研究室について

代表メッセージ

大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学(通称:医学部人工知能学)代表の植田大樹です。臨床医としては画像診断を専門にしており、研究者としてはAIを専門としています。

私たちの研究室は2024年に新設された常設の基礎研究室として歩み始めたばかりですが、すでに医療AI分野において世界トップレベルの研究成果を多数発表し、医療機器認証の取得など実臨床への橋渡しも積極的に行っております。

「世界の健康を実装する」という理念のもと、人工知能技術を医療に応用する研究において世界最高峰の研究室を目指しています。私たちの研究成果はデジタルヘルス分野の最高峰であるThe Lancet Digital Healthや医用画像分野で世界的に権威のあるRadiologyなどの一流国際誌に掲載されています。

強調したいのは、単なる基礎研究に留まらず、実臨床への導入にも注力している点です。私たちが共同開発したMRAからの脳動脈瘤補助診断プログラムは、深層学習を用いた医療機器として日本で初めてPMDA承認(30100BZX00142000)を取得し、すでに臨床現場で活用されています。

医療AIの研究開発においては、高い診断精度や効率性の追求だけでなく、公平性や倫理的配慮、さらには地球環境との調和(Planetary Health)も重視しています。また、医学・工学・データサイエンスなど多分野の知見を融合させた学際的アプローチで、これまで明らかでなかった可能性の探求や医療従事者にも困難だった課題に挑戦しています。

医学部内にAI講座を常設する強みを活かし、次世代の医療AI研究者の育成にも力を入れています。国内外の研究機関や企業との連携も積極的に推進し、研究成果の迅速な社会実装を目指しています。

まだ新しい研究室ではありますが、私たちは既に確かな実績を積み上げており、今後も革新的な医療AIの開発を通じて世界の健康に貢献してまいります。皆様のご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

理念

当研究室は「世界の健康を実装する」というコンセプトのもと、人工知能(AI)技術を駆使した革新的な医療イノベーションを目指します。画像・テキスト・音声をはじめとする多様な医療データを統合的に解析し、患者さんへの最適な医療を届けると同時に、地球環境との調和も図る研究を推進します。

ビジョン

未知の領域への挑戦

従来医療従事者がしていたタスクのAIによる支援や自動化にとどまらず、胸部レントゲン写真から心肺機能推定といった医療従事者には不可能と思われる領域をAIを用いることで解明していきます。

  • 革新的診断アプローチの開発
    • 医療従事者の能力を超えた診断・予測モデルの構築に挑戦し、これまで見出せなかった生体情報や疾患パターンの発見を目指します。
    • 画像のみならず、マルチモーダルデータの統合解析により、従来の医学的知見を拡張する新たな視点を提供します。
  • 学術的成果の発信と国際連携
    • RadiologyやThe Lancet Digital Healthをはじめとする国際誌への発表実績を基盤として、多領域かつ多施設共同研究を拡大します。
    • 国内外の研究機関との連携を強化し、集合知を活かした斬新なアプローチで医療の未来を切り拓きます。

臨床現場への展開

AI技術の研究開発に留まらず、医療機器として実際の診療現場で活用されるプロダクトを生み出し、患者さんと医療従事者に貢献します。PMDA承認を得た脳動脈瘤補助診断プログラムのように、深層学習ベースのソリューションを積極的に臨床導入していきます。

  • 医療機器承認・認証の取得
    • 深層学習を用いた画像診断支援ツールなど、臨床利用を想定したプロダクトの研究開発を推進し、規制当局の承認・認証を視野に入れます。
    • PMDA承認を取得した実績を活かし、プロトコル策定・データ品質管理・安全性評価などの手順を体系化・標準化します。
  • リアルワールドデータの活用
    • 実臨床データの収集・解析を通じ、汎用性の高いアルゴリズムの構築を目指します。MRAやCT、MRIなどの医用画像はもちろん、カルテ情報や音声データまで幅広く活用し、疾患の早期診断・予後予測・治療方針の決定を支援するAIモデルを開発します。
    • データのプライバシー・セキュリティ保護を徹底することで、安心して利用できる研究環境を整備します。

公平性・倫理の確立

AIを医療現場に導入するにあたり、アルゴリズムの公平性、バイアスの制御、インクルーシブな運用を重視し、医療の質を損なわない倫理的な活用方策を確立します。

  • バイアス評価と公平性の担保
    • 性別・年齢・人種などの多様な要因による学習データや推論結果への影響を体系的に評価し、公平性を損なうリスクを低減します。
    • 分類精度や再現性だけでなく、公正な評価指標(Fairness Metrics)も導入し、学会・社会へ透明性をもって情報共有を行います。
  • 倫理委員会との協調と倫理的課題の解決
    • 倫理指針や法規制を遵守するのはもちろん、医療AIにおける患者の権利や情報の取り扱いなど、事前に想定されるリスクを把握・評価し必要な対策を講じます。
    • 国際的な議論やガイドライン形成にも積極的に参加し、倫理的責任を全うするリーダーシップを発揮します。

Planetary Healthの発展

人口増加や地球温暖化などの地球規模課題に対し、医療と地球環境を両立させる研究に取り組みます。AI技術の省エネルギー化や持続可能な研究開発体制の構築を通じ、環境負荷を最小限に抑えながらヘルスケアの質を高めます。

  • 環境負荷低減の取り組み
    • AI開発のための計算リソースはエネルギー消費が大きくなる傾向にあるため、効率のよい学習アルゴリズムの開発やクラウドのグリーンエネルギー利用などを検討し、CO₂排出量の削減に取り組みます。
    • 医療廃棄物の抑制や再生可能エネルギーの活用など、医療現場での環境対応に資する技術開発を視野に入れます。
  • グローバルヘルスと地域医療の両立
    • 高所得国のみならず、低中所得国での利用も念頭に置いたスケーラブルなAIモデルを開発します。遠隔医療やテレラディオロジーを通じて、医療資源が限られた地域の診療をサポートし、健康格差の是正に寄与します。
    • 地球規模での気候変動や感染症リスクなどの変化を的確に捉え、先見性のあるヘルスケア戦略を研究します。

教育・人材育成

  • 学際的な人材の育成
    • 医学部内においてAI講座を常設している特徴を活かし、医療従事者だけでなく、工学・理学・データサイエンス分野を背景に持つ人材が相互に学び合う環境を整えます。
    • 若手研究者・大学院生には、最先端の医療AI技術に関する知識だけでなく、倫理・法規制・社会実装に関する総合的な教育プログラムを提供します。
  • 国際交流とリーダーシップ
    • 海外の著名研究機関とのコラボレーションを推進し、国際共同研究の機会を拡大します。
    • 国内外の学会活動を通じて、研究成果を発表し、AI×医療の分野におけるリーダーシップを強化します。

共同研究・産官学連携

  • 産業界との連携強化
    • 医療機器メーカーやIT企業との産学連携を強固にし、基礎研究から実用化までをシームレスにつなぐ体制を構築します。
    • ベンチャー企業とのスピンオフや共同開発も視野に入れ、研究成果を社会実装へと迅速に展開します。
  • 行政・規制当局との連携
    • PMDAやFDAなどの規制当局とも連携し、医療機器承認プロセスをスムーズに進められるよう、デザイン思考とエビデンスベースを両立させた開発を行います。
    • ガイドラインの策定や標準化作業に貢献し、AI医療機器の普及を推進します。

研究成果の社会還元

  • オープンサイエンスとデータ共有
    • 得られた研究知見は論文出版やカンファレンス発表に積極的に還元し、特許化を踏まえながらも可能な限りオープンに情報を発信します。
    • プライバシー保護・セキュリティ対策を徹底しつつ、大規模な医療データベースやオープンアクセスリポジトリの整備にも取り組みます。
  • 教育プログラムや市民講座
    • 一般市民や患者さん向けの講座・イベントを実施し、医療AIに対する理解やリテラシー向上に寄与します。
    • 院内だけでなく地域社会に対しても、AIがもたらす医療の変革をわかりやすく伝え、安心して受け入れられる環境を醸成します。

今後の展望

  • 本研究室は、既に世界トップクラスの学術誌(The Lancet Digital Health、Radiology など)で実績を積み重ねております。今後は、画像診断だけでなく病理診断・生体信号解析など幅広い領域への応用を拡大し、個別化医療の実現に寄与します。
  • 国際的な公平性・倫理を担保しつつ、Planetary Healthの概念に則ったサステナブルな医療AIを提案するリーディング研究室として、世界の研究コミュニティおよび医療界にインパクトを与えていきます。