ついに、MRSAが登場

 図11 ついにMRSAが登場

 今度は、mecAという耐性遺伝子を手に入れて、新たな進化を遂げました。これが、MRSAです。mecAは、分解酵素ではなく、ペニシリン低親和性PBPであるPBP2’(=PBP2a)をコードする遺伝子で、先述のペニシリン耐性機構であるペニシリナーゼとは全く異なる機序による耐性遺伝子です(図11)。MRSAは、mecAを含む複数の耐性遺伝子をセットで獲得します。この遺伝子セット(遺伝子領域)を、Staphylococcal cassette chromosome(SCC)と呼び、メチシリン耐性遺伝子を含む領域は、SCCmecと呼ばれます。SCCmecは、MRSAの型別にも応用されるほど重要なキーワードです。
 MRSAは急激に増加し、日本では最も頻度の高い耐性菌となっています。前述のごとく、庶民系の黄色ブドウ球菌は、元々、体の表面や環境中にいるありふれた細菌です。施設にもよりますが、日本では、ほぼ100%の医療機関でMRSAが分離され、黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合も40%程度と非常に高い水準となっています。