お知らせ
2024年2月21日
- 学生活動
- 研究
居住環境学科 川下璃子さんの卒業研究が学術誌Sustainabilityに掲載されました。
現在、多くの先進国が高齢化問題を抱えています。その社会問題に対して、住宅政策から解決する方策として、親子間居住距離に基づく「近居」が注目を集めています。そこで、本研究の目的は、日本の高齢者を対象に、メンタルヘルスと親子間居住距離の統計的関係性を明らかにすることです。本研究は、厚生労働省の許可を得て、国民生活基礎調査(2016年)の匿名加工データを利用しました(管理番号:40045020220011)。
本研究の結論は、親子間の居住距離が近い後期高齢者ほど、メンタルヘルスが悪いということです。特に、同居する後期高齢者のメンタルヘルスの平均値は、K6におけるカットオフ値を超えていることが分かりました。その一方で、同じ市町村内で親子が近居する後期高齢者は、前期高齢者と比較して、メンタルヘルスが変化しないということが分かりました。この結果は、後期高齢者のメンタルヘルスを維持するために、親子間の適切な距離感の重要性を示しています。後期高齢者の中には、近居が困難になったことで同居を始めるケースもありますが、本研究は、近くの距離に居住する親子であっても、ヘルパーなどの専門介護支援政策の必要性を示しています。
川下璃子さんの研究成果は、居住環境学分野のEvidence Based Policy-makingに向けた重要な研究成果として高い評価を受けて、2024年2月20日付で、国際学術誌Sustainability(IF=3.9)に、掲載されました。
本研究における親子間居住距離の分類
(HLT:同居、HLSN:同近隣環境での近居、HLSN:同市町村での近居、HLDC:同市町村以外での近居)
親子間居住距離とメンタルヘルスの関係性
掲載学術情報誌について
雑誌名:Sustainability, Vo. 16, Issue 5, No. 1715 (2024) ※ IF=3.9
論文名:Mental Health and Parent‒Child Residential Distance for Older People: Cross-Sectional Study Using a Comprehensive Survey of Living Conditions
著者:Riko Kawashita, Haruka Kato