記事
2018年10月23日
Deep Learningを用いたMRAによる脳動脈瘤自動検出の研究
本研究では、複数施設から収集したMRAをDeep Learningで解析し、脳動脈瘤の検出感度と臨床的有用性を検証しました。
論文
Deep Learning for MR Angiography: Automated Detection of Cerebral Aneurysms
Radiology
https://doi.org/10.1148/radiol.2018180901
著者談
これは私たちにとって初めての博士論文であり、当時、日本で最先端の医用画像解析技術を持っていたLPixel社との共同研究によって大きな後押しを得ることができました。深層学習が医療分野に取り入れられ始めた頃に声をかけていただき、脳動脈瘤という病理を対象にアルゴリズムを構築できたことは非常に意義深かったと思っています。さらに、このモデルは日本で初となるプログラム医療機器としての承認を得るに至り、RSNAでも「The Best of Radiology」に選ばれました。こうした評価を受けられたのは多くの方々の協力と支えがあったからこそで、特にLPixel社には感謝しています。
論文概要
研究の目的は、頭部MRA(とくにTOF法)を用いて脳動脈瘤を見落とさないよう補助するアルゴリズムを開発することでした。そこで私たちは、異なる4つの医療機関で収集された画像をトレーニング用と検証用に分け、画像サイズや撮影条件が異なる環境下でも安定した解析性能を示すことを目指しました。深層学習のモデルにはResNet-18を用い、患者さん一人ひとりのMRA画像から脳動脈瘤の候補点を抽出し、その候補が真の動脈瘤かを高い感度で判別するよう工夫しました。元々は「見逃し防止」を念頭に設計したため、可能な限り感度を高める方針をとりました。
論文詳細
私たちは合計で千件以上のMRA撮影データを収集し、そのうちトレーニングデータとして683例を用いてアルゴリズムを構築しました。完成したモデルを異なる機関の内部データセットと外部データセットで検証したところ、それぞれ91%と93%の感度で脳動脈瘤を検出できました。サイズが3mm未満の小さな動脈瘤も平均して約89%の割合で見つけることができました。また、従来の読影結果に補助としてこのモデルを加えると、内部データセットでは4.8%、外部データセットでは13%だけ検出率が上乗せされました。さらに、今まであまり注目されなかった椎骨動脈や脳底動脈といった比較的発生率の低い部位の瘤でも、新たに見つかったものが複数存在しました。モデルが異なる撮像条件やデバイスに対応できるよう配慮した点が奏功したと考えています。この研究成果を通じて、読影の効率化と見落としの軽減につなげられる可能性が示せたのではないかと感じています。今後は適用範囲を広げ、より多様な条件での検証を行い、実臨床での精度向上を図っていきたいと考えています。