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2025年1月21日
MRIからメチオニンPET画像を生成するAIモデルの開発と検証
造影MRI画像からメチオニンPET画像を生成するAIモデルを開発し、内部検証で実際のPET画像との強い相関(TBRmax:0.68、TBRmean:0.76)を示すとともに、外部検証でもグリオーマの悪性度分類(AUC:0.81)や予後予測において良好な性能を実証した研究である。
https://doi.org/10.1148/radiol.223016
著者談
本研究は、国際的な多施設データセットを活用することで、AIモデルの汎用性を示すことができた。研究デザインを考える段階で、画像変換AIの定量評価という課題に直面したが、グリオーマの悪性度予測や予後予測という臨床的に意味のある指標を用いることで、この問題に対応することができた。核医学分野でのAI応用は未だ発展途上の領域であり、我々のチームはこの分野に新しい可能性を示すことができたと考えている。研究の透明性を確保するため、多くの実験データをsupplemental materialsに含めることにした。これらのデータは、今後の研究者にとっても有用な参考資料になるのではないかと期待している。嬉しいことに、筆頭著者である田北大昂が本研究により神経放射線学会で加藤賞を受賞することができた。この受賞は、チーム全体の努力が実を結んだ証であり、今後の研究の励みになると考えている。本研究を通じて、画像診断AIの新しい可能性を示すことができたのではないかと考えている。
論文概要
本研究では、造影MRI画像からメチオニンPET画像を生成する画期的なAIモデルの開発と検証を行った。内部検証セットにおいて、AIが生成した合成PET画像は実際のPET画像と強い相関を示し、TBRmaxでは0.68、TBRmeanでは0.76という相関係数を得ることができた。さらに外部検証セットを用いた評価では、グリオーマの悪性度分類においてAUC 0.81という良好な結果を達成した。生存分析においても、合成PET画像のTBRmaxを用いた層別化により、有意な予後予測が可能であることを示すことができた。これらの結果は、我々が開発したAIモデルが、実際のPET検査と同等の臨床的有用性を持つ可能性を示唆している。本研究は、高額な設備や放射線被ばくを必要とするPET検査の代替手段として、AIを用いた画像生成技術が有望であることを示した点で意義があると考えている。
論文詳細
本研究では、AIモデルの開発と検証のために、362症例の機関内データセットと344症例の外部データセットを用いた。データの質と量を確保するため、厳密な選択基準を設け、画像の品質管理を徹底的に行った。AIモデルの開発では、pix2pixモデルをベースとしながらも、3次元データ処理と効率的なサンプリング手法という2つの工夫を加えた。これにより、脳の3次元的な構造を考慮しつつ、正常組織と病変部の特徴を効率的に学習できるモデルを構築することができた。
評価指標の中でも、病変体積の相関係数は0.92と高い値を示した。これは、AIモデルが病変の空間的な広がりを正確に捉えることができていることを示している。予後予測においても、TBRmax 3.8を閾値として高リスク群と低リスク群に分けたところ、2年生存率がそれぞれ27%と71%と明確な差を示すことができた。
我々は、造影MRI所見とメチオニン集積には生物学的な関連性があるのではないかと考えている。具体的には、腫瘍細胞の増殖や血管新生が、造影効果とメチオニン集積の両方に影響を与えている可能性がある。このような生物学的な背景が、AIモデルの性能を支える基盤となっているのではないかと推測している。今後は、この仮説を検証するための基礎研究も進めていきたいと考えている。