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2025年1月16日
FACS就任! -- 米国外科学会の報告(木下正彦)
2024年10月、サンフランシスコで米国外科学会(American College of Surgeons; ACS)学術集会が開催された。私も参加したが、目的はもちろん発表、だけではなく、2024年より就任することとなったFellow of American College of Surgeons(FACS)の任命式に参加することであった。
ACSは1913年に設立され、世界最大規模の外科系学会の1つである。日本支部を含め、多数の各国支部があり、非常に国際色豊かな学会だ。FACSは本学会のいわゆる「専門医」にあたる資格であり、これまでの活動実績や研究業績をもとに既存メンバーの推薦・面談を経て審査される。この度FACSに申請し、無事に承認され、晴れてFACSの冠をいただいた。とはいえ、日本の外科医が目指す内視鏡外科技術認定医や肝胆膵外科高度技能専門医に比べて特別ハードルが高い!というわけではなく、学会誌や学術集会などの情報が頻繁に届くことで知識のアップデートに繋がる、という認識であった。そのため任命式!と言われてもさほど重視していなかったのであるが(発表の日程と重なれば出ようかなくらい)、教授「参加しておいた方が良いよ」、私「Yes, sir!」の流れで参加に至った。
FACS任命式に参加するにあたり、事前準備としてRegaliaのレンタル手配が必要であった。日本ではなかなか着る機会がないが、全身を覆うローブのようなものである。手配し、参加当日に受付で受け取る。それを着て任命式に参加するのだ。
ハ〇―ポッターに出てくる脇役か!!と心の中で叫んだ(表紙をご参照ください!)。これはなかなか似合わない。映画でセリフがあったとしてもトラブルの際画面の隅で”Oh my god!”と一回言うくらいであろう。周りは外人ばかり。背が高くスタイルの良い白人が切ると主人公感が出るなあと思いながら、言われるがまま整列した。4列くらいの隊列を組んで会場に入っていく。第一印象は「派手!!」であった。さすが世界最大規模の学会、日本での学会でイメージしていたよりはるかに煌びやかな空気であった。某パー子さんのように写真を撮りまくりたかったが、写真を撮りまくるハリー〇ッターの脇役になるので堪えるしかなかった。その後、会長から激励のスピーチをいただく。家族、友人、同僚に感謝し、患者のためその知識や技術を如何なく発揮せよ!!みたいな感じのことをおっしゃっておられたと思う(英語なので曖昧)。Yeahhhh!!!という気分になるカッコいいスピーチであった。教授が「参加しておいた方が良いよ」と仰った理由がわかった。式典の規模は日本と比べ物にならず、その中でのカッコいい激励、気持ちは昂ぶり、心が燃え上がる感覚があった。でも見た目は脇役であった。その後、日本支部の懇親会があり、そちらに参加されていたLAやSan Noseの外科医と仲良くなり、2次会、3次会、、と遅くまで飲み歩くことに。初対面から非常に気さくで、とても楽しい時間であった。とてもじゃないが日本人だけで行くのは怖いようなBAR(深夜で怪しい店しか開いてない)に行き、道行く女装男子(多様性!)と乾杯し、写真を撮り、フラフラでホテルに帰ったが今思えば危険な経験であった。
その後は自身の発表も行いつつ、空いた時間は少し観光したりしつつ滞在時間は過ぎていった。アルカトラズ島では囚人になった気分で監獄を回り、なかなかに面白かった。機会があれば是非皆様にも行っていただきたい。
教授とも合流し、帰国前にStrykerの米国本社へ見学に行く機会を得た。ここでも日本と異なる規模の大きさに圧倒されることとなる。米国本社の技術者の方々と話す機会があったが、この人たちには「机上の空論」はないんだろうなと感じた。こういうシステムがあると良いよね、ならこうしよう!!一つずつくさびを打って進み、すべてを叶えていく、そういった気概・実行力、それを支える企業の力、これらをひしひしと感じ、日本ってこのままで大丈夫なのか、、?もちろん日本ならではの良さはあるが、圧倒的な規模を前にすると縮こまるのも日本人だなあと感じた次第である。非常に素敵な経験になり、自分の世界が大きく広がったような気分になった。夜はアメリカらしくステーキをしこたま食し、帰路に。
帰国後しばらくが経過し、FACS認定証が正式に送付されてきた。なんかいちいちカッコいい。新たな資格に恥じないよう、もっと自分の世界を広げ、さらなる研鑽を!!そして来年はシカゴへ!!