食品プロセス工学研究室(Laboratory of Food Process Initiative)
理念
本寄附講座では、食品の最適加工法を研究し、野菜の栄養成分を損なわず長期間保存を可能にすることで食品ロスの削減を目指します。また、食品成分の膨大な分析データを解析することで、マシンラーニング(機械学習)を活用した食品のおいしさや機能性を最大化するシステムの構築に取り組みます。
特任教授 中田 靖
特任教授 北村 進一
特任准教授 竹満 初穂
<本寄附講座の特徴>
◇多種多様な栄養成分を含む野菜などを対象に、過熱水蒸気加熱加工をはじめとするさまざまな食品加工技術を用いて、おいしさや機能性、および保存性を最大化する加工法の検証。
◇野菜などに含まれる成分が食品加工によりどのように変化しているかを分析するとともに、特徴的な変化があった成分と加工法にはどのような関係性があるかを分析。
◇フードミクス(食品中成分の網羅的解析)を活用し、LC/MS*やGC/MS**といった分析装置から得られる大量のデータを一連のワークフローにより自動解析し、有用な情報を取得。
*LC/MS:液体クロマトグラフィー質量分析装置、 **GC/MS:ガスクロマトグラフィー質量分析装置
◇マシンラーニングを、フードミクス***によって得られる解析データから、私たちの感覚表現(香りの官能評価など)を解析するために活用する。
***フードミクスとは、味や栄養といった食の基本的な情報や食が生体に与える生理機能情報など「食に関する科学的情報」を網羅的に解析する学問分野
これまで様々な角度から食品加工や栄養成分についての研究が行われていますが、食品の成分と調理・加工による化学反応はあまりにも複雑で、おいしさ(香りなど)や機能性の変化を含めた総合的な視野に立った研究は、あまり進んでいないのが現状です。マシンラーニング(機械学習)は画像や記述的なデータを分析するのに役立つことが知られていますが、同様に、いい香り、おいしいといった私たちの感覚表現と科学的なデータを橋渡しする非常に有効な手段です。
「食」は、単に栄養を満たす対象としてだけでなく、食文化と社会環境との関わりや、心身への影響を与える研究対象としてきわめて重要です。我々のグループでは、食品工学と分析化学に加え人間科学的な視点も取り入れ、未来社会に向け、食品ロスを削減するとともに、国内外の研究機関と連携し、食事を通じて自然に体調を維持・調整できる健康長寿の社会の実現を目指します。
<講座開設の背景>
北村 進一特任教授らの研究グループは、いままで、加工技術として過熱水蒸気調理、超臨界二酸化炭素抽出、湿式微粒化処理による分解・分散に焦点を当てて研究を進めてきました。
本寄附講座への寄附者であるエースシステム株式会社は、2011年より北村 進一特任教授らの研究グループと過熱水蒸気を用いた効率的な食品加工(特に炊飯)について共同研究を行い、2019年には「業務用過熱水蒸気調理機」で機械振興協会会長賞を共同受賞しました。本調理機では、過熱水蒸気による加熱だけでなく、100℃よりも低い温度帯での安定した蒸気加工が可能であり、食品の風味や色、栄養成分を損ないにくく、さらにコンベア方式による連続大量調理を実現しました。
・プレスリリース:第53回機械振興賞「機械振興協会会長賞」を受賞
そして、2023年5月1日に本寄附講座「ACESYSTEM Laboratory of Food Process Initiative」(寄附者:エースシステム株式会社)が、大阪公立大学に設立されました。
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アクセス
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