血管病態制御学(旧老年血管病態学)

基本情報

老年医科学講座 血管病態制御学(旧老年血管病態学)

代表者 庄司 哲雄准教授

当教室は1998年4月に老年医学研究部門が医学部新学舎に設置された際、循環器血管分野として発足いたしました。2000年4月に大学院医学研究科博士課程の再編に伴い、大学院医学研究科・基礎医科学専攻・老年医科学大講座・老年血管病態学となりました。このたび2016年4月からは血管病態制御学と講座名を改めました。
これまでから、老化ならびに代謝障害(糖尿病、腎臓病、脂質異常症など)に伴う様々な血管障害(動脈硬化、血管石灰化など)を臨床的に評価するとともに、それらの発症機構を細胞・分子生物学的に研究してきました。
最近は、血管障害のより上流にある事象として、脂肪細胞の「褐色化」についても関心をもって基礎研究を進めています。また、血管障害の下流にある事象として、脳心血管病や認知機能低下を位置づけ、介入試験や臨床疫学的研究に取り組んでいます。
このように、私たちは「血管障害」をキーワードに、機序の解明や診断・予防・治療につながり社会に還元できる研究を目指しています。

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場所
学舎 18階
連絡先
TEL:06-6645-3930/3931 MAIL:t-shoji@med.osaka-cu.ac.jp
HP

 

教育方針

学部教育

学部教育では、代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学などの学部教育を分担し、M3やM4の系統講義において代謝内分泌および腎臓病に関する講義を行っています。

 

臨床教育(研修医の育成)

臨床教育としては、M5のBSLや臨床研修医の指導も分担し、臨床の現場においても病態の理解に立脚した診療方針やエビデンスに基づく診療の重要性を伝えています。

研究指導

  • 代謝内分泌病態内科学の博士課程、および修士課程の大学院生の研究指導を行っています。基礎研究は塩井講師が中心となったミーティングで活発な議論と指導を行っています。臨床研究は庄司准教授が中心となって、グループ指導と個別指導を行っています。
  • 当教室で研究した大学院生たちは、ワシントン大学(シアトル)やフランス国立保健医学研究所(INSERM)に海外留学しています。

研究について

概要

  • 基礎研究も臨床研究も、最終的には実臨床に還元できるような研究でありたいと考えています。
  • 私たちは「血管障害」を通して物事を見つめ直し、機序の解明、診断・予防・治療法の開発につながる研究を目指しています。
  • 同時に、研究を通じて次世代の医学・医療の担い手を育成することが重要であると考えています。
  • 当教室は、基礎研究と臨床研究が切磋琢磨し、世代を超えて活発な議論で盛り上がっています。

教室を代表する業績

設立当初より当教室では、動脈硬化病変の一つである血管石灰化の発症・進展機構とその臨床的意義について研究しています。

基礎研究

基礎研究では、血管石灰化の発症にはマクロファージによる炎症反応が重要な役割を果たしており、マクロファージに由来する炎症性サイトカイン特にoncostatin M (OSM) が血管平滑筋細胞の骨芽細胞への形質転換を促進することにより石灰化を誘導することを明らかにしました(Circ Res 91:9-16, 2002)。
また、慢性腎臓病における血管石灰化の促進機序における高リン血症の役割を血管平滑筋細胞の培養系を用いて明らかにしました(Circ Res 87:e10-e17, 2000)。

臨床研究

臨床研究として、冠動脈疾患患者において冠動脈疾患の重症度と石灰化調節因子であるosteoprotegerinの血中濃度が関連することを明らかにしました(Circulation 106: 1192-1194, 2002)。

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

血管石灰化の発症における炎症の役割

従来の研究でマクロファージに由来するOSMが血管石灰化の発症に重要な役割を果たすことが明らかになったことから、動脈硬化病変に存在するマクロファージにおけるOSMの発現調節機構について研究を進めています。
特に、腸内細菌由来のエンドトキシン (LPS) がインスリン抵抗性を惹起し、肥満および2型糖尿病の発症に関与することが明らかにされてきており、このような代謝性エンドトキシン血症のOSMの発現誘導や血管石灰化における役割に注目しています。腸内細菌叢への介入による血管石灰化の治療への応用を目指しています。

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白色脂肪細胞の褐色化の病態生理学的意義

白色脂肪組織において寒冷刺激などにより誘導される褐色脂肪細胞はベージュ脂肪細胞と呼ばれており、白色脂肪組織においてエネルギー消費を促進し、肥満およびインスリン抵抗性の改善作用を示すと考えられています。一方、癌・うっ血性心不全・慢性腎不全などの慢性消耗性疾患に伴う悪液質の病態にも白色脂肪細胞の褐色化が関与することが報告されています。
このように、白色脂肪細胞の褐色化は脂肪組織量の減少を引き起こす種々の病態に深く関わっていると推測されますが、その詳細なメカニズムは明らかではありません。
我々は、培養細胞や病態モデルマウスを用いてベージュ脂肪細胞の誘導機構の解明とその制御方法の確立を目指して研究を行っています。

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DREAM(透析患者における心血管疾患に対する代謝内分泌異常の関与)

Dialysis-Related Endocrine And Metabolic abnormalities affecting cardiovascular disease (DREAM)は、透析患者における心血管疾患を予測するバイオマーカーの探索のための518人の前向き観察コホート研究です。
心血管疾患の独立した予後予測因子として、副腎アンドロゲンDHEASの低値(Nephrol Dial Transplant 2012), 血清(EPA+DHA)/AA比の低値 (Am J Kidney Dis 62: 568-76, 2013)を報告しています。これら以外に、心胸比、酸化ストレスマーカー、PUFA内因性代謝異常、コレステロール合成・吸収マーカー、その他のバイオマーカーの意義を解析中です。
UMIN-CTR identifier: UMIN000006168

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DREAMロゴ

 

ODCS(大阪透析合併症研究)

Osaka Dialysis Complication Study (ODCS)は、透析患者の合併症、特に認知機能低下やADLの低下に影響する因子を探索するための前向き観察コホート研究です。
2012年に1696人の透析患者を登録し、毎年認知機能などを追跡しています。認知機能と血圧指標、ミネラル代謝異常(CKD-MBD)などが関連することを見出しています。
UMIN-CTR identifier: UMIN000007470

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J-DAVID試験(日本透析活性型ビタミンD試験)

慢性腎不全ではビタミンDの活性化障害が認められ、様々な病態の原因になる可能性が指摘されています。
本研究は、活性型ビタミンDであるアルファカルシドール投与群と非投与群における4年間の心血管イベントの発症リスクを比較する多施設共同ランダム化比較試験(RCT)です。2011年に976例の症例登録を完了し、2015年4月に最終症例の観察期間を終了。2016年1月現在、症例報告書の回収とデータクリーニング、独立した評価委員会によるイベント評価を進めており、2016年後半に結果が明らかになる見込みです。
UMIN-CTR identifier: UMIN000001194

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臨床への取り組み

研究成果の臨床応用として、診断のためのバイオマーカーとしての意義、予防・治療のターゲット分子の同定、有効な治療法の開発などが考えられます。
当教室では、血管石灰化や心血管病予知のためのバイオマーカーを複数明らかにしてきました。また、血管石灰化における高リン血症の役割の解明できたことにより、高リン血症是正の臨床的意義がより明確になり、腎臓病領域の診療ガイドラインにも反映されています。さらに、活性型ビタミンDが心血管病予防に役立つ可能性を実証するために、J-DAVID試験が現在進行中です。
これからも、私たちは臨床に役立つ研究成果を世界に向けて発信し続けます。

スタッフ

准教授 庄司 哲雄
講師 永田 友貴

 

参考写真

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