代謝内分泌病態内科学

基本情報

臓器器官病態内科学講座 代謝内分泌病態内科学

代表者 繪本 正憲教授

<講座由来>
前身である大阪市立医科大学・第二内科講座は1950年に石井潔初代教授によって開講されました。以後、第二代和田正久教授(糖尿病学)、第三代森井浩世教授(骨・カルシウム代謝学、内分泌学)、第四代西澤良記教授(代謝内分泌学、腎臓病学、透析医学)、第五代稲葉雅章(内分泌学、透析医学)、現在の第六代教授繪本正憲(代謝内分泌学、腎臓病学、透析医学)へと引き継がれ、代謝内分泌学と腎臓病・透析医学の分野で一貫して診療・研究・教育活動を精力的に展開してきております。本講座出身の同門会医師は現在までに約400名を超え、大学病院・市民病院などの中核病院の指導医、地域医療をささえる勤務医・開業医、大阪市関連保健所等の行政機関で活躍する医師として幅広く活躍しております。また、本学の第三内科学教室、老年内科学、血液腫瘍制御学、分子病理学の教授も輩出しております。1999年大学院再編により、代謝内分泌病態内科学と腎臓病態内科学となり、附属病院では生活習慣病・糖尿病センター(糖尿病、脂質異常症などの代謝疾患)、骨・内分泌内科(内分泌疾患、骨代謝疾患)、腎臓内科(糸球体腎炎や慢性腎臓病、透析療法)の3診療科を担当しています。

<領域とその特徴>
本講座では、糖尿病・脂質異常症などの代謝性疾患、甲状腺・副腎・下垂体疾患の内分泌疾患、骨粗鬆症などの骨代謝性疾患を対象領域として、代謝という視点を中心に病態解明、診断治療予防への臨床応用をめざしています。近年の肥満増加、高齢化、生活習慣変化等によりこれらの対象疾患患者数は年々増加しており社会的ニーズもますます高まっています。

<近年の研究、臨床の動向>
糖尿病における代謝異常と血管障害、腎症・慢性腎臓病・透析医療における代謝異常と治療、骨代謝疾患における診断指標と新規薬物治療、生活習慣病における睡眠障害、甲状腺疾患における超音波診断の新規指標などのテーマを中心に国内外での学会活動をおこない、英文誌への論文掲載の実績も多数あげています。関連する基礎研究としてカルシウム・リン代謝異常症、腎と栄養・代謝異常、糖尿病における脂肪細胞機能異常・動脈硬化の分子機序なども精力的に若手医師を中心に行っております。

<私たちの使命>
1)代謝内分泌学、腎臓病学および関連分野において、常に臨床医学・医療をみすえた学術的研究をおこない国内外に発信していくこと、2)これらの専門性の高い分野と内科学全般の知識、経験、技術をもち科学的思考のできる内科医(Physician’s scientist)を育成していくこと、3)これら専門分野における高度専門診療をおこなうとともに、生活習慣病の内科管理を安全におこなうことにより、大学病院における高度先進医療の基礎的医療を支える役割もになっていくこと、の3つを重要な使命と考えています。

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場所
学舎 10階
連絡先
TEL:06-6645-3806 

 

教育方針

学部教育

一般内科学に加え、内分泌学、代謝・糖尿病学、腎臓病学の基本的な知識を講義で会得していただきます。その上で臨床実習においては、担当症例について学び、担当教官の指導の元、断片化している知識をつなぎ合わせた内科的考察ができることを目指します。将来、臓器別診療は元より、全人的医療が提供できるような医師の育成を目標としています。

 

臨床教育(研修医の育成)

  • 生活習慣病・糖尿病センター、骨・内分泌・リウマチ内科,腎臓内科の3診療科を合わせた2014年度の外来初診患者数は年間約3900名,延外来患者数は年間35200名であり、病床数62床を担当する病棟診療における年間入院患者数は約960名となります。これら多彩な症例の診療の中、特に入院診療を中心に臨床教育を行っています。各々の専門的な臓器別診療・カンファランスに加え、毎週の全医局員による全入院患者の臨床カンファランスを行い、その翌日に全入院患者の病棟回診を行い、ベッドサイドでの指導も行います。この過程は、高度の専門診療性が強くなる大学病院の診療においては非効率的な側面も一部ありますが、研修医・研究医にとって幅広い内科学の教育、研修の実践の場となり、各々の専門医の基礎となるべき土台作りとしての教育的見地より重要と考えています。
  • また、当科には日本内科学会、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本腎臓学会、日本透析医学会等の専門医が多数在籍しており、各専門医を目指す研修医・研究医の十分な指導・サポート体制が整っています。

研究指導

  • 学位取得に向けての研究は、基本的に各々の研究分野の教員のもと、大学院生あるいは研究医に直接指導が行われます。当教室の特徴としては、対象が慢性疾患中心であることから、相互に関連性も強く,各々の研究分野の垣根をなくし、相互の境界領域や研究方法を共有することで、その業績につなげていることです。実際、週1回の研究カンファランスでは、各々の研究分野の大学院生・研究医が現在の研究状況をプレゼンテーションし、教室員全員で情報共有,ディスカッションすることを重要視しており,大学院生・研究医の重要な教育の場となっております。
  • また当教室出身者には多くの海外留学経験者がおり、現在も、学位取得後の海外留学をめざして基礎研究に打ち込む大学院生も在籍しております。現在の海外留学生は,米国にて腎臓病学、内分泌学分野で2名おり,帰国後の活躍も期待しているところです。

研究について

概要

臨床研究、基礎研究共に、世界に通用するレベルを維持するため、国内は言うまでもなく、海外の関連学会で発表し、英語論文化することをひとつのプロジェクト完了と考えています。また完了したプロジェクトを土台に、当教室の特色である幅広い分野の相互連関を生かし、情報を共有しながら、ユニークなテーマを創造し、永続的に研究業績をあげることを目指しています。教員だけでなく、大学院・研究医を含め、研究に携わる全員の姿勢であるべきである、と考えています。

教室を代表する業績

  • 糖尿病における睡眠障害、睡眠の質の低下を証明し、新聞報道を含め各種マスコミで報道されました(Yoda et al., PLoS One 10: e0122521, 2015)。
  • 透析患者におけるビタミンD投与の重要性を報告・注目され、間もなく前向き研究の結果を報告予定です(Shoji et al., Nephrol Dial Transplant 19:179,2004)。
  • 透析患者における血糖管理の重要性を世界に先駆け報告し、その後の同分野の研究に多大な影響を与えました (Morioka et al., Diabetes Care 24:909, 2001) (Oomichi et al., Diabetes Care 29:1946, 2006) 。
  • 透析患者における血糖管理指標としてのグリコアルブミンの有用性を世界で初めて報告し、日本の「血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012」作成に大きな役割を果たしました (Inaba M et al., J Am Soc Nephrol 18:896, 2007)。
  • 世界ではじめて血管石灰化におけるリンの重要性を示したパイオニア的業績 です(Jono et al., Cir Res 87:e10, 2000)。
  • 人工膵臓を用いたグルコースクランプ法により糖尿病におけるインスリン抵抗性を客観的に評価し、現在、国内最大の症例数を誇ります (Emoto et al., Diabetes Care 22:818, 1999)。

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

糖尿病学・代謝学・動脈硬化学

糖尿病における動脈硬化症は、糖尿病合併症の中でも予後に関わる重大な合併症であり今日においても克服されていません。当教室では、糖尿病患者における動脈硬化の病態解明を目的として研究を行っています。臨床的には、糖尿病患者の頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)、脈波伝播速度(PWV)、血流依存性血管拡張反応(FMD)、stiffnessβを測定し、動脈硬化の病態に関わる臨床因子との関わりが考えられる因子との関係を解析しています。その因子として近年は、レプチンなどのアディポサイトカインやそれと関わる因子、PUFAなどの不飽和脂肪酸、内臓脂肪や褐色脂肪細胞、サルコペニア、骨粗鬆症、Ca・リン代謝、マクロファージ・単球系のサブセットなどに着目しています。これらの因子に関わる基礎研究も行っています。また動脈硬化症の進展病態因子として重要なインスリン抵抗性について、インスリン抵抗性評価のゴールドスタンダードであるグルコースクランプ法を用いて、他のインスリン抵抗性の指標との関連や、動脈硬化に関わる因子との関連について研究を行っております。

慢性腎臓病・透析医学

多くの当教室に関連する透析病院・クリニックと連携することで、透析患者における栄養・糖尿病・代謝障害、骨・カルシウム・リン代謝、動脈硬化の研究分野では量・質ともに世界レベルでの業績を上げてきました。現在も新たな約1700名の透析患者からなるコホート研究を立ち上げ、認知機能を中心に、将来を見据えたテーマに注力しています。当教室より世界に発信した糖尿病透析患者における血糖管理の重要性については現在、新規糖尿病治療薬による介入試験も行い、将来的な予後改善を目指しています。臨床研究に加え、尿毒症物質やfetuin-A、nephronectinなどにも注目し基礎研究も行い、実臨床における意義につき検証を進めています。
また慢性腎臓病(CKD)の概念の普及に伴い、腎機能の評価法も注目されています。当教室ではイヌリンクリアランス使用により正確に腎機能を測定することにより、糖尿病腎症をはじめ各種病態との関連について詳細な検討も行っています。

代謝性骨疾患

骨粗鬆症をはじめとする代謝性骨疾患の研究を行っております。臨床研究としては、新規骨粗鬆症治療薬の効果や特性の研究、くる病・骨軟化症の診断と新規治療法の開拓、そして骨パジェット病といった希な疾患についても研究しております。  基礎研究としては、線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)や、副甲状腺ホルモン(PTH)の研究を行っております。FGF-23は、くる病・骨軟化症の病態に重要な役割を持つのみならず、腎不全患者の予後にも影響を及ぼすことが示されています。さらに原発性副甲状腺機能亢進症モデルマウスや副甲状腺初代培養系といったユニークな実験系を用いて、カルシウム・リン代謝の研究を行っています。

臨床への取り組み

生活習慣病・糖尿病センターでは、糖尿病合併症の早期診断のための種々の動脈硬化診断、危険因子管理推進、先進的な治療として持続血糖モニター(CGM)・インスリンポンプ・人工膵臓の治療応用、妊娠糖尿病・1型糖尿病・脂質異常症の専門外来、フットケア外来に積極的に取り組んでいます。腎臓内科と共同で透析導入の抑制をめざした腎症透析予防外来を開設し、コメディカルとともに腎症すべての病期に対応可能なトータルケアーをおこなっています。原発性・ステロイド骨粗鬆症のみならず、くる病・骨軟化症、骨パジェット病などのまれな骨代謝疾患などは全国から患者紹介があり、診療とその臨床研究をおこなっています。

スタッフ

教授 繪本 正憲
准教授 今西 康雄、森岡 与明
講師

藏城 雅文、津田 昌宏、仲谷 慎也、

越智 章展、山崎 祐子

病院講師 角谷 佳則、上殿 英記、都井 律和

 

参考写真

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