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2023年3月30日

  • 研究

新型コロナウイルス感染症流行下における関節リウマチ患者の生活習慣、体組成、筋力の変化について検証した論文がOsteoporosis and Sarcopeniaに掲載されました。

新型コロナウイルス感染症が流行し、4年近くが経過しました。日本では、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症分類が5類感染症へ変わることもあり、社会情勢も変わりつつあります。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた2019年には、不要不急の外出を控えるよう政府からの要請があり、外出を自粛する人が増えました。日本以外でもロックダウンなどによる行動制限が行われ、新型コロナウイルス感染症流行前後で人々の生活様式は大きく変化しました。外出自粛などの行動制限によって、ストレスが増えた、運動量が減った、食習慣が健康管理上好ましくない変化を示した、などの報告が世界各国から行われ、これらの影響は様々な病気の治療をしている患者にも影響を及ぼしていると考えられます。
今回我々は、関節リウマチ患者70名の1年毎の追跡調査データを基に、日本において新型コロナウイルス感染症が流行する前の1年と流行後1年の体組成、握力、身体活動の変化を調査しました。体組成のうち、筋肉量は平均で0.7kg減少しており、代わりに体脂肪量が0.7kg増加していました。また、握力も1kg低下し、これらの変化は統計学的に有意なものでした。また、患者の主観的な評価による身体活動量は、新型コロナウイルス感染症流行前後の1年間で44%減少し、運動量については20%減少していました。また、運動量の低下の程度は、筋肉量の低下と有意に関わる因子でした。
これらの結果から、新型コロナウイルス感染症流行による外出自粛が、関節リウマチ患者の身体活動量低下と体組成の変化に影響を及ぼした可能性が考えられます。しかしながら、今回の調査は1施設で1つの患者グループを追跡した調査結果であるため、今回得られた結果が新型コロナウイルス感染症が流行することによって起きたものなのか、あるいは新型コロナウイルス感染症が流行しない場合でも自然に変化していた可能性があるものなのかを結論づけることはできません。今後、過去のデータを基に、新型コロナウイルス感染症が流行していなかった時期の1年間の変化と新型コロナウイルス感染症が流行してからの1年間の変化を多施設で調査する必要があると思われます。また、様々な活動の制限が解除され始めた最近の情勢を鑑み、活動制限の解除が関節リウマチ患者の体組成や生活様式にどのように影響するかを、追跡調査で明らかにすることも診療上重要であると考えられます。

【著者】
Masahiro Tada, Yutaro Yamada, Koji Mandai, Yoshinari Matsumoto, Noriaki Hidaka
【論文タイトル】

Lifestyle and body composition changes in patients with rheumatoid arthritis during the COVID-19 pandemic: A retrospective, observational study

【掲載雑誌】

Osteoporosis and Sarcopenia

【論文へのリンク】 

https://doi.org/10.1016/j.afos.2023.03.003