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本拠点がカバーする学問分野は、結び目理論を中核とし、位相幾何学、双曲幾何学、函数論、可積分系をはじめとした数学のほとんどの最先端学問分野である。それは量子統計力学を中心とした理論物理学、環状DNAの遺伝子合成研究、ポリマーネットワーク、認識科学、複雑系の科学、天文学等の先端科学とも関連する広領域研究としての側面も持つ。結び目理論は、3次元空間内の結び目・絡み目・グラフや4次元空間内の曲面結び目・曲面絡み目の位相の研究を中核として、近年急速に発展した学問である。 結び目理論を焦点とした数学および物理学、(生)化学等関連科学の優秀な研究者を育成するために、数学研究所を設立する。当研究所が、結び目関連で世界中から研究者が一度は訪ねてくる、結び目関連情報が整っている、結び目に関する真理と美を深く追求する、結び目研究の世界の中心となることが5年後の到達目標である。
文部省(当時)の「平成9年度我が国の文教施策」の第一部「未来を拓く学術研究」(http://wwwwp.mext.go.jp/jky1997/)の報告には「幾何学の結び目理論は、量子統計力学を中心とする理論物理学はもとより、遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)の結び目分類として生化学にも応用され」との表現で、先端科学における結び目理論の数学研究の重要性・発展性が指摘されている。さらにつぎの結び目理論の特性もまた、現代数学研究における結び目理論研究の今後の重要性・発展性を示唆している。
このように、結び目理論は将来にわたりはかり知れない重要性・発展性の見込める稀有な数学研究分野である。 結び目理論の研究者人口は今日世界的に大変に多くなっているが、とりわけ日本には多くの研究者がおり、いくつかの著書で断言されているように、日本での結び目理論の研究レベルは国際的にみて高いレベルにある。本学では大学からの支援でCOEによる教員が配置され、事業終了後も当拠点に世界中から結び目関連で人が来続けるような(その結果、結び目理論研究が盛んな他大学にも結び目関連で人が来るような)世界的拠点としての環境が整うことが、当事業の成果として大いに期待できる。今日世界的に研究者人口の多い結び目理論にも関わらず、結び目理論の専門家の中には研究の進展の象徴であるフィールズ賞受賞者がいないことが国際的に言われている(関連研究者の中には他分野に比べ多くいるが)。当事業により、結び目関連の数学研究者の層も厚くなり、ハイレベルの若手の国際的研究者が多数育成され、その結果として基礎科学への大きな貢献がなされることが期待できる。また一般学部学生に結び目の構造を講義することにより、将来数学ばかりでなくいろいろな科学研究の中で結び目の知識を活かせるようになる。 結び目理論の数学研究は1970年の終わり頃から、数学のいろいろな研究分野のみならずいろいろな科学とも結びついて盛んに研究されるようになり、研究者人口は今日世界的に大変多くなっている。とりわけ日本には多くの研究者がおり、いくつかの著書の中で断言されているように、日本での結び目理論の研究レベルは国際的にみて極めて高い。このような中で世界的拠点としての環境が整うことは、結び目を中心とした数学全体の大幅な発展と結び目理論モデルに関連する先端科学の発展が約束されたといっても過言ではないように思う。 今まで結び目理論の研究が盛んでなかった諸外国でも、研究の重要性が認知され始めており、日本が中心になって2国間あるいは3国間の結び目理論関係の定期会合もあるし、今後このような会合は増えていく見通しである。日本での結び目を中心とした数学の拠点形成の事業展開は、各国の結び目理論研究によい刺激を与え、日本を中心として研究はより加速されるだろう。生活の中で使うひもの結び目が科学の基礎研究のモデルになり得ることを宣伝することは、結び目に関心をもつ他分野の研究者が増えるなどの波及効果があり、科学振興上からも有意義である。 | |
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最終更新日: 2003年9月12日 (C)大阪市大数学教室 |