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2023年5月2日
- 研究
高齢者施設入居者における誤嚥性肺炎発症と食事摂取時の観察項目の関連性についての論文がGeriatrics Gerontology Internationalに掲載されました。
日本において、肺炎は死亡原因の上位を占めています。肺炎の中で、唾液や食べ物の一部が様々な原因で肺に入り、最近が増殖して炎症を起こすことで起きる肺炎を誤嚥性肺炎と言います。誤嚥性肺炎は、近年の高齢化に伴い発症者の数が増えてきており、誤嚥性肺炎を防ぐための取り組みが重要であると考えられます。
日本では、高齢者の誤嚥性肺炎に関わりうる食事時のポイントを早期発見し、食事サポートを行うための評価ツールとして、2015年に厚生労働省が24のチェック項目から成る食事時の観察チェックリスト(MOCL)を開発しました。MOCLが開発された後、各高齢者施設等でMOCLが使用されていますが、MOCLの観察項目のうち、どの内容が誤嚥性肺炎発症と関連するかは検証されていませんでした。このことから、4施設計199名の食事サポートが必要な高齢者を対象に、施設入居時のMOCLの観察項目の該当状況と施設入居時から6か月以内に発症した誤嚥性肺炎の関連性を検証しました。
その結果、座った状態を保つことが難しいなど、6つの観察項目が誤嚥性肺炎発症に統計学的有意に関わる因子として抽出されました。このことは、これら6つの観察項目を中心に対象者の食事時の状況を観察することで、対象者の誤嚥性肺炎のリスクを評価しうることを示していると考えられます。今回、199名のうち24名が誤嚥性肺炎を発症していましたが、妥当性・再現性がある解析を行うためには、より多くの高齢者を対象とした調査研究が必要であると考えられます。また、今回は過去のデータを基に解析を行った結果であるため、必要な情報や調査する項目を予め決めた上で研究を行う『前向きコホート研究』を行い、結果を検証する必要があると考えられます。
Validation of the applicability of the mealtime observation checklist in predicting the risk of aspiration pneumonia in older adults receiving oral intake support: A retrospective cohort study of four long-term care facilities
【掲載雑誌】
Geriatrics Gerontology International
【論文へのリンク】