新谷和之さん

近畿大学文芸学部文化・歴史学科 講師niki-min07
2003年 文学部入学
2007年 文学研究科前期博士課程入学
2011年 文学研究科後期博士課程入学
2013年 和歌山市立博物館学芸員
2014年 和歌山市和歌山城整備企画課学芸員
2016年 博士(文学)学位取得
学位論文名「戦国期六角氏権力の構造と展開」
2018年 現職
【単著】
『戦国期六角氏権力と地域社会』(思文閣出版、2018年)
【編著】
『近江六角氏』(戎光祥出版、2015年)
【論文】
「成立期和歌山城の政治的意義―豊臣政権の「統一」事業との関わりから―」(『研究紀要』28、和歌山市立博物館、2013年)
「越前国一乗谷周辺での山林用益―中世城郭廃絶後の土地利用をめぐって―」(『民俗文化』31、近畿大学民俗学研究所、2019年)など

 私は学部入学以来、約10年にわたり大阪市立大学で学びました。卒業論文以来、近江国の六角氏の権力構造について研究しています。その一方で、地元の和歌山を中心に城郭の調査・研究にも携わってきました。最近では畿内・近国、北陸、中部地域までフィールドを広げ、武家の権力構造と城郭のあり方がどのように関わるのか追究しています。
 仁木宏先生のゼミには、学部2年生の後半から顔を出させていただきました。ゼミに入ってまず驚いたのは、議論にとても時間をかけることです。報告の構成に沿って質疑応答が活発に行われ、参加者全員で理解を深めていきます。発表者はもちろん、質問する側も内容を正確に理解した上で建設的な発言をしようと心がけるので、いい意味で緊張感が保たれます。研究会の司会は学生が交替でつとめ、議論が円滑に行われるよう気を配ります。これだけ丁寧に議論を行うゼミは、珍しいのではないでしょうか。ここでの経験は、自身の研究の質を高めるだけでなく、そのまま学会等の運営にも活かされました。
 仁木ゼミでは、遠足や旅行などが定期的に催されました。城歩きが好きな私にとって、こうした学外での実習は純粋に楽しく、刺激に富んだものでした。また、事前の下調べを通じて、地図や図面の扱い方を実践的に学びました。フィールドワークや科研の研究会などで地元の研究者と接し、文化財行政の最前線を目の当たりにしたことが、学芸員を志すきっかけとなりました。
 私は和歌山市で5年間、学芸員をつとめました。主な仕事は和歌山城の史跡整備で、大学での研究テーマからは大きく外れていました。しかし、歴史を実際の空間のなかで位置づけていくという史跡整備の発想は、仁木ゼミのフィールドワークと通じるところがあると思います。また、近世城郭の整備では様々な専門分野の知見が求められますが、学際的な研究交流の大切さは、仁木先生が主催する共同研究を通じて学びました。

 現在、私は近畿大学で日本中・近世史を教えています。毎年10数名の学生が私のもとで卒論を書きます。ゼミは学年別に開き、90分の枠で完結させなければならず、大阪市立大学との違いに戸惑いを感じました。そのなかで、授業の枠を越えた交流の機会をもちたいと思い、史料の読み会や遠足、旅行などを定期的に開催しています。niki-min07-2
 思い返せば私は、仁木ゼミやその周辺の人たちの背中を見て育ってきました。学生時代には、論文や研究発表に向き合う先輩方を手本として研究し、学芸員になってからは、かつてお世話になった地域の研究者の姿を思い返しながら業務に励みました。常にロールモデルが周りにいたからこそ、研究を続けることができたのだと思います。私にとって仁木ゼミは、研究者としての基礎を培った実践と交流の場でした。