュータウン内の都市公園における市民活動参画型運営手法の研究をしています。 市民活動に参加して参加者のお話を伺うためには行動力が必要なので大変ですが、とても楽しいです。 その中で「研究をしてくれてありがとう」とおっしゃっていただけることが大きなやりがいです。自分の好きを見つけられるのが都市学科です。 幅広く学ぶので課題の量には苦労すると思いますが、そのぶん自分の興味に確信を持てると思います。 私は課題とアカペラサークルの両立のために、スケジュール管理を徹底して、毎日全力で両方取り組めるように心がけました。ストレスが溜まったときには大好きな中之島公園まで散歩をして気分転換をしています。
Sくん
(2015年度入学,兵庫県宝塚市出身)
 百年ほど前に私の地元で、電鉄沿線の都市開発として確立された、日本型TODに興味がありました。 また、何かアイデアを形にすることや身近なテクノロジーが好きで、都市学科のシラバスを見た時にワクワクして進学を決めました。 都市学科は理工系に多く見られるような細分化された知識を得るのではなく、自然科学はもちろん、経済学や地理学、心理学など人文社会系も含め、多様な知見をうまく結びつけて活かすことのできる統合的な学びを楽しめる場所だと思います。 私は色々と熱中してしまう性格なので、アイセックをはじめ課外活動にもたくさんの時間を費やしてきましたが、振り返れば学業の空白期間は、むしろ技術者として自立するのだという意志を固めるのに必要な時間だったと思います。 講義に出なかった時期にも近代土木技術者の伝記を読んだり、土木遺産を訪ねるなど「初心を忘れず」に自分にとっての学びを継続し続けていました。 学びはインプットだけでなく、アウトプットもとても重要です。これまで4件ほど懸賞論文にも応募して、いずれも賞を戴きましたが、講評を頂くなど良い経験になりました。
 私は今、老朽化した照明柱を、速く安価で簡単に更新するための工法について研究しています。 街で研究対象にしている照明柱を見かけると、なぜか嬉しくなるものです。 実験の折には、研究室のメンバーが和気あいあいと集まって、お互いに研究を手伝い合います。 それにはさながら硬化コンクリートのような固い結束が感じられて楽しいです。 卒業後は、明治の琵琶湖疏水を実現させた田辺朔郎氏のように、経験に乏しい若いうちでも恐れずに進んで挑戦し、後世に残る土木構造物の設計や施工に携わっていきたいと思っています。 都市学科で扱うテーマはいずれも公共性の高いもので、専門的な立場からこれに向き合い、知見や議論をオープンにしていくことは、健全な民主主義社会を支えることにも繋がります。 私は都市学科で、大きな使命を担う「シビルエンジニア」として社会に貢献していくために必要なことを学び得ることができました。
卒業生インタビュー
田邊礼佳
(2017年卒、2019年修了、大阪府豊中市出身)
プラントエンジニアリング会社勤務
 海洋開発に携わる国内有数の企業に勤めています。私は技術部に所属し、タイの洋上石油施設の施工検討を担当しています。 大型クレーンを有する作業船を用いて、工場で製作したビル20階建てに相当する大型構造物を沖合に設置します。 設置には構造物の強度だけでなく製作のしやすさや設置手順をも考慮する必要があります。 難しかったですが、様々な観点からものづくりを学べて自身の成長を感じました。 今後取り組みたいのは、国内で期待される洋上風力発電の基礎部や防波堤等です。 これらの設計・製作・施工を通じて、脱炭素社会や国土強靭化にも貢献していきたいです。 都市学科にはアットホームな先生が多く、卒業後も連絡すると応援していただいていることが伝わってきます。 成長した姿を見ていただけるように、今後も沢山経験を積んで技術を磨いていきたいです。