救急医学

基本情報

病態診断生体機能管理医学講座 救急医学

代表者 溝端 康光教授

現在の救急医学教室は、1993年新病院竣工時に中央診療部門として開設された救急部に端を発します。医学研究科の講座として救急生体管理医学が2005年4月に開設され、その後、現在の救急医学講座に名称を変更しています。
救急部は、開設当初から大阪府における三次救急医療施設として重篤な救急患者の診療の一翼を担ってきましたが、2010年2月には救命救急センターとしての認可を受け、より一層質の高い救急医療を提供すべき社会的責務を担うようになりました。
救急医学教室のスタッフは、救急医学会指導医や救急科専門医を中心に構成されています。それぞれが、救急医として必要な初期診療、手術、重症患者管理の能力を身につけ、外傷、熱傷、中毒、脳卒中、急性心不全、急性呼吸不全などの重篤な救急患者に対し24時間体制で高度な救命医療を提供するとともに、それぞれの研究分野を確立しています。また、院内の心臓血管外科や脳神経外科、整形外科、内視鏡部、冠疾患集中治療部、産婦人科、小児科、感染制御部とも緊密な連携を図り、大学病院における救急部門として常に高度な医療を行うとともに、連携した研究活動を推進しています。
さらに、2007年7月からは、術後患者や院内重症患者のための集中治療部の管理を当教室が行っています。手術という大きな侵襲を受けた患者への診療と救命救急医療をリンクさせ、病態の解析、新たな治療法についての研究をすすめることにより、救急・集中治療における重症患者の診療の質向上に役立てています。

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場所
学舎 17階
連絡先
TEL:06-6645-3987 MAIL:hyamamoto@omu.ac.jp

 

教育方針

学部教育

M4に対する、救急・災害医学概論、胸部・腹部外傷、ショック・多臓器不全、熱傷、意識障害、環境異常についての講義を担当している。M5のBSLでは、救急搬送されてくる患者の初期診療を経験させるとともに、集中治療室に入院している重症患者等の担当をさせ、その病態、治療法の理解を促しています。1週間のBSL期間中に1回の夜間学習をさせ、救命救急センターでの診療の実際を学ばせています。また、BSLの間には外傷初期診療や疾病救急初期診療についてのスモールグループ講義を実施し、より実践的な診療について理解させています。

 

臨床教育(研修医の育成)

当講座には、日本救急医学会、日本熱傷学会、日本集中治療医学会、日本外傷学会、日本外科学会などの専門医、指導医が豊富に在籍しており、認定医、専門医を目指す研修医の指導を行っています。また、医学附属病院の「危機対応能力育成プログラム」の修練の場を提供し、院内各科からのプログラム参加者を受け入れて、患者の急変に対応できる、幅広い診療能力をもった医師の育成を目指しています。初期臨床研修では1年目の必須科目として3か月間の、2年目の選択科目として4か月間の臨床研修を担当しています。多くの初期臨床研修医が救命救急センターでの選択研修を希望しており、毎年10人以上の研修医を受持ち、指導しています。

研究指導

救急医学は実学の最たるものであり、日頃の臨床から、研究者としての思考の仕方、物事の捉え方を指導しています。研究のための研究ではなく、臨床のなかで芽生えた疑問を解決するための研究を重視しています。研究を志す方は、大学院に進学して医学博士号の取得を目指していただくことも可能です。

研究について

概要

  • 当科では、臨床研究と基礎研究を行っています。
  • 臨床研究では、重症急性膵炎に対する蛋白分解酵素阻害剤の投与経路についての研究、救急初期診療におけるチームパフォーマンス向上についての研究、重症敗血症に対する早期診断についての研究などを進めています。
  • 基礎研究としては、武庫川女子大学との協力のもと、超音波刺激の筋芽細胞分化への影響についての研究を実施しています。

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

救急診療におけるノンテクニカルスキル(NoTAM)についての研究

医療安全や医療の質向上においてチーム医療が重要であることは広く認識されているが、現代の医師・看護師教育にはチーム医療のために必要なスキルを教育する機会がない。優れたチーム医療を実践するためには、手技や知識などのテクニカルスキルに加え、自己管理、リーダーシップ、人間関係(権威勾配)、コミュニケーション、状況認識、意思決定、指揮といったノンテクニカルスキルの習得が必須である。本研究では、救急領域におけるノンテクニカルスキルを習得するための目標、方策、評価からなる教育コース(NoTAM:Non-Technical Skills for Acute Medicine)を策定し、その効果を検証している。

GIS(地理情報システム)を用いた病院前救護・災害医療に関する研究

GISは位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。本研究では、大阪市立大学文学研究科地理学教室との協力体制のもと、大阪市消防局の搬送記録データをもとに、大阪市内で発生した救急事案に関して、GISを用いた分析を行っている。また、大阪府危機管理室や大阪府医療対策課とも研究協力体制を構築し、南海トラフ巨大地震の被害想定に関する地理的データと、現在の災害医療体制のデータをGIS上に展開して分析するとともに、災害医療体制の改善点について検討している。

救急分野での医療機器開発とその海外展開

WHOがUniversal Health Coverageを2015年に掲げて以来、世界中の医療機器開発は低中所得国の万人がアクセスできる安価なDeviceの方向へシフトしつつある。この状況を踏まえ、当科では多学共同連携「Project HEART」に参加し「日本の物づくり技術」でこのようなdeviceの開発・救急分野での運用を進めている。海外の大学、特にインドのAIIMS(全インド医科大学)とは協力関係を築きつつあり、今後は機器開発にとどまらず、救急システムの構築まで見据えた人的交流を予定している。

低出力超音波パルスのマウス筋芽細胞の分化に対する影響とその評価法

低出力超音波パルス(LIPUS: low-intensity pulsed ultrasound)は未分化間葉系細胞の分化を促進し,骨代謝に影響を及ぼすことで、組織再生を促すと考えられている。マウス筋芽細胞C2C12は未分化間葉系細胞に由来し,筋芽細胞,骨芽細胞,軟骨芽細胞,または脂肪細胞に分化する能力を持っており、先行研究により、C2C12細胞の筋細胞への分化が、LIPUS照射により促進されることが、視覚的、形態学的に明らかにされた。また、miRNAの分析により、筋細胞の中でも特に遅筋への分化が促進されている可能性が示唆された。そこで、C2C12細胞の筋細胞、特に遅筋への分化を、定量的に評価する手法を確立し、LIPUSによる分化促進効果を検証する。この手法をiPS細胞の分化や、表皮細胞への分化に応用することで、救急医療における再生医療の実用化に貢献することが期待される。

臨床への取り組み

救命救急センターとして、救急隊が搬送する重篤な患者や近隣の医療機関から紹介される重症患者を受け入れています。救急科専門医が、これら重症救急患者の初期診療にあたることで、専門分野にとらわれない広い視野での対応が可能となっています。必要に応じて院内の各診療科と連携し、大学病院としての高度な医療を提供しています。
 
当院は、大阪府の地域災害医療機関、最重症合併症妊産婦受け入れ医療機関に指定されています。
当科は、日本救急医学会救急科専門医指導施設、日本救急医学会指導医指定施設、日本集中治療医学会専門医研修施設、日本外傷学会外傷専門医研修施設、日本熱傷学会熱傷専門医認定研修施設に指定されています。

スタッフ

教授 溝端 康光
准教授 西村 哲郎、内田 健一郎
病院講師

宮下 昌大、河本 晃宏、佐尾山 裕生、

日村 帆志、芳竹 宏幸、岡畠 祥憲

 

参考写真

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