細菌学

基本情報

都市医学講座 細菌学

代表者 金子 幸弘教授

本学には、「智・仁・勇」という非常に素晴らしい理念がありますが、細菌学教室でも、この理念とともに、「幸・愛・夢」の3つを合言葉として、教育・研究等を目指します。
「幸」とは、人類の幸福に貢献すること、「愛」とは、他人に対する愛・思いやりの心、「夢」とは、高い志を持った探求心です。
医学分野で求められる細菌学的なニーズに迅速に対応できるような体制作りを行うとともに、教室の魅力が伝わるような独創的・先端的な分野を開拓するように努め、「幸・愛・夢」の実践を目指します。大阪公立大学医学部で、感染症の基本を学んだと胸を張れるよう、実践的な臨床細菌学を目指します。

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場所
学舎 14階
連絡先
TEL:06-6645-3746 MAIL:ykaneko@omu.ac.jp

 

教育方針

学部教育

  • 細菌学は、解剖学などと同様に臨床の知識を学ぶ上での土台となる学問です。
  • しかしながら、一方的な講義では細菌学を学ぶ意義がなかなか見出せないのが現状です。
  • 単なる知識としてではなく、各学生の「気づき」が重要であると考えており、臨床との関連を問いながら、講義を進めていきます。
  • 我々教員の役割は、「自転車の補助輪」みたいなもので、一人でこげるようになるのを支えることであり、学生を主体とした教育に努めます。
  • さらに、現在の細菌学でわかってきたこと、未解明のこと、近年の感染症の動向など、細菌学を通じて、学問や科学の楽しみを伝えられればこの上ない喜びです。
  • 修業実習では、単に実験技術を指導するだけでなく、論文の読み方、論文の書き方、調査方法など、実習生の希望に沿った実習を行っています。また、1分スピーチを毎回実施し、伝えることの重要性や難しさなどを実感してもらい、次世代の研究者・指導者の育成に役立てばと思っております。

 

臨床教育(研修医の育成)

  • 公式な講義としての臨床教育はありませんが、臨床感染制御学教授 掛屋弘先生を中心に、3~6年生を対象とした感染症の講義、Infection Lecture at OCU Hospital and Affiliates(ILOHA)を実施しています。
  • 文字通り、感染症のイロハを教えることが目的ですが、単に初歩的な内容を教えるというのではなく、感染症や細菌学から見えてくる病気の仕組みや疾患に対する考え方なども伝えることができればと考えながら指導しています。

研究指導

  • 博士課程や修士課程については、個人個人のキャリアを念頭において教育しています。また、博士・修士の基本的な知識習得のため、情報通信技術(ICT)を活用したe-learningのプログラムを作成しています。
  • 初年度では細菌学の基礎知識や基礎技術を重点的に指導し、卒業後も必要となる能力を確実に習得できるようにしています。また、博士課程では、4年間で主論文のほかに、英文・和文を問わず、1編以上の論文をまとめる力を養います。
  • その他の活動として、週1回セミナーでは進捗報告や論文解説などを実施し、学会等での発表も促進することで、情報発信力の向上を目指しています。

研究について

1)臨床に直結する実践的研究

各診療部門や行政機関とタイアップして、細菌学的な要望があった際に迅速に対応し、細菌学的な問題については「細菌学教室に頼めば何とかなる」と言われるような体制を構築することを目指します。

2)独創的・先端的基礎研究

難治性感染症の分子機構と新規治療の開発を目指し、以下のテーマで基礎研究を行っています。
○結核の新規診断法・予防法の開発
○新規治療薬の開発
○難診断感染症の新規診断法の開発
○バイオフィルム形成メカニズムの解析
○難治性真菌症の病態解析

教室を代表する業績

    1)抗菌薬が休眠した結核菌に効きにくくなるメカニズムの解明

    抗結核薬イソニアジドに対して休眠した結核菌が抵抗性を獲得するメカニズムを解明しました(Niki M. et al. J Biol Chem. 2012)。

    2)結核予防のための新しいワクチンの開発

    液性免疫誘導型の新しい抗結核ワクチン開発を目指し、特異的IgAの誘導が結核菌感染に防御的に働く可能性を示しました(Niki M. et al. J Immunol Res. 2015)。

    3)菌の「究極の隠れ蓑」の謎を解明

    致死性の高い病原性真菌の一つであるCryptococcus gattiiが、「究極の隠れ蓑」を用いて巧みに体内に潜伏する謎を解明しました(Urai M, Kaneko Y. et al. Front Cell Infect Microbiol. 2016)。

    主な研究内容

    現在の主な研究テーマ

    結核の新規診断法・予防法の開発

    液性免疫誘導型の新規抗結核ワクチン開発を目指し、結核菌タンパク抗原および脂質抗原について、特異的IgAの誘導が結核菌感染に防御的に働くものを探索しています。また、DNA修飾試薬を用いた生菌・死菌の分離法を用いて、結核の治療奏功度や薬剤感受性を迅速に診断する方法の開発を行っています。

    新規治療薬の開発

    新規抗菌薬および新規抗真菌薬の候補を探索しています。深海微生物由来の化合物について、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクターに対する抗菌活性を評価しています。

    難診断感染症の新規診断法の開発

    臨床感染制御学と、診断の難しい感染症の診断法の開発に取り組んでいます。特に、アスペルギルス症との鑑別が難しい接合菌の診断法について、新しい抗原の血清中での検出に関して、マウスモデルを用いた検討を行っています。

    バイオフィルム形成メカニズムの解析

    バイオフィルムとは、細菌や真菌が形成する菌の集合体です。細菌や真菌は、単細胞生物であるにもかかわらず、バイオフィルム内ではあたかも多細胞生物のように個々の細菌が役割を分担して環境に対応しています。バイオフィルムは、病気や耐性とも関連しており、当教室では、緑膿菌、カンジダ、非結核性抗酸菌が形成するバイオフィルムに関する研究を行っています。

    難治性真菌症の病態解析

    バイオフィルムを形成しやすい真菌の代表であるカンジダが抗真菌薬に対して抵抗性を示すメカニズムを研究し、併用療法による治療の可能性について検討しています。また、通常のクリプトコックス症よりも致死率の高いCryptococcus gattiiによるクリプトコックス症の病態を、菌側と宿主側の双方から検討しています。

    臨床への取り組み

    臨床感染制御学とともに、地域における感染症の問題について、各医療機関、行政機関、研究機関等の連携による広域体制の構築を目指しています。また、深在性真菌症の診断補助や新規治療戦略の開発など、臨床分野に還元できるトランスレーショナルリサーチに取り組んでいます。

    スタッフ

    教授 金子 幸弘
    准教授 仁木 満美子、坪内 泰志(本務:刀根山結核研究所)
    講師 老沼 研一