抗菌薬によって起こる副作用
Clostridioides difficile感染症(CDI)

 常在細菌叢の破綻によって起こる感染症ですが、特殊な感染症ですので分けて説明します。薬剤耐性菌感染症の一種でもありますが、薬剤耐性菌としてもやや特殊です。C. difficileも、全ての人が持っているわけではありませんが、常在細菌の一つです。通常は、他の常在細菌に囲まれて、悪さをせず、大人しくしています。ところが、抗菌薬によって常在細菌が死滅すると、元来、抗菌薬が効きにくい本菌が増え始め、CD毒素という毒素を産生します。CD毒素は、A、Bの2種類があり、ともに粘膜を傷つけ、下痢を引き起こします。放置すると致命的となります。原則として、抗菌薬の中止で様子を見ますが、重症の場合や抗菌薬中止後も下痢が修まらない場合には、C. difficileに有効な抗菌薬を使って治療します。
 今回のゲームでは、MEPMやTAZ/PIPCなどの広域抗菌薬を使用すると、CDIが起こりやすい設定にしました。
参考資料:日本のClostridioides difficile感染症(IASR Vol. 41 p35-36: 2020年3月号)

CDIの診断

 抗菌薬投与中の下痢の場合に考慮しますが、ブリストル便スケールの5以上がその後の検査の対象となります。検査方法は以下の通りです。

  • CD毒素:トキシンAとトキシンBをイムノクロマト法で検出します。便から直接検出する場合と培養後の菌を検体として毒素産生を見る場合があります。
  • GDH:便を用いた迅速診断法の一つです。グルタミン酸脱水素酵素をイムノクロマト法で検出します。
  • 便培養
  • NAAT(nucleic acid amplification test):PCRなどの遺伝子検出法です。

ブリストル便スケールとは?
 便の性状(柔らかさ)を7段階で評価した方法で、4が正常、3以下は数字が少なくなるほど硬く、5以上は数字が大きくなるほど柔らかいことを意味します。5はやや軟らかい便、6は泥状便、7は水様便です。CDIにおいて硬い方は意義が薄いので割愛します。

CDIの治療

 まず、原因となっている抗菌薬を中止することが原則となります。しかしながら、抗菌薬が中止できない場合や、中止後も改善しない場合には、積極的な治療が必要になります。C. difficileに有効な抗菌薬は以下の通りです。

  • バンコマイシン内服
    バンコマイシン散内服 2000mg分4
  • メトロニダゾール内服または注射
    フラジール®内服 1500mg分3 10日間
    アネメトロ® 500mg 8時間おき
  • フィダキソマイシン内服
    ダフクリア錠 内服 400mg分2 10日間