抗菌薬によって起こる副作用~カンジダ血症
Candidaは、Candida属という特定の真菌の総称です。CDIと同様、常在細菌叢の破綻によって起こる感染症ですが、特殊な感染症として分けています。ある意味、薬剤耐性菌とも呼べますが、そもそも細菌ではないので、本当の意味の薬剤耐性菌とは異なります。
今回のゲームでは、MEPMやTAZ/PIPCなどの広域抗菌薬を使用すると、Candida(カンジダ)血症が起こりやすい設定にしました。また、好中球減少時に起こりやすいことから、白血球数が少ない場合には、最初からCandida(カンジダ)血症のリスクを高く設定しています。
カンジダ症の主な原因真菌
- 比較的多い菌種
- Candida albicans:カンジダ血症の40~50%を占めます。仮性菌糸を作る酵母様真菌です。例外はあるものの、比較的、抗真菌薬には感受性があります。
- C. glabrata:non-albicansの中では、1~2番目に多い菌種です。仮性菌糸を作りません。嫌気培養のみで培養陽性になることがあります。C. albicansに比べ、アゾール系薬にやや耐性傾向を示します。キャンディン系薬に対する耐性も増加傾向にあります。
- C. parapsilosis:C. glabrataと同程度の分離頻度です。バイオフィルムを形成しやすいという特徴があります。
- C. tropicalis:
- C. krusei:フルコナゾールに自然耐性を示します(アゾール系薬全般に対する耐性ではない)。
- C. guilliermondii。
- まれな菌種
- C. dublinensis:C. albicansと誤同定されている場合があります。分類学上もC. albicansと比較的近縁で、顕微鏡での見た目もC. albicansに類似します。C. albicansに比べやや耐性傾向が強いという特徴があります。
- C. lusitaniae:アムホテリシンB耐性が多くみられます。
- C. auris:2009年に報告された比較的新しい菌種で、日本では外耳道から分離されました。海外で分離される株は、多剤耐性傾向にあります。I~Vのcladeに分類され、日本や韓国で分離される株のほとんどはclade IIに相当します。IやVに比べ、感受性が残っており、侵襲性カンジダ症を起こしにくい大人しいタイプです。
- その他:
菌種 | アゾール系薬 | キャンディン系薬 | ポリエン系薬 | バイオフィルム |
---|---|---|---|---|
C. albicans | ○ | ○ | ○ | 比較的形成しやすい |
C. glabrata | △~× | ○ | ○ | |
C. parapsilosis | △~× | ○ | ○ | 比較的形成しやすい |
バイオフィルム
バイオフィルム(biofilm)とは、平たく説明すると、単細胞生物である細菌や真菌が、あたかも多細胞生物のように細胞の集団を形成することを指します。対義語は、プランクトニック(planktonic)で、遊離菌とも訳されます。一般に、抗菌薬や抗真菌薬の感受性は、planktonicな状態で測定しますが、biofilmではplanktonicな状態よりも耐性傾向を示します。単なるinoculation effect(接種菌量効果)ではなく、biofilm状態の細胞は増殖の相が異なっていたり、耐性遺伝子を発現していたりすることがわかっています。また、細胞集団の周囲を、細胞外基質(extracellular matrix)と呼ばれる成分が覆い、薬の浸透を阻害している可能性も示されています。biofilmの外側の細胞と内側の細胞では、増殖の相や薬への暴露の度合いが異なっていることも、biofilmでの耐性に関与していると考えられています。
参考文献
- 日本医真菌学会 侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドライン2013http://www.jsmm.org/pulic_comment2-1.pdf
- Kajihara T et al. Distribution, trends, and antifungal susceptibility of Candida species causing candidemia in Japan, 2010-2019: A retrospective observational study based on national surveillance data. Med Mycol. 2022 Sep 29;60(9):myac071.リンク