ACTIVITY REPORT

2023年4月20日

仕事も遊びも全力で!!(木下正彦)

 20233月にこの原稿を書いているが、年が明けてからの3か月はなかなか目まぐるしい日々であった。大学病院に勤務する医師は「臨床・研究・教育」3本柱の両立が求められるが、加えてプライベートも充実させたいお年頃であり、自分なりにかなり詰め込んだなと感じる3か月を、良い機会なので振り返ってみる。

 年明けから、というか患者さんが病棟に入院している以上、臨床は医師人生の中で切っても切り離せないものである。働き方改革の一貫で以前より格段に休日は増えたと思うが、年末年始にも大きな手術はあり、(自分のQOLのためにも)安全で合併症のない手術を心がけて年明けを迎えた。これに加えて1月には国内の学会発表や研究会発表があり、これらをこなしながらも2月に控える自分なりの大イベントに向けた準備を進めていた。さらに2月中旬以降、2つの国際学会が連続して重なったのである。まずは台湾、その後マイアミである。コロナの影響もあり国際学会は久しぶりで楽しみでもあったが、2連続となると準備は少し大変だった。発表が決まってから時間はあったのでゆっくり準備を進めつつ、まず台湾の学会に参加した。

 先輩と2人、関空から台北にとびたった。こちらの発表はポスターセッションであり、比較的気楽に参加することができる。到着したのは夜で、とりあえず食事を摂れる店を探して突撃した。鍋料理であったが、出てきたものは真っ赤な出汁、もう紅であった。とはいえ空腹であったため一気に食べ、口はしびれ汗は流れ、ホテルに帰ってもしばらく眠れなかった。翌日学会に参加し、英語のセッションを聞きながら後のマイアミ学会の予行もかねて耳を鳴らしておいた。アジア系の学会であり、比較的英語も基本に忠実で聞き取りやすく、よしよしと胸を張れた。その後街をうろうろし、夜の屋台では顔より大きな唐揚げを食べるなど、短期の滞在ではあったがおっさん2人で勉強もしつつ楽しく過ごすことができた。ちなみに実姉より、「海外に行くならエルメスとシャネルに行ってこの鞄ないか見てきて」と命令され、空き時間にブランド店に見に行った。我ながらお金を持っていそうな風貌ではないので、何しに来たんだ?冷やかしか?という視線を感じながらブランド店をうろうろして出ていく(お目当てのものはなし)という謎のイベントを経験しつつ、日本に帰ってきた。

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 帰国後1日空けて、今度はマイアミへの渡航である。事件が起きた。シカゴでの乗り継ぎが必要であったが、乗り継ぎ時間が割とギリギリだったにも関わらず、強風で出発が1時間以上遅れたのだ。厳しいかな、、、と思いつつ到着後はダッシュで入国審査を受け(小汚いアジア人が一人で来ていることで黒人のおばちゃん審査官に質問責めをくらった)、荷物をとり、一縷の望みにかけて再チェックインに向かった。しかし荷物のバーコードをピッと読み込んだ瞬間・・・「No!!」と誰でもわかる英語で乗り継ぎ便にはもう時間オーバーで乗れないことを告げられた(幸い3時間後の便に振り替えられたので助かった)。暇つぶしに本屋に行くと、ドラゴンボールの英語版が売っていたので買ってみた。英語の勉強兼ねて!と思ったが、exterminate=根絶やしにする、など学会に使うことのない単語が多く、当然何の役にも立たなかった。

 何とかマイアミに到着し、その夜のReception partyに、先に現地に行っておられた石沢教授と参加した。各国の偉い先生方と片言ではあるが色んな話ができて、(留学歴のない私にとっては特に)世界が広がったような感覚になり、非常に楽しい時間であった。

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 翌日に発表があったが、欧米人との英語ディスカッションは思った以上に難しかった。時差ボケで頭が回っていなかったことを差し引いても台湾で聞いたアジア人の英語と違い非常に早口で、激しく混乱して石沢教授に質疑応答を助けていただいた。準備していたのに情けない、、と思いながらその後のcoffee breakに参加すると、前日にお話させていただいた各国の先生方から「何を悲しそうにしているんだい!素晴らしい発表だったじゃないか!」的な励ましのお言葉をいただいた。世界の暖かさを感じ、もっと勉強して次回リベンジ!!と今も意気込んでいる。

 アメリカに一人で渡航する機会もそうそうなく、今の自分に足りないものを再確認でき、トラブルも含めて非常に良い経験になった。ちなみに台湾のブランド店における謎イベントについてはマイアミでも発生し、アジア人のバイヤーかなんかだと思われたのかより一層店員の不信感を肌に感じた。もう少し小綺麗な人間にもなった方が良いのであろう。お目当ての鞄はなかった(あの感じだとあっても売ってくれないかも)。

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 帰国後、しばらく通常勤務をした後に有給休暇消費を兼ねた冬休みをいただいた。こうした休暇が取りやすくなったことは非常にありがたい世の流れであり、家族で北海道に行き、休暇を満喫した。仲の良い友人宅でお世話になり、北海道の幸に舌鼓を打ち、家の裏山で5歳の息子もたくさん雪遊びをして楽しむことができた。雪合戦、雪だるま、そり滑り、かまくら(腰が爆発しそうになった)、、、出張続きであまり家に居られなかった分、家族サービスもできて非常に有意義であった。

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 帰阪後は通常業務に戻りつつ、学生の講義や外科に興味を持ってもらうための医局説明会の準備などもあり、気づけば3月も終盤。忙しかったが、振り返ると非常に充実した3か月であった。あと、1か月あまりで山のようにマイルを貯めることもできた。

 臨床・研究・教育、そしてプライベートのすべてを充実させることは当然ながら簡単ではない。充実=忙しい、である。しかしどれも蔑ろにして良いものではなく、楽しく医師人生を送っていくにあたり必須と考えている。手術が上手くなりたい、患者さん全員元気にしたい、良い研究をして多くの人の役に立ちたい、自分の経験を伝えて立派な後輩を育てたい、コロナ窩で遠ざかったが学生時代からの趣味であるバンド活動も再開したい、家族との時間も楽しみたい、、、欲張りは正義だ!!

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