徳満悠さん

niki-min09

福井県立若狭歴史博物館 学芸員
2008年 文学部 入学
2012年 文学研究科前期博士課程 入学
2014年 文学研究科後期博士課程 入学
2017年 福井県教育庁埋蔵文化財調査センター 勤務
2018年~ 現職


【論文】
「中世都市木津(山城国)の研究 : 15世紀を中心に 」(研究ノート『都市文化研究』15、2013)
「十五・六世紀における山城国宇治の都市構造とその変容 」(研究ノート『年報中世史研究』44、2019)

 私は2008年に学部に入学し、翌年から日本史コースに入りました。仁木ゼミの行事に参加し始めたのはさらに1年経った2010年ごろからだったと思います。3回生ですから、特別早くから中世史の世界に入ったわけではありません。
 卒論・修論では南山城地域の都市や交通について研究しました。現在は南山城だけでなく福井県、特に若狭地域の都市や交通についても勉強しています。
 仁木ゼミで学んだこと、強く印象に残ったことはたくさんあり書き切れません。そこで「外」をキーワードに、いくつか紹介してみたいと思います。

 まず一つ目の「外」は学外との繋がりです。仁木ゼミでは学外の研究会に参加したり、報告したりするよう勧められます。そこでは同じ歳の研究者や、歳は違っても同じ分野の研究者と知り合い、議論をしたり情報交換をします。
こうした学外との繋がりは自分の研究を磨くだけでなく、さまざまな情報を得ることができる貴重なものとなります。どこで繋がりができるかわからないもので、職場の上司が実は学生時代に名刺交換をした人だったということもありました。
もちろん「外」に出る前に、学内研究会で徹底的に鍛えられることが前提です。学内での環境がいかに恵まれたものであるかは、諸先輩方の文章を読んでいただければわかると思います。

 二つ目の「外」は文字通りの外、すなわちフィールドです。このページにもあるように、仁木ゼミでは合宿・遠足として、年に何度も「外」に出ます。遠足では畿内を中心とした地域、合宿では全国の都市や山城などをひたすら歩き回ります。都市や山城というと「史跡巡検」のようなものを思い浮かべるかもしれませんが、時には(制度的には)史跡ですらない場所に行くこともあります。
研究をしているとどうしても「内」にこもりがちです。ですが現地を訪れることによって気付くこと、理解が深まることが数多くあります。それによって「内」での研究がより深まることもあるのです。
 また、行く先ではすべて、基本的には学生や院生が現地を案内します。現地の研究者に案内してもらうこともありますが、そので場合も下調べは担当者が行うため、必ず行く先について「研究」することが求められます。中心となるのは中世ですが、その前後、特に近世についてはほぼ調べることになります。これもある意味で「外」に触れる機会といえるでしょう。

 いま学芸員として働いていて、特に役立っているのが二つ目の「外」です。博物館では、何かを「説明する」という仕事から逃れることはできません。しかも紙面ではなく、展示を前にしたり、時には現地で説明することが求められます。こうしたとき、遠足や合宿での経験が生きているなと感じることが非常に多くあります。
 また地方の博物館では、歴史分野はすべて一人で担当するということも少なくありません。現に私も、最近は近世や近現代のことが仕事の中心になっています。ここでも、さまざまな時代に触れる、有り体に言うと「なんでもやってみる」という姿勢が役に立っていると感じます。
やや現場での感想じみた紹介になってしまいましたが、先輩方が書いているとおり、研究についてこの上なく恵まれた環境であるのは間違いありません。ぜひ大阪公立大学中世史研究室で勉強し、さまざまな場所で活躍する人になってほしいと思います。