言語文化学専攻

言語文化学専攻について

本専攻は、人間の営みの中核をなす言語にかかわる文化現象の全領域、すなわち、言語、文学、文化およびその関連領域を、言語を通じて根源的に解明することをめざします。従来の国家単位・言語単位の専門分野区分に基づくほか、現代の地域横断的な文化状況に対応する新しい専門領域として、言語応用学分野を増強し、これによって、都市化、情報化、国際化の時代にふさわしい教育研究を実現します。さらに西洋古典学、言語学などの分野を、専攻の共通の基礎的知識および周辺領域への広い視野を養うものとして、ここに含めることによって、各専門分野の相互関連性を重視した総合的な言語文化学の確立を目標とします。また、鋭い言語感覚と言語運用能力を備えて、国際社会において活躍しうる人材を養成します。専攻内には、学問分野と研究方法に応じて、国語国文学、中国語中国文学、英語英米文学、ドイツ語圏言語文化学、フランス語圏言語文化学、言語応用学の各専門分野を設けます。

専修紹介

 

国語国文学専修について

国語国文学専修について

本専修は、日本語と日本文学について、知識と視野を広め、研究を深める場を提供しています。教員は、現在、山本真由子(古代文学)、小林直樹(中世文学)、久堀裕朗(近世文学)、奥野久美子(近代文学)、丹羽哲也(日本語学)の5人によって構成されています。

言葉も文学も、時代に応じて変化して来ました。特にめまぐるしく移り変わる現代にあって、古典の世界は遠ざかっていっているように見えます。しかし一方で、言語の根幹的な部分は安定しており、人間の感情やものの見方の根本は古代からそれほど変わらない、むしろ一致している面も多分にあります。言語・文学の時代的な展開、地域やジャンルの位相の違いを視野に入れて対象の特徴をつかみ取り、かつそこに通底する本質的なものをも酌み取る、そういう姿勢を本専修は重視しています。

物事の本質的な面をつかむためには、極めて具体的なことに取り組むことが重要です。文学で言えば作品の本文・作者・時代背景などについて、語学で言えば個々の言語現象について、丹念に着実に調査・考察を重ねていく必要があります。このような実証的な研究姿勢を持つことがまず求められます。その上で、対象に迫るための豊かな発想と深い構想力を持つことが必要で、この両者のバランスが取れた研究ができるようになることを、本専修は目標としています。

博士前期課程における研究指導、博士後期課程における論文指導の時間においては、各自の研究テーマとなる作品・言語事象について、本文の精密な読解・注釈、用例一つ一つの検討といった具体的な考察とともに、そのような個々の考察が、研究対象の全体の中でどのような意味を持つかということを発表することが求められ、それに基づいて教員と受講生が議論します。その積み重ねが、修士論文、博士論文となって結実していきます。前期課程においては、国語学および国文学の各時代の授業科目も設けられています。ここにおいても基本姿勢は同じで、発表と議論(その集約としてのレポート)が重視されます。もちろん授業科目ですから、自分の専門以外の分野を学ぶ場でもあります。専門分野の研究を深めるためには、隣接分野についての知識を広め深めていくことが必要なことは言うまでもなく、また、分野によって発想の仕方や焦点の絞り方が異なるところもあって、よい刺激になります。

授業以外では、大阪公立大学国語国文学会で研究発表を行う機会があり、また、年2回の院生発表会で、お互いの研究成果を発表し、議論しあっています。

大学院生の進路は、研究者として大学に就職する、高校や中学校の教員になるという道が一般的です。学部学生で高校・中学の教員を志望する人は、学部を卒業してそのまま教員になることももちろんありますが、博士前期課程を修了して専修免許を取得した上で教員になるという人も少なくありません。

国語国文学専修の刊行物

学術雑誌『文学史研究』(1955年創刊)を発行して、研究成果を公表しています。

国語国文学専修の関連リンク

 

中国語中国文学専修について

中国語中国文学専修について

中国文学、言語、文化を体系的に研究し、幅広い中国学の素養を身につけた専門研究者や高度専門職業人の養成をめざしています。教員スタッフの研究分野は、映画を中心とする現代中国文化研究、唐代文学の研究、語法・語彙や字書史・音韻史の研究であり、それぞれが独自の視点から研究を行っています。博士前期課程の段階では、中国というフィールドの奥深さと、多様性にまず触れたうえで、研究の土台を築くことが求められます。博士後期課程では、更に一歩進んで自分自身の問題意識をより鮮明にして、本格的な研究活動をスタートさせます。研究活動の過程では、先行論文の批判的検討や、自分の問題意識にねざした研究発表と討議、テキストの精密・正確な読解を旨とする読書会など、様々な研究活動に主体的、積極的に取り組むなかで、研究方法を学びとることが何よりも求められています。
本専修では中国人留学生が多く学んでおり、中国国内での4年間の大学生活では気づきえなかった新たなテーマに本大学院で果敢に挑み、大きな成果をあげています。また、社会人院生も在籍しています。長年中国と関わる仕事に携わった経験を活かしつつ、指導教員のアドバイスを受けて、論文執筆に取り組む彼らの姿を見ることで、若い学生や院生が大いに刺激を受けています。国籍・世代を越えて、開かれた研究の場であり続けることが、本専修の特徴の一つと言えましょう。

中国語中国文学専修の刊行物

『中國學志』を1986年より、年1回刊行しています。2002年には蘆北賞を受賞し、学術誌として高い評価を得ています。また刊行後には院生が主体となって合評会を開催しています。

学会活動

中国学会を毎年7月、12月に開催しています。主に院生やOB・OGの研究発表の機会として機能していますが、他大学研究者による講演もあり、高度な専門的知識が提供される場でもあります。

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英語英米文学専修について

英語英米文学専修について

英語英米文学専修は、1953年に修士課程(博士前期課程)、そして1955年に博士課程(博士後期課程)が設置され、これまでに多くの優れた研究者を送り出し、学界に少なからぬ貢献をしてきました。現在、英文学研究ではシェイクスピア演劇のアダプテーションやヴィクトリア朝文学の社会性が、米文学研究では小説技法が、また英米文化学では英米文化のイデオロギー性が、そして英語学研究では英語という言語を対象とした分析が、それぞれテーマとして取り上げられています。
所蔵研究資料としては、上記のテーマに関連したもののみならず、英文学ではロマン派や近現代詩、米文学では黒人文学の研究に関する文献も充実しています。また大衆雑誌の原本や復刻版、欧米の学術雑誌類も揃っています。近年、大学院生が取り組んでいるテーマとしては、無声映画におけるシェイクスピア受容、ディケンズ作品におけるジェントルマン像の揺らぎ、シャーロット・ブロンテ作品における秩序と激情との相克、アフリカ系アメリカ文学におけるエスニシティの表象、受動態・使役・時制の通時的変化、英文法における他動性、名詞における性・数の概念とその変化などが挙げられます。

修了生の多くは、大学の教員として教育・研究に従事したり、高等学校の英語教員として活躍していますが、一般企業においても多彩な活躍を見せています。

大学院進学をご検討の方は、お気軽に教員スタッフにメールでお問い合わせください。
メールアドレスはこちらのページからご確認ください。

英語英米文学専修の刊行物

『QUERIES』

「大阪公立大学英文学会」(前身は「大阪市立大学英文学会」)の機関誌として毎年『QUERIES』という学術誌が発刊されており、多様な研究の成果が公表されています。

学会活動

「大阪市立大学英文学会」を前身とする「大阪公立大学英文学会」は、現・退職教員と大学院修了生・現役生、および学部卒業生から成り、毎年英米文学、英米文化、英語学、英語教育の分野に関する研究発表やシンポジウムや講演が活発に行なわれています。また、この学会は同窓会の役割も果たしており、同期生のみならず、教員と卒業生、先輩と後輩との交流も盛んです。

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ドイツ語圏言語文化学専修について

ドイツ語圏言語文化学専修について

本専修の研究対象は、ドイツ語およびドイツ語圏の文学・文化です。ドイツ語圏にはドイツのほかオーストリア、スイスなどが含まれます。ドイツはたとえばEUの牽引役として政治や経済と関連づけて、オーストリアは古い伝統と文化、スイスは美しい自然と関連づけてイメージされることが多いと思いますが、大学院での勉学に関心を持たれているみなさんは、それらのイメージが一面的なものであることをすでにご存じでしょう。ドイツ語圏の国々は、同じドイツ語を母語としながら、地域性を大事にしています。言語的には方言を根強く残し、文化的にも独自性を保ちながら、相互に刺激し合って、独特の精神文化を形成してきました。ドイツ語圏の一にして多、多にして一という精神文化のあり方は、ただ異文化というだけでなく、人文学の観点からグローバル化の進んだ世界の将来像を考えていく上で実に興味深い研究対象であるといえます。
研究には、語学力はさることながら、複数の地域、時代、分野・領域への目配りが必要不可欠です。文学、文化、言語、思想のいずれのテーマを選んでも、それだけを切り離して考えることはできないからです。本専修に所属する教員は、現代ドイツ語圏文学・文化、近代ドイツ語圏文化・文学、現代ドイツ語学を専門としています。それぞれ異なる専門をもつ教員と一緒に研究を続けるうちに、みなさんは、自らの研究に広がりと厚みが生まれていくのを実感することでしょう。博士前期課程(修士課程)では、「ドイツ語圏文学研究」「ドイツ語圏文学研究演習」「ドイツ語圏文化学」「ドイツ語圏文化学研究演習」「ドイツ語学研究」「ドイツ語学研究演習」などの科目が用意されています。いずれも少人数制ですから、授業ではテキストを丹念に読み、質疑応答をおこなう時間が十分にあります。並行して論文指導が行われます。指導教員の指導を受けつつ、中間発表の場で進捗状況を報告し、そこで複数の教員からアドバイスを受けることができます。博士後期課程では、博士前期課程と同様に指導教員による論文指導が行われ、中間発表の場で複数の教員からアドバイスを受けることができますが、自分の研究テーマによりいっそう主体的に取り組む姿勢が求められます。ある程度研究の方向性が定まったところで、ドイツ語圏の大学への長期留学を考えてもよいでしょう。
また、研究の深まりに応じて、学術雑誌への投稿、学会発表の機会も得られます。

学会活動

「大阪市立大学ドイツ文学会」では現教員、元教員、院生、修了生が、ドイツ語圏学に関する研究発表会を年に2回開き、活発な活動を展開してきました。大阪公立大学になってもこの伝統は継承されます。毎年発行される学会機関紙『Seminarium』(セミナリウム)は、多様な研究成果の発表の場です。

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フランス語圏言語文化学専修について

フランス語圏言語文化学専修について

本専修は、世界の歴史において大きな影響力をもち、今なお重要な位置にいるフランスを中心としつつ、ベルギー、スイス、ルクセンブルクなどの欧州や、ケベックやハイチなど南北米大陸、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、セネガル、コートディヴォワールなどアフリカ、タヒチ、オセアニアにもひろがる世界のフランス語圏の言語、文学、文化、歴史、社会などについて教育・研究・社会貢献をおこなっています。かつての名称「フランス語フランス文学専攻」は、他の大学でも多くなされている学問領域を表すものでしたが、フランス語圏学を掲げている大学はきわめて少数です。このことは、もちろん伝統的なフランス文学研究を捨て去るものではなく、その上に広がる世界のフランス語圏を射程においていることを示しています。
本専修の教員スタッフは、20 世紀文学、言語学・言語教育学、文化学研究を専門としていますが、それぞれ興味、関心の範囲はひろく、これまで指導した学生の論文については、文学研究はもちろんのこと、外国語教育-学習、メディアの言説分析、宗教文化の歴史的展開、挿絵論、ダンス論、建築、ミュージアム、馬事文化、ラップなどのテーマについて指導をおこなってきています。 なお、本専修では長年にわたって国際交流協定により、フランスの大学(リヨン第3大学、CYセルジー・パリ大学、トゥール大学)との関係を発展させており、学生の交換留学や大学院生の交流授業も行われています。

学会活動

本専修では、大阪市立大学の時代から続く長い伝統のもと、現役の院生と教員、大学院のOB/OG、退職教員からなる学会を組織し、研究発表会・シンポジウムなどの活動を活発に展開しています。また『Lutèce』(リュテス)という機関誌を発行し、本専修の特色を反映する多様な研究成果の発表・発信の場としています。

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言語応用学専修について

言語応用学専修について

言語応用学専修には4人の教員が属しています。4人がカバーする言語学の分野は多岐にわたり、言語構造論、言語意味理論、言語運用論、コーパス言語学、言語獲得論、第二言語習得論、言語教育論、英語語彙史研究、言語比較論、心理言語学、英語教育学など、言語学の多くの領域を網羅しています。
本専修の大きな特徴のひとつとして、対象言語が広範囲にわたっていることが挙げられます。所属教員の専攻言語の中心は英語および日本語にありますが、研究の対象は、中国語、満洲語・女真語などのアルタイ諸語やタイ語・ベトナム語などの東南アジア言語にまで及んでいます。また、個々の言語の枠を超えて、新たな視点から対象言語の特徴を捉え直していくことも本専修の特徴と言えます。実際、本専修には、日本語・中国語・英語の文法の比較研究を行った院生がこれまでに何名もいました。様々な言語を複眼的に考察することは、言語に関する知見を広げます。複数の言語の比較研究は、本専修の言語研究における主要なテーマのひとつとなっています。

授業科目としては、各教員による言語応用学研究および言語応用学研究演習が提供されています。言語応用学研究では、各教員が興味を持っているトピックを中心に講義がなされています。開講授業の一部を簡単に見てみましょう。ある言語応用学研究では、グローバル化における新たな言語教育を探究する姿勢を身につけることを目的として、言語教育・言語習得に関わる入門書を英語で読み、英語で発表し、英語で議論するという授業を展開しています。専門領域に対する理解を深めるだけでなく、問いを立てて解決する姿勢および情報や考えを英語で伝えるという汎用的技能・能力も同時に鍛えていきます。また、言語応用学研究演習では、各受講生の研究が発展することを目的とし、様々な文献を扱いながら、研究方法の技術的な面と理論面に習熟することが図られています。本専修の院生は、これらの講義・演習を通じて、修士論文の作成に求められる知識・技能を身につけることができます。さらに、言語応用学総合研究と言語応用学研究指導の科目を受講することにより、それぞれの専門領域の見解を深め、修士論文の作成へ至るようになっています。博士後期課程の言語応用学論文指導については、専門分野が近い教員の指導が中心となります。博士論文がある程度進んだ段階から、領域の異なる多くの教員が参加する場で、定期的に発表・討論します。全ての教員が論文作成に向けた研究指導に参加し、論文のクオリティ向上に積極的に関与するということも本専修の特徴といえるでしょう。

博士前期課程(修士論文)に関してですが、1回生の終わりまでには修士論文の全体的な構想が決まっていることが望まれます。その実現のために、1回生向けに、修論準備のための講義・演習が前期・後期で4コマずつ開講されています。本コーススタッフによって行われる授業ですが、修論作成に向けて有益な情報が得られますので、1回生のときに必ず受講するようにしてください。また、月に一度、博士前期課程を履修する院生と全教員が参加する言語応用学総合研究が開催されます。そこで、全ての院生が修論の進行状況を発表し、研究内容に関する意見を活発に交換したうえで、より良い修論の作成を志向した有意義な検討を行います。そうして完成された修論に関する口頭試問は、2回生の2月初旬を目処に開催されます。

博士後期課程(博士論文)に関して、そのテーマについては、言語に関する研究であることを前提に自由に設定することができます。実際の例として、修了生の博士論文題目には、「幼児における格助詞ガの獲得過程」「事態認識の英語表現 : コトの生起に対する話者の心的態度」などがありました。留学生らは、複数言語の比較分析に興味・関心を持っていることも少なくなく、例えば「中日英の研究」や「A Comparative Study of Noticing between L1 and L2 Writing Processes of EFL Learners from Japan and China」などを博論の題目としていました。

院生研究テーマ

郭 丹磊(M2) 体の状態を現す擬態語の日中対照研究
樫本 洋子(D3) 小学校英語教育、読み書き指導、教員養成。
石田 雅子(D3) 子どもの第二言語習得、英語教育
大前 佳苗(D3) 英語のリズム、英語熟達度とワーキングメモリの関係
Diodato Francesco(D3) イタリア語教育学
斉藤 渡(M1) 手話がもたらす「気づき」

 

言語応用学専修の刊行物

言語情報学研究

2005年3月に第1号を出版以来、毎年3月に刊行。院生、教員、および修了生が主な執筆者である。専修の一つの活動報告書を兼ね、新しい世代が飛躍するための踏み台としての役割も担っている。

学会活動

本専修には教員・学生が参加する大阪市立大学言語情報学会(大阪市立大学当時の名称である)が組織されています。毎年秋に大会が開催され、卒業生・修了生も参加して貴重な研究発表や情報交換の場となっています。

言語応用学専修の関連リンク