歯科口腔外科学
基本情報
病態診断・生体機能管理医学講座 歯科口腔外科学
代表者 中原 寛和教授
大阪公立大学大学院医学研究科歯科口腔外科学は学内で最も新しい科として、平成27年4月1日に設立されました。同医学部附属病院においては、平成27年10月1日より病院5階の歯科口腔外科診療室にて診療を開始しております。
平成26年、厚生労働省より特定機能病院には歯科口腔外科の設置が求められ、医科と歯科の密接な連携に基づいた医療が推進されました。その理念に基づいて設立された当科は、医学部附属病院において、全身麻酔手術、抗がん剤治療、造血幹細胞移植治療を受ける周術期患者の口腔機能管理を担当しております。
一方、地域中核病院として近隣開業歯科医の先生との連携を図り、一般歯科医院では困難な歯科治療や口腔外科的疾患の治療を受け入れ、その治療を担当しております。
今後は大学病院として、診療のみならず、研修医を受け入れて教育機関として、さらに最新医療の情報を発することができる研究機関としての役割を担えるようスタッフの充実を図ることを目指しております。
- 場所
- 学舎 7階
- 連絡先
- TEL:06-6645-2781(診療室) MAIL:h-nakahara@omu.ac.jp
教育方針
学部教育
平成27年4月より医学部4年次の学生に歯科口腔外科の授業を開始しました。医科的知識は十分習得したうえに、歯科医療の知識も備え、充実した医科と歯科の連携した医療を行える医師の育成を目指しております。
臨床教育(研修医の育成)
研修医には食道癌などの消化管悪性腫瘍の治療時には周術期口腔機能管理を行うことにより、術後の良好な経過をたどることを、見学しその重要性を体験してもらいたいと考えています。また、抗がん剤治療の副作用としての口内炎の対応を知ることにより、十分な副作用対策のもと、初めて治療が完遂し得ることを知ってもらいたいと思います。
研究指導
口腔領域の機能再生に寄与する研究を立ち上げることを教室の方針としています。あらゆるアイデアをも取り入れ、臨床応用を目的とした、基礎的研究を行っていきたいと考えています。
研究について
概要
当科では口腔機能再生プロジェクトを立ち上げ、研究助成を募っております。日々の臨床活動においても、新規治療の開発を目指した最新の治療コンセプトを取り入れ、患者へのフィードバックを目指した臨床的研究を行えるよう、日々の診療においても、自らの治療結果の検証を行いつつ臨床を行っております。
教室を代表する業績
- 癌の浸潤・転移機構の分子機構の解明にとり組み、遺伝子クローニングされた膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)が癌細胞の基底膜浸潤の過程に果たす役割を報告しました。一方、細胞骨格を制御している低分子GTP結合蛋白の機能解析に着目し、低分子GTP結合蛋白質Rhoファミリーが癌細胞基底膜浸潤にいかなる影響を及ぼすか検討しました。現在までに異なるRhoファミリーの活性化をきっかけに、細胞骨格を制御しながら、異なる浸潤パターンを示すことを報告してきました。現在もこれらのシグナル伝達分子の詳細な解析を研究テーマとしています。
- Nakahara H et al. J. Biol. Chem.1996,
- Nakahara H et al. Proc. Natiol. Acad. Sci. USA.1997
- Nakahara H et al. J. Biol. Chem.1998
- Nakahara H et al. Gene to Cells. 2003
- Nakamura Y et al. Molecular Cancer Therapeutics 2016
- Hayashida S et al. J Bone Mener Res. 2017
- Soutome S et al. Medicine 2017
主な研究内容
現在の主な研究テーマ
単純ヘルペスウイルス1型を用いた口腔癌のウイルス療法
口腔癌は、手術を中心とした集学的治療が行われていますが、呼吸、咀嚼、発声、など手術による機能障害は大きなQOLの低下をもたらします。そこで機能障害を避け得る、新しい治療法の出現が待望されてきました。当科では世界で初めて第三世代遺伝子組換えHSV-1(G47D)を作製することに成功した東京大学医科学研究所(藤堂具紀教授)との共同研究にて、口腔扁平上皮癌に対するウイルス療法の開発を進めています。現時点では悪性脳腫瘍で先行しているウイルス療法(臨床治験フェーズ1-IIa)を口腔扁平上皮癌に応用し、脳腫瘍にない、リンパ節転移能を有する扁平上皮癌にウイルス療法がいかに効果を発揮するかを検討しています。その成果はウイルス療法を他部位の癌治療に応用し得る知見を得る可能性を示唆しています。
扁平上皮癌の浸潤・転移の分子機構解明
原発巣で増殖した癌細胞は多数の複雑なプロセスを経て遠隔転移を成立させています。そのメカニズムのなかで、癌細胞が細胞外基質を分解する過程が、最も重要な過程と考えられます。われわれは以前より細胞外基質分解の分子機構について研究を行い、その過程において,MT1-MMPが重要な役割をはたしていること、さらには低分子GTP結合蛋白のRhoファミリー(Rho, Rac, Cdc42)が細胞運動時の形態変化や運動を制御していることなどを報告してきました。現在、その一つRacに着目し、分子標的治療薬としなり得るかどうかの基礎的研究を行っています。
口腔粘膜の前癌病変の臨床、分子生物学的研究
口腔内にも、子宮頸癌や食道癌と同様な異形成(Dysplasia)病変が認められます。臨床的に白板症とされる病態に対し、病理組織的に口腔上皮異形成(Oral Epithelial Dysplasia: OED)と口腔上皮内腫瘍(Oral Intraepithelial Neoplasia: OIN)に分類され、異形成(Dysplasia)か、腫瘍(Neoplasia)かとの区分が明確になされています。当科ではその鑑別に分子生物学的手法を用いて網羅的に解析することを研究テーマとしています。
臨床への取り組み
平成27年10月1日より、当院にて全身麻酔下で手術を受ける患者および血液疾患にて造血幹細胞移植を受ける予定の患者の機能的口腔管理を行っています。
また、抗がん剤治療や放射線治療を行う患者様の副作用としての出現する口腔内症状(口内炎・歯肉炎・口腔乾燥・口腔真菌症・開口障害)について対応しております。
具体的な治療として、口腔ケア・感染源となる歯の抜歯・動揺歯の固定・スプリント製作に加えて、必要であれば抜歯後の義歯製作、義歯修理のほか齲蝕治療などの一般歯科治療も行っています。
日々の患者への治療の治療効果のデータを綿密に蓄積することにより、どの時期にどのような機能管理を行えば有効なのかを常に検討し、臨床にフィードバックできるように努めています。
スタッフ
病院教授 | 中原 寛和 |
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病院講師 | 森本 泰成 |
研究医 | 中川 聖子、中村 彩乃 |
看護師 | 榮 圭子(師長)、橋口 香世子 |
歯科衛生士 | 松澤 恵梨子、山本 真子、中島 早紀、大島 実可子 |
参考写真