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2023年2月24日

  • 研究

食道がん患者の術前筋肉量と入院期間、術後合併症の関連性を検証した内容がNutrition in Clinical Practiceに掲載されました。

近年、がん患者の手術前の筋肉量が、手術後の生命予後に影響することが報告されており、術前の筋肉量を維持することの重要性が報告されています。一方で、食道がん患者の手術前の筋肉量と入院期間や手術後の合併症発生との関連性については、報告数が限られていました。そのため、今回我々は食道がん患者117名を対象とした調査において、手術前の筋肉量と➀入院期間、➁手術後の合併症発生の関連性を検証しました。①の入院期間は117名の第一四分位である21日より短いことを早期退院として評価し、➁の手術後の合併症発生は、合併症発生の有無で評価しました。また、筋肉量と➀、➁の関連性は、ロジスティック回帰分析において、isotemporal substitution modelという方法を用いて検証しました。この方法により、統計学的推計として、体脂肪量1kgを筋肉量1kgに置き換えた場合の結果との関連性を検証することが可能となります。

その結果、➀の入院期間については、手術前の体脂肪1kgを筋肉量1kgに置き換えた場合、早期退院のオッズが1.28倍でした。また、➁の合併症発生については、手術前の体脂肪1kgを筋肉量1kgに置き換えた場合、合併症発生のオッズは0.81倍となりました。

今回の調査結果から、術前の体脂肪を1kg減らすような介入を行い、その上で筋肉量を1kg増やすような介入を行うことで術後合併症の発生を減らし、早期退院できる可能性が高まることが考えられ、食道がん患者の術前からの栄養管理の重要性を支持する結果が得られたものと考えられます。

今回の調査における体組成の置き換えは、あくまでも統計学的な推計であることから、実際に手術待機期間中の食道がん患者に対して栄養学的介入を行い、体組成の変化が術後合併症の発生や入院期間にもたらす影響を検証する必要があると考えられます。一方で、1kgの体組成の変化が合併症や入院期間に影響を与える可能性があることから、患者や医療従事者にとっては目標を立てやすい結果が得られたものと考えられます。

【著者】
Genya Okada, Yoshinari Matsumoto,  Daiki Habu, Yasunori Matsuda, Shigeru Lee, Harushi Osugi
【論文タイトル】

Effects ofbody composition on early postoperativedischarge and postoperative complications inpatients with esophageal cancer

【掲載雑誌】

Nutrition in Clinical Practice

【論文へのリンク】 

https://doi.org/10.1002/ncp.10968