研究成果

2020年5月12日

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天尾豊教授と院生との研究成果のプレスリリースが発行されました

ギ酸脱水素酵素は二酸化炭素を直接ギ酸に還元していることを突き止める

本研究のポイント

  • これまで解明されていなかった、ギ酸脱水素酵素は二酸化炭素、炭酸水素イオン、炭酸イオンのどれをギ酸に還元しているのかについてを明らかに
  • 二酸化炭素を効率的に有機分子に変換する人工光合成系実現に向け、触媒の開発・設計における重要な指針に

概要

  大阪市立大学 人工光合成研究センターの天尾 豊教授と大学院理学研究科 物質分子系専攻の佐藤 涼平 大学院生(前期博士課程1年)は、ギ酸脱水素酵素が二酸化炭素を直接ギ酸に還元する反応を触媒していることを明らかにしました。

 太陽光エネルギーを利用し、二酸化炭素を有機分子に変換する人工光合成系を創製するための重要な要素技術の一つとして、有効な触媒の開発があげられます。本研究グループは、二酸化炭素をギ酸(水素エネルギー貯蔵媒体等)に変換する反応を促進させる触媒となるギ酸脱水素酵素(FDH)について、人工光合成への応用をめざした研究を進めてきました。人工光合成系ではFDHを水媒体に溶解させて利用するため、二酸化炭素も同様に水溶液中に吹き込んで反応させます。

 水溶液中では、二酸化炭素は自身の他、炭酸水素イオン、炭酸イオンの3種類の形で存在することになります。FDHはこの3種類のどれを還元してギ酸に変換しているのかについて、これまで解明された例はありませんでした。今回、私たちは水溶液中においてこの3種類の存在比率を変化させ、精密に制御してFDHとの反応を調べた結果、二酸化炭素自身が直接ギ酸に還元されていることを突き止めました。

 本研究成果は、Royal Society of Chemistry (RSC) が発刊する『New Journal of Chemistry』誌に掲載されました。

掲載紙情報

発表雑誌: New Journal of Chemistry (Royal Society of Chemistry発刊)
論文名: Can formate dehydrogenase from Candida boidinii catalytically reduce carbon dioxide, bicarbonate, or carbonate to formate?
著     者: Ryohei Sato, Yutaka Amao
掲載URL: https://doi.org/10.1039/D0NJ01183E

⇒プレスリリース全文 (PDF:348KB)

掲載元:大阪市立大学 website