田中 弘美 准教授

平等で開けた関係性を築くために
必要な政策とは

人間福祉学科 田中 弘美 准教授

tanakah1

海外留学で得た国際的な視点

学部4回生のときに労働・福祉・ジェンダーについて学ぶため、育児休業や柔軟な働き方の制度が充実している北欧へ交換留学にいきました。留学先はスウェーデンのルンド大学。1666年に創立された歴史ある大学です。そこでは、同年代だけではなく、子育てしている人、起業している人などさまざまな学生と一緒に学びました。これこそが生涯教育であり、学ぶこと、働くこと、生きることが互いに地続きでつながっている社会を体感することができました。このような環境で、より国際的な視点から専門分野について学んだり、国際人権NGOに所属して他の国から来た留学生たちと一緒に色々な活動に取り組んだりして、視野が大きく広がりました。

大学卒業後はイギリスの大学院でジェンダーを専門に研究を進めました。世界的に有名な教授のもとで、世界中から集まった学生たちと一緒にジェンダー理論、歴史、政策などを研究し、勉強は大変でしたが、乗り越えて修士号を得た時には自信につながりました。イギリスでは人種差別も経験し、嫌な気持ちになったこともあります。でも今ふり返ると、マイノリティという社会的に弱い立場に自分自身が立たされることは、社会福祉を学んだり教えたりする上でとても大切であり、必要な経験だったと思います。

日本に戻って社会人を経験した後、博士課程に入りなおしました。そこでは、労働とケアを調和させる方策について国際比較しながら研究を進め、政策や環境が変化するために数多くある選択肢の中で、なぜその選択がされたのかという要因を解明するため、イギリスで官僚やNPO団体に対するインタビュー調査を行いました。

大学教員になってからは、日本のこれまでの社会政策を検証・評価し、より実効性のある政策提言につなげるための研究を行っています。次世代には、より平等で開けた関係性を築ける社会をつくってほしく、そのために最先端の知見や研究の面白さ、奥深さを伝えることが大事だと考えています。

田中先生からみた人間福祉学科の特徴

人間福祉学科の学生は、自分で考える力が強いと思います。授業の中でディスカッションをする際はいつもそれぞれが自分の意見を出しながらも、全員が積極的に参加し、とても白熱したディスカッションになります。また、このような様子を見ていると、仲間と協力し合って主体的に学びを深めていく力もあると感じます。これは、少人数でアットホームな環境で、人や社会について広い視野で学べる人間福祉学科の強みだと思います。

学際的な視点から福祉を考え、実践する

身近にある地域や社会の問題の根源には、労働のあり方や、家族に大きな負担が課せられていること、根強いジェンダー不平等などがあると考えています。一見すると別々に存在するような問題でも、実はつながっています。すべての人が幸せに暮らせる社会の実現をめざす人間福祉という学問では、「福祉」という視点を超えて、労働やジェンダー、政策といった社会的に重要な研究を幅広く学ぶ、まさに「生活科学」の視点が不可欠です。そのような研究や活動を続けることで、多くの人が自分らしさを発揮して、やりたいことを自由にできる社会を目指せるのではと考えます。
tanakah2

教員プロフィール

生活科学研究科 総合福祉・臨床心理学 准教授 田中_1233hhi

田中 弘美

社会福祉学博士。同志社大学大学院社会学研究科(社会福祉学専攻)を修了し、2017年に同学に特任助教として赴任、その後、武庫川女子大学を経て、2023年より現職。研究テーマは「稼得とケアの調和モデル」で、ジェンダーにかかわりなく働いて稼ぐことと他者をケアすることを無理なく両立できる社会モデルの解明に取り組んでいます。特に、最近は政策の実効性を高めるためのエビデンスの検証と評価に関する国際比較研究を進めています。

研究者詳細