耳鼻咽喉病態学・頭頸部外科学

基本情報

感覚・運動機能医学講座 耳鼻咽喉病態学・頭頸部外科学

代表者 角南 貴司子教授

われわれの耳鼻咽喉科学教室は、これまで、初代後藤松一教授(昭和19年~)、第2代長谷川高敏教授(昭和23年~)、第3代山本馨教授(昭和32年~)、第4代中井義明教授(昭和52年~)、第5代山根英雄教授(平成11年~)、第6代井口広義教授(平成27年4月~) と受け継がれ、令和元年10月より角南が第7代主任教授に就任致しました。
 耳鼻咽喉科の守備範囲は非常に広く、感覚器および自己表現機能に関する器官、生命に直結する器官を対象とし、その障害は直接人間らしい生活の質の低下につながるという重要な部位を担当しています。主な対象疾患としては、頭頸部腫瘍(悪性・良性)、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、中耳炎、めまい、難聴・耳鳴、音声機能障害、嚥下障害、睡眠時呼吸障害、嗅覚障害、味覚障害、顔面神経麻痺などがあげられます。当科では、専門外来として、腫瘍外来、めまい外来、慢性中耳炎外来、難聴・耳鳴外来、遺伝性難聴外来、アレルギー外来、補聴器外来、睡眠時無呼吸外来、音声言語外来を開設しています。
大阪公立大学医学部附属病院は地域がん診療連携拠点病院であることから、頭頸部癌の診療に力を注いでおります。複数の診療科(腫瘍外科、形成外科、脳外科、消化器内科、放射線治療科)と共同で根治性の高い、かつできるだけ侵襲の少ない治療を心掛けて実践しています。もう1つの重点項目として、神経耳科(めまい、難聴・耳鳴)に力を入れています。特に、近年需要が高い耳鳴治療を積極的に行っており、遠方からも受診されているため、専門外来の予約が数か月待ちという状況となっています。これら以外にも、大阪市という地域性もあり耳鼻咽喉科領域に生じる結核症も多数経験しており、臨床研究を行っています。われわれの仕事が市民への医療の提供に寄与することは当然として、臨床研究の成果が直接臨床に還元でき、大勢の患者様に役立つものであることを目指して、今後も教室員一丸、また大学一丸となって教育、研究、診療に携わっていきます。

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場所
学舎 7階
連絡先
TEL:06-6645-3871 

 

教育方針

学部教育

  • 講義における教育目標は、耳鼻咽喉科の概念を理解するとともに、扱う疾患の大綱を理解することとなります。
  • 具体的には、外耳・中耳・内耳、鼻・副鼻腔、咽頭・喉頭のマクロ解剖を理解するとともに、どのような疾患が存在するのかを理解する、そして、神経・感覚器としての耳鼻咽喉器官を理解し、コミュニケーション医学としての立場を理解することです。
  • また、これら知識を持った上で、臨床実習における教育目標は、
    1)咽喉科学に必要な症候学の知識に精通し、適切な問診がとれる、また患者心理を理解する能力を身に着ける、
    2)外来で行う検査機器や方法を理解する、
    3)問診、症状、所見からの鑑別診断を行う能力を身に着ける、
    4)入院患者の全身および局所管理を把握する能力を身に着ける、こととなります。これら目標に到達できるよう、スライド、ビデオ、手術見学および参加、入院患者の担当などを通して総合的に指導していきます。

臨床教育(研修医の育成)

  • 当教室には、日本耳鼻咽喉科学会専門医および指導医、日本気管食道科学会専門医、頭頸部がん専門医、癌治療認定医などの認定医、指導医が多数在籍していること、また、症例は豊富にあることから、臨床教育の現場としては非常に良好な環境であると考えております。
  • 特に、頭頸部癌、めまい、難聴・耳鳴、慢性副鼻腔炎症例は豊富で、手術加療を含め十分な症例を経験することができます。また、連携施設の1つでは、小児耳鼻咽喉科症例、嗅覚・味覚障害症例が非常に豊富で、大学では経験しがたい症例にも接することができます。

研究指導

  • 研究を志す方には、大学院にて博士号取得を目指してもらうことができます。基礎と臨床の橋渡し的研究ができます。
  • 耳鼻咽喉科のみでは十分な基礎研究ができませんので、医学部にある研究センターを利用して、十分な研究機器および人材の下で研究を行ってもらいます。また、大学院までは行きたくない場合でも、臨床研究は豊富な症例から比較的行いやすい環境です。研究成果を学会(国内および海外)や論文(和文および英文)で発表する指導を行います。海外留学を希望する場合は、その仕事内容により最適な機関を一緒に検討していきます。

研究について

概要

以前の当教室の伝統的な研究テーマは、内耳の微細形態学的研究および内耳障害の解明、さらには内耳障害の治療でしたが、現在は主に臨床症例に基づいた、結果が臨床に還元しやすい臨床研究を行っています。内容は様々ですが、特に、頭頸部癌、めまい、難聴・耳鳴、慢性副鼻腔炎症例が豊富なため、これら疾患を題材とした臨床研究が行いやすい環境にあります。また、耳鼻咽喉科領域に生じる結核症例も比較的豊富であるため、臨床研究も行っています。しかしながら、今後は、基礎と臨床の橋渡し的研究も活発に行っていく必要があることから、研究センターを利用して基礎研究にも積極的に関与していく計画があります。

教室を代表する業績

業績名

    1. 微細構造よりみた蝸牛の病態
    2. ヒト内耳血管の観察
    3. 内耳有毛細胞の運動性と細胞骨格
    4. 突発性難聴の薬物治療
    5. 頭頸部癌患者に対する上部消化管内視鏡スクリーニングと食道重複癌の臨床的検討
    6. 音声言語理解の中枢機序
    7. メニエール病の診断は画像でできる
    8. 慢性耳鳴に対する音響療法の効果 

    主な研究内容

    現在の主な研究テーマ

    頭頸部腫瘍の臨床研究

    現在のところ、当科で症例が豊富な耳下腺腫瘍の臨床研究、頭頸部への遠隔転移癌の臨床研究、頭頸部血液悪性腫瘍の臨床研究、頭頸部癌症例における重複癌の臨床研究などを中心とした臨床研究を行っていますが、基礎と臨床の橋渡し的研究も活発に行っていく必要があることから、当大学にある研究センターを利用して、近いうちに、病理組織学的、ゲノム医学的方面など多面的にアプローチし、様々な病態解明を目指して基礎研究にも積極的に関与していく計画があります。

    慢性耳鳴の評価と治療

    慢性耳鳴治療に対し、当科TRT 外来では、ノイズによるサウンドジェネレータやノイズによるサウンドジェネレータ機能付き補聴器、Music and Sound Generator 機能付き補聴器を導入して加療を行っている。また、耳鳴の重症度が感情と強く関連していることから、耳鳴患者の情動知能の評価も行っている。さらに、耳鳴発症、増悪の予防という観点において、ストレスへの適切な対処というものが有用であると考えており、これら治療および研究結果を学会にて報告している。

    好酸球性副鼻腔炎の病態解明と治療の確立

    鼻副鼻腔粘膜に著明な好酸球の浸潤をきたす難治性の疾患である好酸球性副鼻腔炎であるが、浸潤した好酸球がどのように病態形成に関与するのか、なぜ難治性となるのかは解明されていない。非好酸球性副鼻腔炎とどこがどのように違うのであろうか。治療法は分けて考える必要があるのであろうか。これらを解明するべく、われわれは、手術時に採取した好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎患者の鼻ポリープを用いて、病理組織学的および生化学的な検討を行い、好酸球性副鼻腔炎の病態解明と治療法の確立に向け研究を行っている。

    ヒトにおける空間認知機能

    我々の空間認知には絶対的位置情報に基づく認知、自己を中心とした相対的位置情報に基づく認知、自分自身の内的な空間認知がある。相対的位置情報に基づく認知には視覚を中心とした情報が用いられ、頭頂連合野が主に働く。空間認知を絶対的位置情報に基づく認知に構成するためには海馬・海馬傍回の働きが必要と考えられている。我々動物は常に動いているので、自分がどのように動いているかを認知し、空間認識を常にupdateする必要がある。前庭は空間認知には大きな役割をなしていると考えられている。われわれは、ヒトにおける空間認知の機序の解明を試みるため、正常成人における空間認知機能、相対的位置情報に基づく空間認知、絶対的位置情報に基づく空間認知、および自覚的な方向感覚を検討している。

    音声言語理解の中枢機序の解明

    音声言語理解の中枢機序について脳磁図を用いて検討をおこなっている。これまで雑音下での音声言語理解について検討を行い、雑音下での音声言語を聴取する際には運動性言語野であるBroca野の活動の上昇が確認された。現在はイントネーションと音声言語理解についての研究を行っている。

    頭頸部における肺外結核の臨床的研究

    日本の結核罹患率は年々減少傾向を示しているものの、いまだ日本は中蔓延国とされている。耳鼻咽喉領域は結核菌の進入門戸になるため、耳鼻咽喉科医は結核感染症につき熟知しておく必要がある。われわれは、定期的に当科における肺外結核の現状を調査している。耳鼻咽喉科領域の結核では頸部リンパ節が最も多く、次いで喉頭である。頸部リンパ節結核では肺結核の合併率は低いものの、喉頭結核では肺結核の合併率は高い。頭頸部領域の結核の臨床症状、所見は様々である。的確で迅速な治療および公衆衛生上の観点から、耳鼻咽喉科医は常に結核感染症の可能性を念頭におき、迅速な診断を行う必要がある。

    臨床への取り組み

    臨床は特に、頭頸部癌、唾液腺腫瘍、めまい、難聴・耳鳴、慢性副鼻腔炎症例が豊富なため、これら疾患の加療に特に力を入れています。頭頸部癌治療では、複数の診療科によるチーム医療を重視し、根治性の高い、かつできるだけ侵襲の少ない治療を心掛けています。今後は、基礎と臨床の橋渡し的研究により、さらに患者のメリットを最重視した治療への還元も目指していきます。耳鳴治療は、近年非常にニーズが高いため、現行の治療を行いつつも、臨床研究にて得られた知見をさらに臨床に還元することで、少しでも患者の生活の質向上に寄与していきたいと考えています。

    スタッフ

    教授 角南 貴司子
    特任教授 阪本 浩一
    講師 大石 賢弥、寺西 裕一、神田 裕樹
    特任講師 宮本 真
    病院講師

    梶本 康幸、河相 裕子

     

    参考写真

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