増田 俊哉 教授
食材から 食物(たべもの)へ
その成分と機能の変化を 化学で解明
増田 俊哉教授
食栄養学科 教授
食品やその食材が
実際に食べるときにどうなっているかを研究
大学では、食品学と食品有機化学という講義を担当しています。この食品学の講義は農学部にもありますが、授業目的が少し違っています。農学部は生物資源の利用が重要なので、食品学も、新しい食材や食資源の発見に繋がるものになっています。一方で、生活科学部では人の食に必要な調理や加工に伴う食材成分の変化や機能の変化をふまえて、実際に口にする食べ物(食物:しょくもつと呼んでいます。)が何かに重点をおいています。
従って、私の研究室の研究も、食材が食物になるところまでを対象としています。例えば、飲用するコーヒーに、痛風を抑える効果があるとわかってきたのですが、その効果に関連するコーヒーの成分は、実は生のコーヒー豆には無く、焙煎加工をされることで初めて発生するようです。このように、食材が人の食物になるまでの成分の変化に着目し、化学(特に有機化学)の方法で、明らかにしていくことが私の研究です。
コーヒー豆焙煎図 詳細はこちら
薬と食べ物の違いは?
人の健康を維持するには、薬は重要ですね。また最近は、機能性食品といわれるように食品にも同じ役割が期待されています。では、この二つを分ける要素は何でしょうか。それは、人の食べ物として必要な「美味しさ」や「食べやすさ」にあると思われます。薬は、苦くても病気を治すために、無理しても飲むしかない場合が多いですが、食べ物となると、たとえ健康に良くても苦ければ誰も食べてくれないでしょう。生活科学部食栄養学科では、人の食べ物であることを前提に、食による健康増進が重要と考えて研究を展開しています。
研究室のメンバーと
生活科学部は様々な人が集まる学部
生活科学部には、様々なバックグラウンドを持つ先生が集まっていて、皆で人の生活に関わる科学を解明するという目標に向かって研究を行っています。私の場合、学生時代から現在の研究を行っていた訳ではなく、複雑な化学構造を持つ物質の合成方法の開発研究をしていました。生活科学部に来て、食品を対象に研究を開始したのですが、このときの研究で学んだ有機化合物の化学反応の知識が、今の研究である食材が食物になるまでの機能性成分の変化(化学反応です)の解析に役立っています。
身近なことに興味を持って
生活科学部は衣食住等、人の生活に関わる身近な現象に関して多方面から研究教育を行う学部です。そのため、皆さんにはいつもいろいろなことに興味を持っていて欲しいです。たとえば、好きな科目について更に興味を持って突き詰めるのも重要ですが、今は嫌いな科目でも、最初から嫌わずに向き合ってください。大学の授業は、高校までの授業と違うので、意外なきっかけで楽しいと思えることがあります。それをきっかけに、進む道が変わることもあります。
休日は史跡巡りへ
休日は家族で史跡巡りをしています。今は堺市に住んでいるので、古墳や弥生時代の遺跡が身近です。また、古寺が多くある奈良まで出かけることもよくあります。出身が愛知県なので、関西の古い歴史に興味が尽きません。大阪にいられるうちに、多くを見て回ろうと思います。
教員プロフィール
生活科学研究科 食栄養学 食品機能化学分野 教授 増田俊哉
農学博士。名古屋大学農学研究科(食品工業化学専攻)を修了し,1989年に本学に助手として赴任,その後,徳島大学を経て,2015年より現職。研究テーマは「ポリフェノールを中心とした食品有機化学研究」で,ポリフェノールの化学構造の変化と機能の変化を主に解析しています。特に,最近は焙煎という高温加工により発生するポリフェノール性物質の機能と化学構造の解明を進めています。