発達小児医学

基本情報

泌尿生殖・発達医学講座 発達小児医学

代表者 濱﨑 考史教授

私達の小児科教室は1944年(昭和19年)に開講されました。地域の小児の健康保持を第一に考え、神経・代謝・新生児・糖尿病・腎臓・血液悪性腫瘍・循環器・内分泌・心身症・肝臓・消化管と多岐にわたる領域を対象にした診療を行うとともに、学生や若手医師の教育、小児科学研究にも力を注いでおります。
本講座の特徴としては、フェニルケトン尿症やライソゾーム病などの先天代謝異常疾患の診断・治療において国内外を牽引する研究成果・診療実績を積み重ねてきた点にあり、近年はiPS細胞やPETを用いた先天代謝異常疾患の病態解明・治療法開発にも取り組み大きな成果を挙げています。2009年には超希少疾患である小児神経伝達物質病の全国調査に基づき診断のガイドラインの作成や新しい治療法の開発など厚労省の難治性疾患克服研究事業にも貢献しています。さらに、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実用化研究事業でも新生児医療において重要な役割を果たしており、2014年度には国内で初めて新生児仮死による低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療をスタートさせるなど最先端の新生児治療技術の開発をすすめてまいりました。また、重症児の在宅医療を支援する専門職養成に貢献するため2015年に重症児の在宅支援を担う医師等養成プログラムとして、インテンシブコースをスタートし、2016年から大学院コースを設置し、医療的ケア児の生活の質改善に資する学術研究に取り組んでおります。慢性疾患児の自立支援として、小児アレルギーの分野では大学で最新の検査データを含むアセスメントシートを作成し、学校、保健所、診療所と協力して患児の自己管理支援に役立てる環境再生保全機構の事業に協力しています。糖尿病分野ではインスリンポンプを用いた血糖管理を中心に日本の小児糖尿病治療の先駆的な役割を果たし、消化器分野ではカプセル内視鏡やフィブロスキャンを国内で初めて小児に導入した診療体制を構築するなど、各専門領域において地域診療のみならず日本の小児科学の発展に貢献する診療・研究活動を展開しています。

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場所
学舎 7階
連絡先
TEL:06-6645-3816 MAIL:gr-med-ped@omu.ac.jp

 

教育方針

学部教育

講義・臨床実習をとおして小児科学に対する学生の理解を深め、未来の小児科医師の育成に力を注いでいます。また、海外BSLにも積極的に取り組んでおり、日本の医学生が海外の小児科で実習をする機会を持つことでグローバルな視野を持つ医学生の育成をすすめています。さらに、海外からの留学生も年間10名近く受け入れており、日本の医学生とともに臨床実習を行うことによって医学生の医学英語教育にも取り組んでいます。

臨床教育(研修医の育成)

  1. 初期研修:
    外来・病棟の診療を通じて、小児疾患への理解を深め、小児の診察、検査所見の読み方、基本的な手技が修得できるように指導します。
  2. 後期研修:
    関連病院と大学病院が連携し、一般診療から専門診療まで多岐にわたる分野の診療を後期研修医が経験できるようにプログラムを組み、指導医のもと各疾患の理解を深め、多岐にわたる専門分野の診療を自らが行えることを目指し、様々な手技を修得できるように指導します。また、指導医の指導のもと学会発表や論文発表も積極的に行い、小児科専門医が取得できるようにサポートします。
  3. サブスペシャリティー:
    専門医取得後は、各医師が希望する領域の研修を深める事によって専門性を磨き、領域別の専門医取得を目指す事ができます。また、国内外の医療機関に留学し専門領域のスキルを修得することも積極的に支援しています。

研究指導

iPS細胞、PET、粘膜免疫、糖尿病研究など様々な分野の研究(詳細は「主な研究内容」を参照)に卓越した業績と技術を持つ指導医のもと、博士課程の大学院生として多様な小児疾患に関わる研究をすすめていくことができます。学位(医学博士)の取得が可能であるばかりでなく、得られた成果を診療の場に還元し小児医療に貢献できるという臨床医ならではの喜びを感じていただきたいと思います。また、グローバルな視野を持つ小児科学研究者の育成を目指し、国内外の研究機関に留学することを支援しており、さらなる研究発展を目指すことができます。

研究について

概要

私たちの研究に対する理念は、診療の中で得られる問題点を様々な手法を用いた研究の中で解明し、その成果を実診療の現場に還元することによって小児の健康福祉に貢献することです。当講座の領域は神経・代謝・新生児・糖尿病・血液悪性腫瘍・循環器・小児在宅医療と多岐にわたりますが、それぞれの分野で卓越した研究業績と技術を持つスタッフが中心となり、個々の専門領域の研究課題の解決・解明に向け日々研究に邁進しております。

教室を代表する業績

(1)フェニルケトン尿症に関する研究
    • Odagiri S, Kabata D, Tomita S, Kudo S, Sakaguchi T, Nakano N, Yamamoto K, Shintaku H, Hamazaki T. Clinical and Genetic Characteristics of Patients with Mild Hyperphenylalaninemia Identified by Newborn Screening Program in Japan. International Journal of Neonatal Screeing.2021;7(1):17.
    (2)ムコ多糖症に関する研究
    • Tomita K,Okamoto S, Seto T, Hamazaki T. Real world long-term outcomes in patients with mucopolysaccharidosis type II: a retrospective cohort study. Mol Genet Metab Rep. 2021;29:100816.
    (3)新生児に対する臍帯由来間葉系細胞治療に関する研究
      • Tanaka E, Ogawa Y, Fujii R, Shimonaka T, Sato Y, Hamazaki T, Nagamura-Inoue T, Shintaku H, Tsuji M. Metabolomic analysis and mass spectrometry imaging after neonatal stroke and cell therapies in mouse brains.Sci Rep.2020;10(10):21881.
      (4)小児ぜん息制御の予測バイオマーカーとしてのビオプテリンの有用性に関する研究
      • Kasuga S, Kabata D, Sakaguchi T, Kudoh S, Nishigaki S, Hamazaki T, Shintaku H. Usefulness of serum biopterin as a predictive biomarker for childhood asthma control:a prospective cohort study. Allergology International.2019;68:96-100.

      主な研究内容

      現在の主な研究テーマ

      新生児タンデムマススクリーニン対象疾患の診療ガイドライン改訂、診療の質を高めるための研究、新しい対象疾患の治療法の開発

      全国のフェニルケトン尿症関連の遺伝子診断パネル診断担当医として、これまでの報告例および当科で集積したPAH遺伝子、GCH1遺伝子解析結果から、本邦での出現頻度、予測される重症度を含めた診断結果を主治医に還元しています。日本人と欧米人の体質の差、遺伝子変異の差あるいは生活様式、食事習慣の差も考慮した、より精度の高いデータの蓄積を行っています。またBH4欠損症患者の神経伝達物質前駆体(L-Dopa、5-HTP)の補充量とその臨床的効果と副作用についての基礎情報を収集し診療ガイドラインの改訂、診療の質向上に向けて検討しています。

      新生児中枢神経障害に対する再生医療の開発

      脳性麻痺などの新生児期の中枢神経合併症の予後改善のため、再生医療による治療法の開発に取り組んでいます。臨床研究では、「新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療」に対する多施設共同国内第Ⅰ相試験を完了し第Ⅱ相試験を2020年11月より開始され実施中です。同時に新生児脳室周囲白質軟化症による脳性麻痺に対する臍帯由来間葉系細胞(MSC)治療の治験も実施中で、安全性や効果判定が待たれるところです。基礎研究として、新生児脳梗塞・早産脳障害モデルマウスを用いた脳性麻痺に対する臍帯由来間葉系細胞(MSC)治療に関する研究も行っています。また、早産児の合併症である新生児慢性肺疾患の研究として、各種培養細胞による基礎実験や網羅的なサイトカイン測定の臨床研究を実施しています。

      小児難治てんかんの病態解明研究

      複数の抗てんかん薬を用いてもてんかん発作を十分にコントロールできない難治てんかんの病態を解明することは、てんかん治療の発展には不可欠です。長時間脳波デジタル記録と、我が国において小児に早くから適用してきた脳磁図検査(服部英司. 臨床脳波 2002)で得られたデータを基に神経生理学的解析を行っています。また、てんかんの発症には、大脳皮質神経細胞の異常のみならず、グリア細胞も関与していることが近年分かってきています。てんかん原性獲得におけるグリア細胞の病態と基礎、臨床の両面から神経病理学的な手法を用いて、難治てんかんの病態解明に取り組んでいます。

      小児1型糖尿病の最新治療に関する臨床研究

      当科には現在100名以上の1型糖尿病患者が通院しており、関連施設と合わせると600名以上います。インスリンポンプ療法、SAP療法(持続グルコースモニタリング+インスリンポンプ)の外来導入患者は日本一を誇り、1型糖尿病の最新治療を行っています。またインスリン量の調整において、カーボカウントによるインスリン調整を日本で先駆けて導入し、患者さんが過度な食事制限なく、生活に合わせたインスリン治療(患者中心治療)を実践しています。また、日本で最初のカーボカウント指導書を出版したことを契機に、オンラインセミナーなどを通じてカーボカウント、インスリンポンプ治療、自動化しゆく先進インスリン治療における指導的役割を担い続けています。

      ぜん息管理アプリケーション導入による小児気管支ぜん息患者コントロール状態とアドヒアランスの変化に関する研究

      小児期からぜん息の自己管理を習得するための方略として、ぜん息管理アプリケーションの導入を検討し開発を行っています。

      臨床への取り組み

      • 全国の医療機関からの依頼を受け、アミノ酸、ムコ多糖、プテリジン、ライソゾーム酵素、ビオプテリン関連酵素等の測定・分析を行い診断しています。また、アミノ酸代謝異常症や糖原病、有機酸血症、脂肪酸血症のコントロール、ライソゾーム病の酵素補充療法と市販後調査のための検査、有機酸・脂肪酸代謝異常症の急性増悪やムコ多糖症やフェニルケトン尿症(PKU)に対する新薬の治験を行っています。国際的な臨床治験に積極的に参加し、希少難病の新規治療薬の国内承認に尽力しています。
        さらに拡大新生児スクリーニング事業として、2020年から重症複合性免疫不全症(SCID)、2021年からは脊髄性筋萎縮症(SMA)が追加となり、2022年4月からはポンペ病、ムコ多糖症などのライソゾーム病の新生児スクリーニングをまずは大阪市内で開始し早期診断、治療介入を目指しています。
      • 臨床遺伝学の協力の下、遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどの遺伝性貧血やvon Willebrand病など凝固異常症、血小板減少症の診断を行っています。
      • 新生児科長期入院児や在宅医療を導入する児の新生児科から小児科への転棟転科を行い、さらに在宅医療が必要な患児は退院前カンファレンスを実施しています。インテンシブコース修了者や教育にご協力いただいている在宅医、訪問看護、保健師等と連携し、退院後は地域カンファレンスにも取り組んでいます。

      スタッフ

      教授 濱﨑 考史
      准教授 時政 定雄、瀬戸 俊之、大西 聡
      講師 佐久間 悟、服部 妙香、冬木 真規子、田中 えみ、柚山 賀彦
      病院講師 匹田 典克
      後期研究医 西川 直子、野々村 光穂

       

      参考写真

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       第3回重症児の在宅医療を担う専門職養成のためのインテンシブコース