研究成果
2023年1月20日
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人工光合成研究センター講演会「脂質ナノディスクを利用した光合成アンテナ蛋白質の構造機能研究」を開催しました
感染防止対策をして対面で行いました。30名ほどの皆様にご参加・ご討論いただきました。ありがとうございました。
- 日 時 2023年1月20日(金) 17時ー18時
- 場 所 杉本キャンパス 理系学舎 E211号室(第10講義室)
- 講演者 山野奈美 博士(中国人民大学)
- 講演タイトル
「脂質ナノディスクを利用した光合成アンテナ蛋白質の構造機能研究」
本学化学科で学位を取得し、現在中国人民大学で博士研究員をしている山野奈美さんが短期来日される機会に、最近の研究成果をご講演いただきます。皆様ぜひご参加ください。
世話人:藤井 律子(内線3624)電子メール ritsuko●omu.ac.jp(●→@)
講演概要
光合成とは、太陽光の光(励起)エネルギーを用い水と二酸化炭素から糖を作り出す反応である。この太陽光の取り込みはチラコイド膜脂質内に展開された、クロロフィルやカロテノイドを補光分子として結合するアンテナ蛋白質により達成される。興味深いことに、アンテナ蛋白質は集光だけでなく、変動する太陽光の強度変化に応答して膜内での過剰な励起エネルギーの失活にも関与する。この消光プロセスは、蛋白質間凝集もしくは周辺物性の変化に誘導された、色素分子の励起状態の変化に起因することがわかっているが、単離した蛋白質をサンプルとした分子機能解析と葉やチラコイド膜のマクロな対象の解析結果には差があり、チラコイド膜内におけるアンテナ蛋白質の正確な集光・消光の分子機構は不明である。
一般的に、光合成蛋白質の機能解析は、単離した蛋白質を界面活性剤ミセルとして水中に分散させて行われるが、極性分子やイオンの透過性は高く生体環境を再現しているとは言い難い。疎水膜環境を模倣した系としてはリポソームが多用されてきたが、ランダムな蛋白質間凝集を制御することは難しく、個々の分子が不均一な励起状態を形成してしまうという問題点があった。そこで本研究では、脂質膜ナノディスクと呼ばれる脂質二重膜層へのアンテナ蛋白質の再構成を試みた。ナノディスクは架橋蛋白質の長さを調整することでディスク系および内包蛋白質数を制御することができ、脂質環境を再現した状態で単一分子の機能解析が可能である。ナノ秒時間分解吸収や蛍光寿命測定を用い、アンテナ蛋白質に結合した色素間のエネルギー移動と構造が、一般的な界面活性剤ミセル系にある時と比較しどのように異なるのかを調べた。その結果、脂質膜中ではミセル系と比べて、より消光状態に偏ったコンフォメーション状態にあることが明らかになった。
(参考文献: Yamano et al., J. Phys. Chem. B, 126(14):2669-2676, 2022.)