麻酔科学
基本情報
病態診断・生体機能管理医学講座 麻酔科学
代表者 森 隆教授
本学における麻酔科学講座は昭和46年(1971年)に初代教授藤森貢先生が設立されて以来、手術麻酔のみならず救急医学、集中治療医学、ペインクリニック領域におきましても臨床、研究に力を入れてまいりました。現在は主に手術麻酔、ペインクリニック領域での診療を行いながら基礎研究、臨床研究に取り組んでいます。高齢化社会の進展とともに手術件数は全国的に急増することが予想され、当大学病院におきましても手術件数は年々増加の一途をたどっています。そのため、より安全で人体への侵襲の少ない麻酔方法を発展させることは非常に意義深いことです。また、ペインクリニックで扱う慢性疼痛や癌性疼痛の分野は未だに現代医学では治癒困難な疾患が多く、研究面でも今後の発展が大いに求められています。近年、日本からの医学論文数減少が問題となっておりますが、当講座では基礎、臨床問わず活発に研究を行っており、一流論文誌にも毎年掲載されています。研究を楽しみながら質の高い周術期管理、疼痛管理の出来る麻酔科医の育成に努めています。
- 場所
- 学舎 7階
- 連絡先
- TEL:06-6645-2186
教育方針
学部教育
麻酔科学全体の概念を理解し、全身麻酔薬及び局所麻酔薬の作用、気道確保の方法、呼吸循環管理、体液管理、術前の患者リスク評価、術後管理について学んでいただきます。また、心肺蘇生、緩和医療、ペインクリニックに関する講義も行います。臨床実習では実際に全身麻酔管理の現場を中心に経験していただきます。
臨床教育(研修医の育成)
当講座には、日本麻酔科学会、日本心臓血管麻酔学会、日本ペインクリニック学会などの専門医、指導医が豊富に在籍しており、専門医を目指す研修医の皆様の症例報告や学会発表を指導・支援しています。麻酔科専門医試験受験資格を得るためには今後、心臓血管外科麻酔や脳神経外科麻酔、小児麻酔、産科麻酔のような専門性の高い麻酔管理の経験が求められるようになりますが、個人個人にきめ細やかな配慮を行うので十分な経験を積むことができます。
研究指導
積極的に学会等で発表を行っていただき、論文誌への投稿の指導も行います。また、大学院に進学して医学博士号の取得をしていただくことが可能です。また、大学院在学中及び卒業後に積極的に国内外への留学を支援しています。近年では生理学研究所(愛知県岡崎市)、カリフォルニア大学アーバイン校、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ノースウエスタン大学への留学実績があります。
研究について
概要
麻酔科学分野における研究の特徴として、麻酔薬の作用機序のみならず周術期の呼吸、循環、体液管理、意識、痛み等、幅広いカテゴリーが研究対象になることが挙げられます。基礎研究と臨床研究は車輪の両輪の如くであり、我々もどちらもおろそかにしてはいけないと考えています。高度な知識、技術、倫理観を持つように努め、麻酔科学の発展に寄与できるように日々精進しています。
教室を代表する業績
トラマドール誘発性痙攣閾値に対する脳内セロトニン濃度の影響に関する研究
- Yohei Fujimoto, Tomoharu Funao, Koichi Suehiro, Ryota Takahashi, Takashi Mori, Kiyonobu Nishikawa: Brain Serotonin Content Regulates the Manifestation of Tramadol-induced Seizures in Rats: Disparity between Tramadol-induced Seizure and Serotonin Syndrome.: Anesthesiology 122(1):178-89, 2015
デクスメデトミジン全身投与のノルアドレナリン下行性疼痛抑制系を介する機序の解明
- Yusuke Funai, Anthony E. Pickering, Daisuke Uta, Kiyonobu Nishikawa, Takashi Mori, Akira Asada, Keiji Imoto, Hidemasa Furue: Systemic dexmedetomidine augments inhibitory synaptic transmission in the superficial dorsal horn through activation of descending noradrenergic control: an in vivo patch-clamp analysis of analgesic mechanisms.: PAIN 155(3): 617-628, 2014
体血管抵抗がビジレオ・フロートラックシステムによる心拍出量変化に及ぼす影響の検討
- Koichi Suehiro, Katsuaki Tanaka , Tomoharu Funao, Tadashi Matsuura , Takashi Mori, Kiyonobu Nishikawa: Systemic vascular resistance has an impact on the reliability of the Vigileo-FloTrac system in measuring cardiac output and tracking cardiac output changes: British Journal of Anaesthesia 111(2): 170-177, 2013
リドカインによるミクログリアのプロトンチャネル抑制作用の検討
- Tadashi Matsuura, Takashi Mori, Megumi Hasaka, Miyuki Kuno, Junko Kawawaki, Kiyonobu Nishikawa, Toshio Narahashi, Makoto Sawada, Akira Asada: Inhibition of voltage-gated proton channels by local anaesthetics in GMI-R1 rat microglia.: The Journal of Physiology 590(4): 827-843, 2012
主な研究内容
現在の主な研究テーマ
パッチクランプ法によるイオンチャネルの電気生理学的研究
分子細胞生理学教室協力を得て細胞を用いたパッチクランプ法によるイオンチャネルの電気生理学的研究をメインに行っています。パッチクランプ法では定量的で詳細な実験をすることが可能です。また自分の興味に応じて細胞の種類や記録するチャネルを選択することができるのも大きな魅力です。
脊髄虚血における脊髄前角グルタミン酸濃度の測定
脊髄虚血モデルラットを作成し、脊髄前角でマイクロダイアライシス法を用い連続的にグルタミン酸を測定することで脊髄虚血の機序の解明を行い、これに対する治療法の有効性について検討を行っています。
in vivo パッチクランプ法による脊髄後角におけるシナプス応答の解析
我々は痛みの伝導路として重要な役割を果たす脊髄後角膠様質ニューロンからin vivo ホールセルパッチクランプ法を用いてシナプス解析を行い、鎮痛薬や全身麻酔薬の作用機序に関する研究を行っています。
神経障害性疼痛が心筋虚血再灌流障害に及ぼす影響の検討
神経障害性疼痛は慢性的に交感神経系を活性化させるため、循環器系へも影響を与えることがいわれています。当研究チームではラットの腰部神経根結紮モデルを用い、神経障害性疼痛による交感神経刺激が単離した心臓の虚血再灌流障害に及ぼす影響を評価するため、ランゲンドルフ灌流装置を使い心機能の変化を測定しています。また心筋細胞のみを単離し、蛍光染色を行い共焦点蛍光顕微鏡にて虚血状態に対する変化やフローサイトメトリーによるミトコンドリア膜電位の変化などの評価を行っています。
臨床への取り組み
患者様が早期に回復して日常の生活に戻れるよう、麻酔という手法を通じて手術中に加わるさまざまなストレスから解放するだけでなく、術前・術後を含めた周術期全体の患者管理に関わっています。また、疼痛管理のプロフェッショナルとして、ペインクリニックならびに緩和医療では痛みで悩む患者様の治療に携わっています。
スタッフ
教授 | 森 隆 |
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准教授 | 松浦 正、末廣 浩一 |
講師 |
矢部 充英、田中 克明、舟井 優介、堀 耕太郎、 山﨑 広之、藤本 陽平、辻川 翔吾、日野 秀樹、 |
病院講師 |
向 陽、木村 文 |
参考写真