サイト内検索
2025年2月21日
【テーマ】 キャンパス・ハラスメントをなくすために講 師 : 古久保 さくら 氏 (ハラスメント相談室 アドバイザー)司 会 : 西田 芳正(現代システム科学研究科 教授)日 時 : 2024年7月16日(火)9:00~10:30会 場 : Zoom(オンライン講演)報告者 : 古川 朋雄(現代システム科学研究科 教授)
2024年度の人権問題委員会前期委員研修は、本学ハラスメント相談室アドバイザーの古久保さくら先生を講師として、「キャンパス・ハラスメントをなくすために」というテーマでご講演いただいた。当日は現代システム科学研究科の西田芳正教授による司会のもとで活発な議論が行われ、今年度の同委員会委員およびハラスメント相談員にとって、種々のハラスメントに関する基礎知識を得る貴重な機会となった。この場をお借りして、古久保先生と西田教授にお礼申し上げる。 本講演では主な4類型のハラスメントについて、具体例や規制に関する法的根拠、一般的な処分や防止策が紹介された。そのうえで、大阪公立大学におけるハラスメント対応体制、実際にハラスメント相談を受けた場合の留意点が説明された。以下は本講演の要約である。
1. セクシュアル・ハラスメント セクシュアル・ハラスメント(以下、「セクハラ」という)については、男女雇用機会均等法11条が、女性に限らずすべての人を対象 として、セクハラに関する相談や対応のための措置を講じることを事業主に義務付ける。セクハラには、職場における労働者の意に反した性的な言動により、①当該労働者が解雇等の不利益を受ける対価型と、②就業環境の悪化により当該労働者の就業において看過できない支障を生じさせる環境型がある。
2. マタニティ・ハラスメント マタニティ・ハラスメント(以下、「マタハラという」は、女性の職場進出を背景として現れた社会問題である。2015年の厚生労働省による調査では、正社員女性の21.8%、派遣労働者女性の48.7%がマタハラ被害にあったと回答している。 男女雇用機会均等法9条は、女性労働者を対象に、事業主は妊娠や出産等を理由に解雇等の不利益な取り扱いをしてはならないと規定する。マタハラには、悪意による労働の強制や職場からの排除だけでなく、たとえば子育ては女性が行うものといった古い価値観のもとで、配慮のつもりで当該労働者を排除しようとする場合も該当する点には注意を要する。
3. パワー・ハラスメント パワー・ハラスメント(以下、「パワハラ」という)は、日本では労働施策総合推進法30条の2第1項が定義規定を置く。2019年にILOが採択したハラスメント禁止条約では、パワハラの定義や対策、違反者に対する制裁、対象とする被害者についてより幅広く規制するが、経済界への配慮からか、日本では批准への動きは鈍い。 厚生労働省の「職場におけるハラスメント関係指針」は、パワハラを、①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係の切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害に分類する。労働者の性的指向等を、了解を得ずに他の労働者に暴露することも⑥に含まれる。同指針は、職場におけるパワハラ対策を事業主に義務付けるとともに、就職活動やインターンシップを行う者に対しても、同様の方針の明確化や相談があった場合の適切な対応等を行うことが望ましいと規定する。
4. アカデミック・ハラスメント アカデミック・ハラスメントは、授業や研究室等における教員の優越的地位から行われるパワハラの亜種であり,みんなの前で叱責する、具体的改善点ではなく人格否定発言を行う、図書や研究機器類を使わせないなど、様々な行為が該当する。
5. ハラスメントに対する対応 ハラスメントは、被害者の人権侵害だけでなく 、職場環境の崩壊や職場に対する信用の失墜といった全体に対する悪影響ももたらす。 大学におけるハラスメントの処分に関しては、セクハラについては文科省が定義や罪刑の基準を明確化し、またパワハラについては、人事院が処分の基準を定める。これらの基準は国立大学以外の大学でも参考にされている。 また、ハラスメントについては未然の防止が重要である。防止策の策定にあたっては、トップによる強い意志の表明、職場内の実態調査やルールの明確化、継続的な研修が必要となる。 ハラスメント対応について、大阪公立大学では、ハラスメント相談員が相談を受け付け、相談員間で協議した後に、調整委員会や調査委員会に付託されるという手順が定められている。ハラスメント相談を受ける相談員は、早急なアドバイスは控えて、まず相手の主張を理解すること、 申立て内容を事実とした場合の処分を見立てること、相談者の希望を聞きながら迅速に対応することに留意する必要がある。
講演終了後には、参加者から、実際にハラスメント相談を受けた場合を想定して、どの段階で加害者側にヒアリングを行うべきか、相談者の希望をどこまで聞くべきかについて、質疑応答が行われた。
当サイトではサイトの利用状況を把握するためにGoogle Analyticsを利用しています。Google Analyticsは、クッキーを利用して利用者の情報を収集します。クッキーポリシーを確認