嶋野恵里佳さん

愛知県弥富市 歴史民俗資料館学芸員


2015年 文学研究科日本史学専攻前期博士課程入学                                  2016年 現職
2017年 前期博士課程卒業                                             2018年 三重大学地域イノベーション学研究科後期博士課程入学、在学中

【論文】
「藤堂高虎の築城技術―その変化と『人使い』について」(卒業論文)

「近世初期の公儀普請における技術と労働―徳川大坂城を素材として」(修士論文)

「近世初期普請技術の継承性 -大坂城再築を中心に-」(『織豊期研究』21号、2019年)

「海西郡・海東郡からみた長島一揆 -伝承あるいは口碑に注目して-」(『ふびと』73号、2022年)

【担当企画展】
「昔のくらし展」(2016年度~2019年度)

「伊勢湾台風60年企画展 ーいま、伝えたい記憶-」(2019年)

「愛知県政150周年記念イベント未来へはばたく文鳥展 ー弥富文鳥の150年と現在(いま)-」(2022年、予定) など

 私は学部から市大出身で、博物館学芸員を目指して前期博士課程に進みました。学部時代から大名による築城の方法や労働力の編成について研究しています。
 縁あって修士1年目で現職につくことができ、その後も中世史ゼミに時々通って修士号を取りました。現在は愛知県弥富市の資料館で郷土史に関わることを、歴史から生き物まで幅広く担当しています。また、2018年から近隣の大学の後期博士課程に入学し、学部生時代以来の研究を続けています。
 経歴から分かるように、私はゼミ出身者の中では少し異質な存在だと思います。しかし、中世史ゼミで学んだことは自分にとっては大切な礎石のようなものです。

 中世史ゼミでは、まず基礎から歴史を研究するための姿勢をしっかり学ぶことができました。史料や論文の読み方について、丁寧に、徹底的に指導していただきました。史料に書いてあることだけでなくその背景をくまなく考察して多彩な情報を発見するという作業はとても難しいものでしたが、歴史を研究していくときの重要な視点を頭に叩き込むことができました。
 次に、ゼミの遠足や合宿(フィールドワーク)では、自分が担当した場所の歴史を徹底的に調べ上げ、移動手段の手配など全て自分で行い、当日は先導役になるという体験をしました。大変でしたが、一つのことを自分で最後まで責任をもつという姿勢は、現在の仕事でも大いに役立っています。また、史料を熟読することだけでなく、複数の視点を持って他の分野の成果を取り入れて物事の全体像が浮かぶようにすることの重要性を学びました。そのような姿勢は、研究職だけでなくどのような仕事でも役に立つと思います。
 そして、博識で優しい先輩やOBOGの皆さんと共に学べる機会が数多くありました。日本全国で大学院生が減少している現在、このような環境の大学院は多くはありません。先生に聞くのが恥ずかしい基礎知識を聞いたり就職について相談したり、何でもお世話になりました。先輩方との交流から、研究には様々な人とのつながりが大切で、自ら進んで輪に加わるべきだということを学びました。もともと消極的な性格でしたが、今では地域の内外の方と積極的に関わることで、展示や研究のポイントなど大切なことをたくさん教えていただいています。
 中世史ゼミ出身のOBOGには研究職の方がたくさんおられますが、その理由は、地域で活躍できる研究者を送り出すという、ゼミとしての姿勢が地域に高く評価されていることが大きいと思います。研究職を目指している方は、ぜひゼミについて一度先生や先輩に聞いてみてください。きっと優しく詳しく教えてくださいます。
中世史ゼミで皆で汗をかきながら奮闘したことは、かけがえのない思い出です。ここで学んだことを忘れずに、これからも地域の役に立っていけるよう頑張ります。